アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

伊藤詩織さん勝訴で改めて問われる山口氏と安倍首相の仲

2019年12月19日 | 政権とメディア

    

 ジャーナリストの伊藤詩織さんが山口敬之氏(当時TBS記者)から性暴力被害(レイプ)を受けたことに対し、伊藤さんが損害賠償を求めていた民事裁判で、東京地裁(鈴木昭洋裁判長)は18日、伊藤さんの訴えを認め、山口氏に330万円の支払いを命じました。山口氏の「名誉毀損」との訴えについては、「不合理に変遷し、信用性に重大な疑念がある」と断じました。

  きわめて妥当・公正な判決です。性犯罪が明らかにされて裁かれることがきわめて少ない日本の実態に大きな一石を投じました。伊藤さんの勇気と苦闘の成果です。私たちはこれを今後に生かしていかねばなりません。

  判決後伊藤さんは、「勝訴したからといってこの事がなかったことになるわけではない。これからも自分の受けた傷とどう向き合っていくかということがある。これが終わりではない」とし、同様の事件が起こらないよう「構造的な問題」に目を向ける必要があると述べました。

  一方、山口氏も同日記者会見し、直ちに控訴する意向を示しました。反省の色はまったくありません。山口氏はこう言いました。「所詮、民事だ。民事でどういう判決が出ようと、私は(刑事で)不起訴になっている。それで完了している」(写真右)。厚顔無恥とはこのことです。が、語るに落ちる。この言葉は今回の問題の重大な特徴を自ら明らかにしています。

  それは、山口氏が安倍晋三首相ときわめて親密な関係にあり、「不起訴」は官邸筋(安倍氏)の圧力か、警察・司法の“忖度”によるものではないかとの疑惑が指摘されていたことです。

  山口氏は自著『総理』(幻冬舎文庫、2017年)で、「安倍氏と私は…出会った当初からウマが合った。時には政策を議論し、時には政局を語り合い、時には山に登ったりゴルフに興じたりした」と、公私にわたる親密ぶりを誇示しています。 

 また、同著巻末の「解説」で週刊文春編集長(当時)の新谷学氏はこう書いています。
 「週刊誌記者なら、親しい政治家のスキャンダルを書いて、その結果、相手に関係を切られたとしても、仕方ないと諦めるしかない。…それに対して山口さんは、おそらく、書く時期や書き方に細心の注意を払っているはずだ。だからこそ多くの政治家と継続的な人間関係を維持できているのだ」
 山口氏が安倍氏はじめ政治家の「スキャンダル」・弱みを握っている、だからこそ「継続的な人間関係を維持できている」、と受け取れる記述です。

 この疑惑は国会でも取り上げられました。2018年1月30日の衆院予算委員会で、「山口氏と親しい関係では」と質問された安倍氏は、「私の番記者だったから取材を受けたことはある」(2018年1月31日付中国新聞=共同)と認めながら、「それ以上でも以下でもない」と答えました。

 山口氏の18日の記者会見は、同氏が「不起訴」を盾に、「不起訴」になれば何でも許されると考えていることを示しています。だからこそ、その「不起訴」の背景、安倍氏との関係は徹底的に解明されなければなりません。

 それはたんに山口氏と安倍氏の個人的関係の問題ではありません。政治家と番記者の関係・癒着、政権とメディアの癒着の問題です。それは同時に、メディアの中でセクハラ・性犯罪が多発している根源に通じる構造的な重大問題です。

 


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