半月前から読売新聞で多和田葉子の新連載小説が始まった。ワクワクする。彼女は近所の国立富士見台団地で育った。1993年に『犬婿入り』で芥川賞受賞。最近はノーベル賞への期待が高い。先般、そんな彼女の父親に多和田栄治氏にお会いする機会を持てた。少女期の様子を訊ねるとこんなエピソードを語ってくれた。
「外国の絵本や小説に興味を持ちましたね。それを見て私は、作家に直接手紙を書いて感想を伝えなさい、つたない英語でいいからと言っていたのです。作家の住所は私の方で探すからと」。
父は娘と同じ早大露文卒業。書籍輸入や翻訳出版を生業とする。海外での知人友人も多い。
「いや私は体験することこそとても大事と考えています。葉子は学生の頃ナホトカからシベリア鉄道で欧州へ旅したり、インド、ネパールへギターだけ持って回ったり、世界各地を訪れるのですが、どの国であれ危険だから行くのはやめなさいと言ったことは一度もありません。その体験が葉子の作品と自信を作っています。ある授賞式のスピーチで、「父は私の行動に一切口を挟むことがなかった、本当に感謝してます」と褒められましたよ(笑)」。
文字通り厳しさと優しさをもつ父の娘への思い。いい新年が迎えられそうと、ちょっと幸せな気分で帰宅したものである。
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