嶋津隆文オフィシャルブログ

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住民監査請求を「容認」する監査結果が出る

2009年04月27日 | Weblog

国立の、北の界隈のある庭先風景(本人撮影)

さる2月に290人近い市民から提出された、明和マンション訴訟に関する住民監査請求。これは裁判費用の3120万円の公金支出を行った上原前市長らへ、国立市長が求償権(返還)行使を求めたものですが、先週末に以下のような勧告が出されと連絡がありました。

【勧告内容】(原文のまま)
国立市は、「国立市庁議等の設置および運営に関する規則」に規定する庁議において次の事項を検討し、その結果を本件国立市職員措置請求(住民監査請求)の監査結果公表後60日以内に市民に対して公表すること。
① 求償の具体的な検討として、求償の対象者および範囲について
② 求償権の行使、地方自治法240条第2項に規定する督促、強制執行その他その保全にまで至らないときは、その理由について
③ 国立市の組織的責任について             以上

勧告は国立市に対し、住民監査請求を受けて、求償の具体的な内容の検討と結果の公表を求めています。勧告時には、わざわざ監査委員及び監査事務局長から「みなさんの請求は容認されています」と補足説明もあったようです。市長がこの勧告に沿って、上原前市長らの責任と求償額を明確化するのは当然のことといえましょう。 しかしこの勧告には問題点のあったことも指摘せざるを得ません。上の勧告文を改めてお読みください。主語述語が不明確であり、しかも要求内容も何とも不鮮明なのです。何よりも住民サイドは、「国立市長に求償権を行使させよ」と請求していたにも関わらず、勧告ではポイントがずれ、「求償の対象者および範囲について検討せよ」等と中途半端な表現をしているのです。さらに請求もしていない「③国立市の組織的責任について」などといった内容まで採録しているのです。

こうした監査委員の使命感を放棄したような曖昧な文面と勝手な勧告は、市長らの責任回避に口実を与えかねず、地方自治を正常に機能させるために設置されている監査委員会の存在自体を否定するものです。

せっかくの監査請求の結果表現が、このように大きな瑕疵をもって公表されたことはまことに不快かつ不可解というべきです。「国立には魔物がすむ」。そういわれていた風土が、この独立して、公正であるべき監査委員にも染み付いているものかと、憤然とする次第です。

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『観光キーワード事典』(学陽書房)を出版しました!

2009年04月20日 | Weblog

( 写真 事典のカバー )

上の写真をご覧ください。うす緑色の新鮮で、落ち着いた感じのカバーの冊子です。この一年近く、作業してきた観光事典がいよいよ書店に並ぶ運びとなったのです。責任者として進行管理から原稿整理、校正までやってきただけに、率直に言って嬉しく、またホッとしています。

20人の共著で、松蔭大学の観光文化研究センターの教授連でまとめあげた著書の第一作です。したがって今日は、当然のことながらその宣伝活動としてのブログとなります(笑)。

正式タイトルは『観光キーワード事典』。副題は「観光文化への道標」。出版社は学陽書房。初版印刷はこの4月15日。定価は2000円で、ページ数は220という頃合いのいい厚さのもので、採録した用語はほぼ240項目です。本の帯にはこう売り文句が並びます。

観光トレンドがよくわかる!     
重要用語・全国の事例・観光行政を網羅     
観光に携わる人・学ぶ人の必携の書。関連法等も収録。 

執筆者の大半が実務経験者の教授連であるだけに、記載内容も平易で写真も多用し、また全国各地の事例を素材に説明しているので、幅ひろく受け入れられるのではないかと期待しているところです。むしろ、読み物として関心を持ってもらえるのではないかと思っているくらいです。

皆さん、買って下さい。小声で囁かせてもらうなら、2刷り以降に始めて印税が入る取り決めとなっているのです。それだけにいっぱい買っていただかないと、幸せになれないのです(笑)。よろしくお願いします。


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懐かしく想い出す黒川紀章さんからの一言

2009年04月13日 | Weblog

12日の日曜の夕方、六本木の国立新美術館へ足を運びました。2年前に完成したこの美術館は、波打つユニークな形状と柔らかい色遣いで、共生の思想を体現しようとする黒川紀章の新たな代表作と話題を呼んだものです。

直接の目的は、親しい都庁時代の友人の入選作「ブタペストの朝」(示現会、南雲栄一・80号)を見るためでした。しかしもう一つ目的がありました。それは一昨年の秋に、黒川紀章さんから、「嶋津さん、ぜひ新美術館の別館に行って下さい。近衛兵舎(昭和3年建築)を少しでも残したいとした、自分のこだわりを見て欲しいのですよ」との、話しを受けていたからです。

そもそも黒川さんとは、ひょんなことから知り合いました。彼の講演会で、私が最後に質問したのです。「あなたに絶対に答えて欲しい質問があります。私は昔から若尾文子の大ファンでした。その大事な人をあなたは奪ってしまった。それだけに、今も彼女を大切にしているか、頗る気になっています。それをお答えいただきたい」と。

どっと笑いが走る場内で、しかし黒川さんはまともにこう答えたのです。「僕は妻には結婚当初に金銭サポートでずいぶんお世話になった。とても感謝している。その後、一番気を遣ってきたのは女優たる若尾文子には余分なことをさせず、女優業だけに専念できるように配慮してきたことだ。妻のことはとても愛している。文句ありますか」と。

その後、会場から出ようとする私の所へ黒川さんが来てこう言ったのです。「妻のファンというなら、どうでしょう。一度3人で食事をしませんか。私がセットしますから」。耳を疑いました。「えっ、いやあ、それはそれは楽しみです」。「じゃあ、これからモスクワのプロジェクトでしばらく日本を離れますが、帰国したらやりましょう」。

ところが帰国するや黒川さんは都知事選に立候補し、参院選に立候補し、半年間を掛けずり回り、そしてあっというまに逝ってしまったのです。3人での食事の約束も消えてしまいました。しかし黒川さんから、一通の素晴らしい手紙が届けられたことを記さない訳にはいきません。私が国立の市長選に出馬するに際しての応援メッセージです。

「嶋津さんは国立の街がとても好きだという。しかし僕が妻若尾文子を愛する度合いを比べたら、かないっこないでしょう。ハハハ」。このユーモア溢れる天才建築家の一言は、消えた3人での食事代わりの、彼からの贈り物ではなかったかと思うのです。こう呟きながら、天から明るく光の注ぐ新美術館を、しばらく行き来していたものでした


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伊良湖で思う三島由紀夫と肉体というもの

2009年04月05日 | Weblog

(写真) 「春の伊良湖岬」(再録です)

4日前に私の本HPに掲げた、表紙のイラスト風景に関連し、もう一度ふるさと伊良湖岬の話題を取り上げます。いや今回は、三島由紀夫と絡めてしたためてみました。

上のイラスト風景を改めてご覧下さい。伊良湖水道の真中に浮かぶ島があります。神島です。神島(地元ではその形から亀島ともいう)は、三島由紀夫の小説「潮騒」の舞台となった歌島といった方が納得する人が多いかも知れません。

「初枝!」と叫ぶ信治に、「その火を飛び越してこい」と求める初枝。この初枝を映画では吉永小百合や山口百恵らが演じました。陽光と生命の輝くギリシャ神話のようだと絶賛された、三島由紀夫の作品の名場面です。しかしそのまばゆいばかりの人間讃歌をしたはずの作家三島由紀夫は、後日、肉体に関して幾つもの衝撃を世間に与えて、死んでいきました。

一つは、1970年の市ヶ谷の、自衛隊クーデター未遂事件での割腹自殺です。いや、もっといえば「フライデー」に載った、介錯をされた後の、胴体のそばに置かれた生首の威圧性です。生命の礼賛などといった青春小説風の表現をあざ笑うかのような、私たちと社会に対する嗜虐的な問いかけがそこにはありました。

もう一つは、4年前に横尾忠則や石原慎太郎知事らの酒の席に加わった時、その彼らから私が直接に聞いた三島由紀夫の異形の姿です。三島と極めて親交の深い人たちの会話であるだけに、その内容はかなりリアリスティックであったといえます。

「石原さん、ひょっとして三島さんはあなたに嫉妬していたのではないですか?」
「そう思う。ヨットやサッカーなど当たり前にスポーツに入り込んでいた僕に、虚弱な彼は動揺したと思う。だから、無理してボディビルかなんかで肉体を改造しようとした。その結果が、あの使い物にならないハリボテのような肉体だったんだ」。

「そういえば、丸山明宏と三島由紀夫はデキていたんですかね?」
「いや、それはない。最初は『あなたの背後霊に2・26事件の某大尉がいる』等といわれ、丸山明宏に傾倒していく。がやがて煩わしくなって敬遠した。彼は同性愛者だったけれど、ホモであることを恥じていた」。

ここ数年、故郷に帰り、伊良湖の浜辺から神島を眺めるとき、私には三島由紀夫に関するこのやりとりがどうしても頭に浮かぶのです。そして彼が、自然物たる肉体さえも、「虚構」という世界の中での道具として演出したことを改めて思い知るのです。「虚構」こそ真実であり、あるいは「虚構」こそ真実あらしめたいとする三島の願望。天才作家の天才作家たる所以と言いながら、自壊という言葉を思わず想起してしまうというものです。潮騒は、時に人の心を小さく騒がせるようです。

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紹介します、故郷渥美のイラストレーター

2009年04月01日 | Weblog

(写真):表紙と同じ「春の伊良湖岬」(mahiroo作)

今日から4月になりました。大学ももうじき入学式です。今年はどんな学生たちが入って来るのでしょうか。若い彼らの一人ひとりが、それぞれの故郷の香りをもって、集まってくるというのですから、何とも楽しみというものです。

ホームページの写真が4月から変わりました。表紙のバックは、私の故郷である渥美半島の伊良湖岬の風景イラストです。このイラストを描いてくれたのは、伊良湖岬の中学時代の同級生の娘さん。mahiroo。まひろさんです。

大学の美術科で、デザインを学んだという彼女は、卒業後は故郷へ戻り地元で就職します。渥美の風景、とりわけ伊良湖岬の空と雲を眺めることが好きという彼女にとって、この地以外での人生は選択肢としてなかったのでしょう。それにしても故郷の四季を描いた多数のイラストは、その大胆で鮮烈な色遣いで、横尾忠則風のまひろワールドを形成し、渥美と彼女の魅力を十分に伝えているものといえます。

この渥美半島の田原藩の家老として生まれ、安政の大獄で自殺した郷土の経世家渡辺崋山。1昨年、その生涯を描いた小説「渡辺崋山」で日本文学者のドナルドキーンは、この地をこう表しています。「砂地ばかりで、ほとんど特徴のない半島に位置する田原は、蟄居の身である崋山にとっては極めて寂しい土地だった。」

崋山の苛烈な人生を表現するためとはいえ、かように渥美半島の風景を殺伐とした感じで表すのは抵抗があるというものです。しかし島崎藤村の、“名も知らぬ遠き島より流れ寄る椰子の実一つ♪”との歌「椰子の実」で知られる詩情豊かなこの地を、誤解されることがあってはなりません。まひろさんの、故郷への愛着とその魅力を示す力強いイラストは、間違いなくドナルドキーンへの異議申し立ての、爽やかなメッセージと言ってよいのです。

そのmahirooさんの作品集は、折にふれ私のHPに登載することを許可してもらいました。末尾のリンク集にも「渥美の風景」として貼り付けアップしておきます。ぜひ諸作品をお楽しみ下さい。

http://www.shimadzu-ryubun.com/link.htm


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