歌手の田端義夫さんの訃報がニュースに流れました。94歳ですから大正8年生まれでしょうか。これで大正昭和がまたひとつ消えてしまいました。寂しいものです。
それにしても私にとって田端義夫は、大正・昭和というより常に今の人であり、もっとも身近に存在する歌手でした。というのも、私の車でのCDもカセットも、その主軸はここ30数年、田端義夫であったからです。
一般的な「かえり船」や「大利根月夜」にとどまりません。車を運転しながら聞くのは、常に「梅と兵隊」であり「19の春」であり「肩で風切るマドロスさん」であったのです。
あのしみじみとした歌声と歌詞が、何と疲れた気持ちを癒してくれたものでしょう。復員する兵隊たちが、「かえり船」を耳にしてみな涙したと伝えられるもの、十分理解できるというものです。
一ヶ月前、初孫が生まれました。携帯の待受け画面に入れたそのつぶらな瞳を食い入るように見て過ごす昨日今日です。しかし新しい生命が生まれるということは、古い生命が去るということです。そうつくづく思わされる今日の訃報です。