お盆明けの8月19日、富士の裾野で行われた自衛隊の総合火力演習に参加しました。10時の開始に合わせ、早朝5時30分に田原市役所を出るという強行軍です。
演習の始まった会場に溢れる人の数に驚いたものですが、いや毎年2万人ほどは入りますよと当番の自衛官が笑っていました。澄み渡った夏空に富士山が凛として聳え、さすがに祖国を守るのだという思いをたからしめる舞台です。
前半、迫撃砲から機関銃、対戦車ヘリによる火力演習と続き、その後の圧巻は戦車火力でした。90式戦車や10式戦車の実弾演習は、その振動がはらわたに響き、爆音が耳をつんざきます。近くに居た小学生が思わず泣き出すほどです。
そして後半、装備の紹介という前半とはうって変わり、「島嶼部に対する攻撃への対応」と称して島嶼奪還を想定した演習が展開されたのです。明らかに中国軍による尖閣上陸をイメージした演出です。
P-3C哨戒機が登場したあとF-2戦闘機が飛来します。戦闘ヘリや輸送ヘリが到着し偵察用オートバイ、警戒車などの起動展開が進められます。そして奪回作戦としてりゅう弾砲、迫撃砲、高射機関砲、最終的には主力の90式や10式の戦車が砲撃を展開し、敵を制圧するというものです。
現実味を帯びた実演のストーリィであるだけに、そのリアリティさには圧倒されるというものです。それにしても砲撃の正確性と破壊力の強さには驚愕したというものです。敵兵が跡形もなく吹き飛ばされることは明々白々です。ということは逆にわが自衛隊員も木っ端微塵になるということです。
武力とは明らかに必要悪です。装甲車や戦車など、こうしたものは絶対になければない方がよい。実演の炎と爆音に改めてそう思わされたものです。
泥棒はどんな家庭にも入り込みます。泥棒には対抗しなければなりません。そうした点で武力は必要悪でありましょう。しかし「こうした火力は外交努力や文化交流などによって使わずに済むようにする。それが人類としてのチエというものなのだ」。そう語り合う富士演習場の帰路でありました。