「東日新聞」より
10日ほど前の11月16日、田原文化祭の一環で剣詩舞の25周年大会が持たれました。その折の記念パンフレットに載せた私のメッセージ、ちょっと評判になったものですから気分を良くし、ここに載せることとします。
「剣詩舞はどうして胸がすくほどに格好よいのでしょう。勇壮で凛々しく、そして何よりも完成された形式美がたまりません。日本人の文化は形式美にあるとしばしば指摘されます。華道、茶道、能、歌舞伎など、さらには俳句や短歌にして然りです。そういう点では剣詩舞はかなり贅沢な舞台といってよいでしょう。刀剣と詩吟と舞いという3つの形式美が束ねられているからです。
昨年(平成25年)の秋、三河田原駅が完成しました。設計者である世界的建築家の安藤忠雄氏に対して、田原市はリクエストを出します。「田原は城下町、ですから和風の雰囲気を出してほしい」と。完成された新駅は、濃い茶色で日本家屋の格子のイメージを持たせ、しかも全体のフォルムは扇の形で貫かれました。扇の流線型は日本刀の鋭さを想起させ、扇の広がりは日本舞踊の柔らかさを漂わせます。新しい姿を見せた三河田原駅を前にして、私は皆さんの心、剣詩舞の心との共通性を大いに感じ取った、そう申し上げたいと思います。
それにしても剣詩舞の演目は、どれもこれも日本人の心に響き伝わるものばかりです。たとえば忠君楠正成を謳った「大楠公」、甲斐の虎と呼ばれた「武田信玄」、光秀の反逆で信長の最後の舞台となった「本能寺」、主君のあだ討ちで名をはせた「ああ赤穂浪士」、戊辰の戦での自刃した少年たちの悲劇を描いた「白虎隊」。私たちの心にぐさっと来るエピソードが並びます。剣詩舞はこうした日本人の琴線に触れる題材を縦横に生かして演じているのです。人気が深まらないはずはありません。」
さて皆さんはどう評価されるでしょうか。