軽々にブログを書き、軽々に同情することを拒否するような、塗炭の苦しみがそこには滲んでいました。年端もいかない13歳の愛娘めぐみさんを拉致されて30数年。横田滋、早紀江夫妻の日々を形容するすべを知りません。
日曜の夜、田原市の文化会館で横田夫妻を招いての講演会がありました。年間何十回も出演を重ねるご夫妻であるだけに、その講演はともすれば形式になっているのではないか。会場に入る前にそう考えた自分の浅はかさを、思い切り恥じ入ることになりました。
顔を染め、絞り出すような声で予定時間をオーバーして迄も必死に訴え続けるお二人の姿がそこにはあったのです。
「めぐみは生きています」
「ヘギョンさんには会いたいけれど北朝鮮の戦略にはのらない」
「国は何をしてくれているんでしょう」
「私たちにはもう時間がありません」
滋さんは昭和7年生まれで既に83歳。早紀江夫人は11年の79歳。もらい泣きする会場の中で、この老夫妻の静かな、しかし怒りと悲しみに満ちた語りは各人のはらわたをえぐるように響いていたに間違いありません。