どっさりと積み上げられたハサミの数々。
ここは福島県の檜枝岐(ひのえまた)村の「橋場のばんば」のお堂。縁切りの聖地としてマスコミに流れて有名になり、昨今は供え物のハサミが異様な山をつくっています。イヤそれ以上に驚かされるのが、お堂の傍らに吊るされた絵馬の祈願文です。
別れたいという思いから二つに割られた絵馬は、よく見ると何とも壮絶な文言が並びます。
「会社の後輩の〇〇とその母との悪縁を切りたいです」
「クソみたいな男達と出会いませんように、素敵な出会いがおとずれますように」
「息子の××と今付き合っている女は…」
〇〇や××はもちろん実名。祈願者も当然のように実名が書かれます。いかに深い憎悪に駆り立てられてここを訪れたものかと、その迫力にしばし立ち竦んでしまうというものです。
弥生3月は別れの季節というけれど人生は様々。桜のような美しい散り方もある一方、血反吐を吐く別れもあるのです。