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人と会うというのは楽しいもの。まして著名な作家というのであれば、気持ちが弾みます。
先週の土曜、黒井千次さん宅を訪れました。昭和7年生まれの93歳。小金井に住まわれ、ここ十数年は『老いの味わい』『老いのゆくえ』など「老い」シリーズを書き綴られています。それだけに、現実にどんな「老い」の日常をお過ごしなのかと、ちょっと緊張しつつお宅の呼鈴を押しました。
奥からご本人が元気な姿を見せ、道に迷いませんでしたかと語りかけられる。招かれた居間で、持参した私のゲラ原稿をお見せしながら過ごすこと小一時間。いやあ、何と静かな語り口。その温和さには圧倒されたというものです。
「そろそろおいとまを」と立ち上がると、こんなひとことを口にされました。「私の紹介原稿に、先月もう一冊出したことを入れてほしいです。『老いの深み』というんです」。えっ『老いの深み』ですか? 先生の立ち舞いそのものではないですか。僭越にも思わずそう発言しそうになって口を押さえたものでした。
それにしても久々に、気品ある人に会う醍醐味を味わえたもの。心温まった一日でした。