本日、函館市中央図書館視聴覚ホールを会場とした「第33回函館文化発見企画講演会」に参加してきた。演題は「五稜郭の復元整備からわかったこと」、講師は、函館市博物館館長田原良信氏と学芸員野村祐一氏。
昨年完成した五稜郭内の箱館奉行所の復元工事については、昨年までの見学や講演会で知ることができた。しかし、今日の講演は、その復元整備がどのような資料をもとにして設計されたのかがメインだった。
□過去に参加した見学会
○完成後の見学(2010,10,18)
○復元工事一般公開見学(2008,11,03)
□今日の講演内容
1,もとになった資料
1) 絵図面(函館市図書館蔵)
・設計~『五稜郭目論見図」
・郭内の建物配置~『五稜郭平面図』
・奉行所の間取り~『五稜郭内庁舎平面図』
2) 発掘調査
・奉行所庁舎跡の遺構確認発掘調査、 発掘調査の写真・図面
・出土品の調査研究
★残っている図面では判らなかった実際の場所が特定できた
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3) 文献資料
・建物の詳細な仕様~『亀田御役所表奧其他共御普請出来型仕様書』
(玄関庇のこけら葺き、太鼓櫓屋根の銅板葺き、室内壁の仕上げ)
4) 古写真
・フランスで発見された古写真
・写真解析~復元制度を高めた(鬼瓦から鬼板へ、懸魚、瓦枚数など)
★全体のイメージや建物外観の設計に役立った
2,景観の再現
1) 類例建物を参考に
★内部の建具等のイメージが不明だった(壁、床、畳廊下、部屋の造り、欄間、床の間など)
★もっとも多く参考にしたのは、1816年建造の「飛騨高山陣屋」とのこと
2) 伝統工法の再現
(台持継、兜蟻掛、土居葺き、釘隠(佐渡奉行所を参考)など)
3) 官位と格式
・部屋の格式区分(上之格、中之格、下之格)
★格によって部屋の場所と人坪当たりの建築単価が違う
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3,これからの五稜郭
1) 新たな発見
・奉行所古写真の撮影者~田本研造らしい
・謎の埋め瓶(玄関式台の真ん中に埋められている)
2) 建物復元から歴史復元へ
・歴史舞台としての五稜郭・箱館奉行所~もっと掘り下げていく必要がある
3) 函館のまちの再発見
・道路・町割り(五稜郭と箱館のまち、現代に残る当時の姿)
★これまでは、五稜郭と言えば、箱館戦争のイメージが強かったが、本来は奉行所を守るために造成されたもので、復元整備は、その史跡本来の歴史や役割を伝えたいとの思いが伝わってきた。