封切られたばかりの映画『エヴェレスト 神々の山嶺』を見てきました。数年目にふと思い立って出かけたエヴェレストの白い輝きと、先般の地震で崩れた古都カトマンズの姿を、改めて確認したかったからです。
しかし映画の出来には失望です。エヴェレストの壮大さ・厳しさは堪能できました。しかしストーリーの荒っぽさが随所に見えるのです。 岡田准一のエヴェレストへ登る思いが今一つ理解できず、尾野眞千子がわざわざエヴェレストまでついて行く意味も不明です。
角川映画は昔から(角川春樹のころ)こうしたスケールの大きさが勝負といったフシがあり、ディテールの深みが粗雑なのです。せっかくの阿部寛の凍結の長いシーンなどの迫力も、ストーリィの粗雑さが映画の出来を希薄にしてしまうのです。
そういえばニューヨークにいた折、こんなことがありました。カナダでの映画撮影『天と地と』の帰りに寄った角川春樹は、ハドソン川で船上パーティを開きます。そこで全身真っ白な装束で現れた彼は、「自分は上杉謙信の生まれ変わりである」と真顔で語り、私たちを興ざめさせました。春樹から歴彦へと時代は変わっても、そうした事大主義には等しく角川映画にあるのかもしれません。 うーん、残念です。