写真:WB社『最後の忠臣蔵』の一場面
人気TVドラマ『北の国から』を長いこと手がけた杉田成道監督です。「してやられるかな」と警戒しつつ映画館に入ったのですが、案の定、徹底的に泣かされました。WB社の『最後の忠臣蔵』。いい映画でしたねえ。
主君大石内蔵助の命により、それぞれ死ぬことを許されず16年を過ごしてきた赤穂浪人、役所広司と佐藤浩市。二人とも大いに唸らせるいい演技です。時折くみこまれる美しい竹林の風景と人形浄瑠璃「曽根崎心中」のみちゆき。これ又わざとらしさが気にならないいい演出です。
内蔵助の娘、可音役の桜庭ななみも、そのぎこちなさやいま少し色気があってよいと気になりつつ、凛とした役回りに清々しく見入らされたものでした。
いやあ、それにしてもとめどもなく泣かされましたね。とりわけ16年間ひそかに育て上げた主君の娘可音を送り出す花嫁行列への、浅野家家臣たちの参列申し出の場面には、劇場のあちこちからも鼻をすする音が広がっていたものです。
正月の最後の休日にふさわしい清涼感ある時間を過ごすことができたものと、杉田監督には感謝した次第です。ひとこと不満を添えるなら、なぜ最後に役所広司が割腹しなくてはならないのか、恋か忠義か、それなりの強い論理性がなかったのが惜しまれるというものです。