嶋津隆文オフィシャルブログ

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是枝裕和監督「海街diary」に心なごませる

2015年06月29日 | Weblog

先日、大学での講義の帰りにふと思い立って、映画「海街diary」を見てきました。前評判もよかったし、是枝裕和監督の作品はいつも安心して見ていられるからです。

実際この映画は淡々と、あくまで淡々と4姉妹の支えあう姿を温かく描いています。鎌倉の海や桜の風景もふんだんに取り入れられ、とても気持ちよい時間を過ごすことができました。

劇場を出て思い浮かべたのが、10年ほど前の同じ是枝監督作品「誰も知らない」。カンヌ映画祭で主人公の少年が主演男優賞を受賞した例の作品です。母親に放棄された幼い兄妹が支えあいつつも、やがて死に至っていく姿を描いたものです。

淡々と実に淡々と子ども達を描く点ではとてもよく似ています。しかし「誰も知らない」の底流は絶望ですが、「海街diary」の底流は希望です。その点でも観客の気持ちを間違いなくなごませてくれるというものです。

そしてこの「海街diary」でもう一つ思い浮かべたのが「夕凪の街・桜の国」。是枝作品ではないですが、家族の血や愛情をテーマにした点での共通性、タイトルの類似性、また両方とも漫画が原作という点にも気付いて、ここでも気持ちを楽しくしたものです。

「海街diary」。初夏のちょっとした清涼剤でした。


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「歴史教科書」で描かれた中韓の日本記述に思う

2015年06月22日 | Weblog
【南京虐殺記念館】

ほっと時間が空いたこともあって立ち寄った本屋で、『文芸春秋』7月号を購いました。「中国、韓国、ロシアの歴史教科書に日本がいかに描かれているか」と興味ある特集が組まれ、しかも執筆者が異才というか鬼才というか、あの佐藤優であったからです。

中国語もハングルなども全く読めない自分にとって、こうした比較はたいへん貴重です。とくに佐藤優であれば、へんな脚色を施すことは恐らくないとの安心感を持って目を通しました。

まず中国の教科書です。「階級闘争史観と徹底したリアリズムに貫かれている」と佐藤は指摘します。だから明治維新を徹底研究する一方、南京虐殺を「日本の侵略」の象徴としたとします。しかし単なる反日でなく、英米とともに反ファッシズムを戦い、現在の新しい世界秩序を作ったプレイヤーであることを中国は強調していると言うのです。

他方で韓国の教科書です。これは日本にとって脅威で、「テロリスト史観」で貫かれていると指弾します。日本の要人、特に天皇へのテロを礼賛する記述が延々とあることを挙げ、「韓国は“恨”の文化と言われるが、教科書も怒りに突き動かされている」と佐藤は嘆くのです。

昨秋に私は「南京虐殺記念館」を訪れ、ソウルで日本大使館前の「慰安婦少女の像」を目の当たりにしました。3年ほど前には瀋陽(奉天)での柳条胡事件を扱った「9・18歴史記念館」へ向いました。

いずれの施設にもその大きさと重さには圧倒されてきたものです。それに加えての、日々の教育現場で浸透する上述した歴史教科書の記述です。これからの日中韓は未来志向で、などという掛け声が自滅しかねない心地になるというものです。

しかし各々の地で、私たちを案内してくれた人たちは間違いなく好意的でした。日本人相手の観光業者であり行政職員であったためでしょうか。いや若い彼らは笑顔で、将来はなんと日本に留学したいと言っていたのです。既に娘が二人、京都に留学しているとさえ教えてくれました。そうなのです。その呟きが私たちにはそれなりの、小さな救いになったことは否めません。


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高齢者は10歳近く若返ったとの学会発表に納得する

2015年06月15日 | Weblog
朝刊を開き、思わずオッと声を出してしまいました。やはりこういうデータが発表されたかと。日本老年学会が出した分析結果です。

要点は10~20年前と比べ、現在の高齢者は大いに若返っているというものです。体力では例えば歩行速度が男女とも11歳若返っている、知力(知能検査)では40代、50代に近づいているとも指摘します。

60代の後半に入った自分の実感としても全く同感できるというものです。気持ちの上では50歳前後、肉体的にも衰えを意識することはありません。長命社会のなかで精神も肉体も自ずと変化しているようです。

にも拘らず変化していないのが社会の構造です。渥美半島でも60歳になると「老人会」に入ることが地域で求められます。60歳で老人? バカ言ってはいけません。一体、いつの時代の感覚でしょう。

私は30年前に政府シンクタンクのNIRA(総合研究開発機構)に身を置き、やがて到来する「人生80年時代の社会システム」を研究したことがあります。年金医療問題などの改革が求められていたのです。しかしその研究は殆ど振り向かれず、遅れに遅れて今日の混乱を招いています。慙愧に堪えません。

今回の日本老人学会の発表は高齢者の定義を見直し、「支えられる側」でなく「支える側」の人数を増やすことにあると警戒する人もいるようです。それがどうしたというのでしょう。元気なうちの高齢者は老人扱いなどせず、大いに社会活動を続けさせればよいのです。

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中日新聞インタビューで教育委員会改革に一言、二言

2015年06月05日 | Weblog

この新年度になった4月から新しい教育委員会制度がスタートしました。
そのことに関連して中日新聞から、新制度への意見をとインタビューを申し込まれました。
早速に今朝の6月4日付けの地方版に掲載されました。アップしますのでご笑覧ください。



画像をクリックで拡大してご覧いただけます。

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長江の事故に思う中国の国家プロジェクト三峡ダム

2015年06月04日 | Weblog

長江での事故ニュースが報じられています。6月1日の夜、南京から重慶に向かっていた大型客船が竜巻にあおられて転覆したとのこと。乗客456人のうち、大多数は行方不明という大惨事です。

現場長江の三峡界隈は「三国志」の舞台であり、かつて李白が「朝に辞す白帝 彩雲の間」の白帝城を擁した絶景の地です。三峡ダムに沈む前に見ておきたいと、北京の副市長に案内されてこの地を訪れたのは15年ほど前のことでした。

三峡の現地責任者はその時の説明で、この大プロジェクトの意義を3つあげていました。①多くの人命を奪う洪水の予防、②不足する電力の確保、③水運の整備による経済振興、というものです。

「しかしデメリットもありますね、歴史の舞台が水没してしまう。しかも100万人以上の住民の転居も実行せねばならないのでは…」。こう質問した私たちに返ってきた返事に驚かされました。

「いえ、私たちが心配するのは、この三峡ダムが有事に敵のミサイルの攻撃目標にされることです。ここが破壊されれば膨大な人命が失われるだけでなく、経済的打撃も計り知れません。国家的な危機となります」。

ダム開発で懸念する事項は歴史文化遺産や自然の喪失ではなく、100万人の土地収用と生活の心配でもなく、はっきり国防的視点であったのです。平和ボケしている私たち日本人には目から鱗でした。

それにしても一昨日に起きた転覆事故。ミサイルによるダム決壊で100万の命が失われることが危険と発言していた中国政府担当者にとって、観光客458人の人命はどれほどの重みを持つものでしょう。そんな思いに気持ちが重く沈むのは否めません。


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