磯部浅一
森 殿
うれしくありました。
貴方は立派な方です。
此の一言で全てのこと御わかりですね。
私は決して死にません。
死ぬのではありません。
神になるのです。
天下一人と雖もその堵に安んぜる者がある間死にません。
維新の大詔が下り同志が立つて吾人の思想信念を具体化する迄は死にません。
私共の忠義心を上聞に達していたゞきたいのが唯一ツの念願です。
私は最期迄頑張りました。
決してヒキヨウな事や腰ぬけも妥協はして居りません。
新聞等の発表は殆ど全く私及私共の考へをまげていると考へます。
此の次はエンマの庁で一といくさ。
呵々。
註
墨書
封筒表に「森伝殿、托磯部とみ子」 と墨書
刑死前日のものか
二・二六事件秘録(別巻)から
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森伝 ・・・ モリ ツトウ