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Yuhiの読書日記+α

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螺鈿迷宮

2009年01月30日 00時22分15秒 | 小説
海堂尊作「螺鈿迷宮」を読了しました!この小説は、「チーム・バチスタの栄光」「ナイチンゲールの沈黙」に登場する田口・白鳥シリーズの1つです。とは言っても、この作品には田口先生は登場しませんので、番外編的な扱いになるんでしょうか???

実は「ナイチンゲールの沈黙」と「ジェネラル・ルージュの凱旋」はとても密接な関係にあるので、続けて一気に読んだ方がいいと聞いていて、私もそのつもりにしていたのですが、何故か図書館の予約ではこちらが先に来てしまいまして・・・。まぁ、番外編的なものだったら大丈夫かなとこちらから読み始めたのですが、意外にも「ナイチンゲールの沈黙」とも結構関わりがあったので、この順番で読んでも問題なかったみたいでホッとしています。

とは言え、正直なところ、「ナイチンゲール~」の方は、イマイチ面白いとは思えなかったので、先日読んだばかりのくせに内容がかなりあやふやなんですよねぇ・・・。なので、碧翠院桜宮病院などが出ていたのは覚えているんですが、あちらの事件との関わりみたいなものは思い出せません・・・。もう一度読み直す方が良さそうです。

で、肝心の小説の内容の方ですが、序盤は少々退屈でした。知っているキャラクターは全然出てこないし、事件に関係なさそうな入院患者や、さして重要でなさそうな事柄の描写が多いし、妙に重苦しい雰囲気もあったりで、なかなかページを繰る手が進まなかったのですが、白鳥が登場してからは俄然面白くなりました。

やっぱり、あのキャラが登場するだけで、明るくテンポが良くなりますよねー。人の生と死をめぐるストーリーで、かなり重い展開だっただけに、最初は無意味に思えた描写の数々が、ラストが近づくにつれ一気に収束していく所はなかなか爽快で良かったです!

また、あの氷姫がようやく登場してくれて、嬉しかったです。ドジなのかキレモノなのか全く分からないという、思っていた以上の面白いキャラクターのようで、今後の活躍が楽しみです。
それと、今回の主要登場人物である、天馬大吉くんや別宮葉子ちゃんも、また登場するのかなぁ・・。多分、出るような気がしていますけど、これまた今後の楽しみですね。

ナイチンゲールの沈黙

2009年01月01日 00時25分20秒 | 小説
海堂尊著「ナイチンゲールの沈黙」(上)(下)/宝島社文庫刊 を読了しました。この作品は、「チーム・バチスタの栄光」の続編ということで、田口&白鳥コンビも再登場しております。

以前、「チーム・バチスタ~」の感想を書いたときに、皆様から「ナイチンゲール」は正直イマイチだよーと教えて頂いていましたので、過剰な期待感は持たずに読んだ積もりなんですが、それでもやっぱり「イマイチ・・・」と思ってしまいました(汗)。
特に上巻なんて、事件が起きるまでにほとんど1冊分かかっていますし、出てくる登場人物もあまり魅力的には感じなくて、わりと薄い本なのに読むのに2週間もかかってしまいました。この後の作品はまた面白いと聞いていたので、頑張って読み続けられたのですが、もしそれがなければ、きっと途中で投げ出してしまったと思います。

「チーム・バチスタ」では医療現場や事件の描写がとてもリアルに描かれていて、そこに好感を持っていたのですが、この作品は逆にすごく抽象的な音楽や歌というものが事件の中核をなすという点で、あまりにも不確実で現実的ではない世界だったので、事件物としてはイマイチ楽しめなかったですね。

しかも、今作では田口の存在感が全然感じられなかったのが残念!一応、主人公だと思っていたのですが、今回は目立った活躍はなかったですよね。しかも白鳥とのカラミもさほどなかったように思いますし・・・。
対して、新たに登場した加納刑事はインパクト大!!でした。やっぱり、事件ものには刑事が不可欠ですし、なかなか面白そうなキャラクターだったので、今後も是非登場して欲しいのですが、今回の活躍を見ていると、田口&白鳥コンビよりも、加納&白鳥コンビになりそうで、ちょっと不安なものがありますね。

皆様が次作も一気読みした方がいいとアドバイスして下さっていたので、続けて読んでみるつもりです。


赤朽葉家の伝説

2008年12月02日 00時29分00秒 | 小説
桜庭一樹著「赤朽葉家の伝説」をとうとう読了しました~!第60回日本推理作家協会賞長編及び連作短編集部門受賞。第28回吉川英治文学新人賞、第137回直木三十五賞、センス・オブ・ジェンダー賞、本屋大賞候補となったそうです。

桜庭一樹さんの作品を読むのは2作目なんですが、前回読んだ「少女には似合わない職業」は内容はシビアながらも、わりとサクサクと読めるライトノベル風の作品だったんですが、この作品は、ずっしりと重く長い大河小説の趣で、全然イメージが違ってたので、ビックリしてしまいました。

この作品は、山陰地方の紅緑村という架空の村を舞台に、古くから製鉄業を営む旧家である赤朽葉家の女三代にわたる歴史を描いた作品です。

主人公瞳子の祖母にあたる赤朽葉万葉の幼い頃から物語は始まり、現在の瞳子の時代までの赤朽葉家に関わる、様々騒動が描かれているのですが、その間の日本の歴史的な事件もさりげなく絡めてあって、フィクションなのかどうか、一瞬迷ってしまう程、うまく物語の世界に溶け込んでいたのが面白かったです。

例えば、万葉は千里眼の持ち主で、身内や親しい人の死を視たりして、この物語は実はオカルトかファンタジーものなんだろうかと思い、二代目にあたる毛毬がヤンキーから売れっ子少女漫画家になったりするあたりは、まるでマンガチックだし、三代目の瞳子は、恋愛や就職に悩むごくごく普通の女の子だったりで、時代の趨勢が反映されているんですよねー。

また、ラスト付近では、万葉が「殺人者」であるという疑惑が浮上して、一気に話が緊迫し、夢中になって読んでしまいました。それまでは、推理小説作家賞なんていう雰囲気はどこにもなかったのですが、これで俄然話にメリハリが出て面白くなりました。

これまでの登場人物の死を洗いなおすわけですが、その中で一番気になったのが、泪のこと。彼は本当に事故死だったんでしょうか?それとも自殺?
元々、注意散漫な所があったと何度も作中で触れられているので、事故死も大いにあるとは思いますが、旧家の跡継ぎでいずれ結婚して子供をもうけなくてはならない宿命にあった泪が、先行きを思って自殺した・・・というのも多いにありえる話ですよね。こういうのって結局誰にも本当のことは分かりませんが、残されたものにとっては、一生消えない傷になりますよね・・・。


少女には向かない職業

2008年11月26日 00時03分16秒 | 小説
桜庭一樹著「少女には向かない職業」を読了しましたー!桜庭さんって、直木賞を受賞されていましたよね。その時から気にはなっていたのですが、これまで読む機会がなく・・・。今回、読むにあたって、どうかな???とちょっと心配しましたが、全然問題なく、サクサク読めました。

一人称の語り口など、ノリはライトノベルのようだったので、ライトノベルのジャンルに入れようか迷ったのですが、一応「創元推理文庫」レーベルから出てるので、普通の小説のジャンルに入れてみました。

上にも書いたように、明るく冗談好きな中学生の女の子「大西葵」の一人称で語られる物語で、話言葉や行動なども、イマドキの中学生らしく、とても軽妙な感じを受けるのですが、内容はなかなかシビア。
最初に仄めかされているように、ごく普通の中学生だった女の子が、2人の人間を殺害してしまう・・・というかなり衝撃的な内容となっています。

最初にそういうことを明かしてしまうと、後の楽しみがなくなってしまいそうなものですが、それでもハラハラ・ドキドキされられてしまうのは、殺人に至るまでの少女の内面を一人称で詳しく描くことによって、読み手をうまく引きずりこんでしまうからなんでしょうね。

なかなか面白かったので、直木賞受賞作候補の「赤朽葉家の伝説」も読んでみたくなりました!

白馬山荘殺人事件

2008年11月20日 00時12分29秒 | 小説
東野圭吾作「白馬山荘殺人事件」を読了しましたー!これって、東野さんの初期の作品なんですよね。この作品を書かれた当時は、本格推理っぽい作品を多く刊行されていて、私も夢中になって読んでいたんですけどね。何故か、この作品はこれまで未読でした。

本作では、主人公が兄の死をめぐる謎を解くために、親友と共に白馬のペンションを訪れるわけですが、このペンションがちょっと変わっていて、全ての部屋にマザー・グースの唄が飾られているのです。

推理小説では、よくこのマザー・グースの唄をモチーフにしたものが使用されていますよね。有名なものでは、アガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」とか。だから、ついついマザー・グースが出てくると、謎解きだーと思ってワクワクしてくるんですけど、実は詳しくは知らないんですよねー。今回の作品でも、唄が使われていましたけど、難しすぎてよく分かりませんでした(汗)。
でも、分からなくても、ちゃんと謎は解けますし、最後までグイグイと読者を引っ張っていってくれますので、ご安心を!

ところで、主人公とその親友のことを、初めはカタカナで表記していて、途中から漢字に変わるんですが、あれがよく分からなかったんですよね。カタカナにしてたのは、性別を明らかにさせないためかと思ったんですけど、それが後に生きてくるって訳ではなかったし。これが一番の謎かも・・・。

夢をかなえるゾウ

2008年11月08日 00時12分04秒 | 小説
水野敬也著「夢をかなえるゾウ」を読了しましたー。ベストセラーになっていて、先日は小栗旬主演でドラマ化もされていましたよね。
私も人から面白いし、ちょっとタメになるお話だよ、と聞かされていたので、気になっていたのですが・・・。

読んでみて、確かに面白い!!それにタメになる!!
この本の中に書かれていることは、私もこれまで何度か目にしたり耳にしたりしてきたことばかりです。でもそれを、すごく具体的に分かりやすく、そして失敗しやすい例(主人公)をとって、きっちり説明してあるところが画期的ですよねー。

それに何と言っても、最後まで興味が尽きないようなテンポの良さと文章の平易さ。これがないと、どんなに良いことが書いてあっても、なかなか読む気になれないですもん。

また、ちゃんと物語形式になっているところもいいですねー。私は、自己啓発本だとか思わずに、普通の小説だと思って読んでいましたけど、全然問題なかったです。
普通の小説の中に、ちょっとだけウンチクが描かれている・・・という感じで、偉人がこんな事を言ったとか、こんな風に成功したとか、ちょっとした知識を得られるだけでも私としては面白かったですよ。元々こういう事に詳しい人だったら、物足りないかもしれませんけどね。

そして、型破りな神様ガネーシャには大笑いさせられました。何で関西弁なの?とかインドの神様のクセにあんみつ好きだなんて・・・とか、ツッコミたいところもありますが、とにかくヘンな神様のお陰で、堅苦しい話にならずに済んだのかなーと思います。

とりあえず、私的には大満足な1冊でした。


チーム・バチスタの栄光

2008年10月25日 00時59分26秒 | 小説
海堂尊作「チーム・バチスタの栄光(上)(下)」(宝島社刊)を読みましたー!
以前に映画版は見ていたんですけどね。(感想はコチラから)

原作本は、第4回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作品で、映画化・ドラマ化もされている超人気作品。映画を見る前から小説版をぜひ読んでみようと思っていたものの、図書館で予約しても半年以上待ち・・・。その間に映画版の方を先に見てしまい、犯人も分かっちゃったし、小説はもういいかなーなんて思っていたんですけどね。
でも、これだけ人気のある小説だし、原作があるものは、やはり原作を読んでおかないと良さが分からないかも・・・と思って読んでみました。

読んでみての感想は、やっぱり小説版は読んでおくべき!ということでした。もちろん、映画には映画の良さ(手術シーンの緊迫感など)があったのですが、やはり2時間程度では、一人一人の描写に時間を割く余裕がなく、誰が誰やら・・・という感じでしたし、肝心の真犯人の方も唐突に分かっちゃった感じで、今ひとつ盛り上がりに欠けてたような・・・。それに、真犯人が分かったあとの後日談なんかも、小説版は細かく描写されていて、興味深かったです。

そして何と言っても、田口&白鳥コンビのインパクトが全然違う!映画版の田口は女性に変更されていて、ホワーっとしたお人よしタイプでしたが、小説版では、結構辛らつで皮肉っぽい部分もあり、単なるお人よしではない。
さらに、白鳥は常識をぶち壊すハチャメチャ感が映画よりも一段とスゴイ!次は何を言い出すか、何をするのか、全然予測がつかない楽しさがありましたねー。

これを読んだら、人気が出るのもナルホドと思いました。続編もあるようなので、こちらも是非読んでみるつもりです。

妃は船を沈める

2008年10月21日 00時49分08秒 | 小説
有栖川有栖著「妃は船を沈める」を読了しましたー!久しぶりに、火村&アリスのコンビを読めて、すごく懐かしかったです。

有栖川さんの本は結構読んでるんですけど、今作は、一風変わった作品に感じました。作品の冒頭にも書かれていましたが、第一部の「猿の左手」と第二部の「残酷な揺り籠」は登場人物が重なっているとは言え、別の物語、別の事件です。
それが、一部と二部の間をつなぐ幕間があることによって、全体的にまとまった一つの物語になっていて、なかなか面白い趣向だと思いました。

推理小説なので、ネタバレはまずいと思いますので、内容にはあまり触れられないのですが、犯人については、そういうのもアリかなーとは思いつつ、あまりスッキリとはしませんでしたね。最近は「やられたー!」と思うような作品ってあまりないので、ちょっと残念なのですが・・・。

有栖川さんの作品では、推理小説としての楽しみは勿論あるのですが、登場人物が興味深いところがあって、そちらもいつも楽しみに読んでいるんですよね。
今回は、珍しく女性の警察官が登場し、今後の登場も予感させるような内容で、なかなか意味深な感じでした。火村先生が女性を飲みに誘うなんて、めったにないことですし・・・。よっぽど気に入ったんでしょうか?それとも、何か考えがあるのか・・・。

火村先生については、過去に何かあるらしい・・・とこれまでの作品で匂わされてはきたのですが、最近の著作ではあまりそのことに触れられておらず、私もスッカリ忘れかかっていました。それが今回、久々にちょこっと言及されていました。
それは、火村先生がネクタイを緩めてるという部分。これまではネクタイを緩めているのは、ルーズな性格だから・・・という感じの描写だったのですが、どうやら「犯罪に絡む脅迫観念に起因するものでは・・・」となっていました。
もしかして、首を絞められた過去があるんでしょうか。ますます、火村先生の過去が知りたくなってきましたね。

さらわれたい女

2008年09月24日 00時45分09秒 | 小説
歌野昌午著「さらわれたい女」を読了しましたー!タイトルが変わっていて面白そうだったので、図書館で借りてみました。

自ら「私を誘拐して下さい」と頼んでくるという、一風変わった誘拐ミステリーです。ミステリーやサスペンスは好きな方ですが、誘拐を主要テーマにした作品って、考えてみればあまり読んだことがなかったかも・・・。
誘拐っていう犯罪は、身代金を取るのがかなり難しいので、作品にしづらいのかもな~。(←勝ってな想像です)

で、本作ですが、序盤はなんだか2時間ドラマを観てるような軽~い感じで進んでいきました。登場人物の言動が、あまりにもありきたりで嘘臭い!って思っていたら、途中から予想外の方向へ話が転がり、あとはグイグイと最後まで一気に読めました。まー、序盤の展開では終わるはずはないとはさすがに思っていましたけどね。
ラストは、ちょっと拍子抜け。ミステリーものなので、詳しくはここに書けませんが、そういう展開にするなら、最初からやってれば良かったんじゃ・・・と正直思っちゃいました。

でも、「電話」をうまく使っていてアイデアとしては、なかなか面白かったですよ。現在ではもう使えないものもあるようなので、すごく時代性を感じるんですけど、私の年代だとこんなのもあったなーと結構懐かしいですね。(使ったことないですが)


陽気なギャングの日常と襲撃

2008年09月07日 00時09分09秒 | 小説
伊坂幸太郎著「陽気なギャングの日常と襲撃」を読了しましたー!

陽気なギャングが地球を回す」の続編です。前作がなかなか面白かったので、続きを読むのをすごく楽しみにしてました。

今作はギャングたちの日常を中心に描かれたものだけに、スケールは少々小さくなった感がありますね。物語としてのまとまりやワクワク感も、やはり前作の方が大きかったですね。これは2作目としての宿命なのかもしれません。
でも、全然バラバラに起こった事件が、後半になって一つに収束されてくるところは相変わらず爽快ですよね。

また、この作品の面白さの一つには登場人物同士の会話があると思うのですが、その点も、前作よりこっちの方が楽しめたかなー。
前作では、少々まどろっこしすぎると思っていた会話文が、今作ではその「まどろっこしさ」が面白いと思えるようになってきたというか・・・。2作目だけあって、登場人物の性格やら行動パターンやらが分かってきて、キャラクターとしての面白さがより際立ってきたような気がします。

この「ギャング」シリーズは、続編を作ろうと思えば作れそうですが、伊坂さんは書くつもりがあるんでしょうか???
私もやっとこのキャラクターに馴染んで楽しめるようになってきたので、またいつか彼らに再会できるといいなーと思います。

とりあえず、まだまだ他に未読の作品がたくさんあるので、手に入る順に読んでいこうと思ってまーす。(図書館では予約しないと絶対に読めないし、予約していても来るまでに随分時間がかかっちゃうのです・・・)


レイクサイド

2008年07月23日 00時49分05秒 | 小説
東野圭吾著「レイクサイド」を読了しました。東野さんの作品は昔から結構読んでいるのですが、たくさんありすぎてタイトルを覚えられず、「もしかして、この本も読んだことあったかな?」と心配になったのですが、杞憂でした。

東野さんは今や、すごい人気作家さんですよね。私はわりと初期の頃から読んでいるのですが、当時はオーソドックスな推理小説を書かれる作家さんだという認識でいました。私は元々推理小説が大好きでしたし、東野さんの作品は読みやすい文章の上に、当時は青春物っぽい雰囲気の作品が多くて、すごく親しみやすかった記憶があります。新刊が出れば必ず読む作家さんでした。
ちなみに私が好きだったのは、「仮面山荘殺人事件」や「ある閉ざされた雪の山荘で」のような純粋な推理もの、あるいは「眠りの森」や「魔球」のような切ない展開のもの、また「悪意」「名探偵の掟」のようなシニカルな作品も良かったです。
でも最近は、ちょっと作風が変わってこられた気がして、あまり読まなくなっていました。だから、久しぶりの東野作品です。

今作は、謎解きを主体にしていた初期の作品と、最近の作品(と言っても、こちらはあまり読んでないから正確にはわかりませんが)との中間くらいに位置するような気がしました。
謎や伏線がちゃんと張られていて、推理小説的な要素はありつつも、社会問題のようなものも同時に描かれている感じでした。

謎や伏線の方は、どことなく見たことがあるような展開で、特に目新しさは感じませんでしたけど、犯人はちょっと意外性がありました。
まぁ、昨今の現状を鑑みれば、それも意外ではないのかもしれませんが、まさかそういうオチになるとは思っていなかったので・・・。(後味は少々悪いですけど)

久しぶりに読んだわけですが、相変わらず、分かりやすく読みやすい文体で、ラストまでグイグイひき付ける文章は、サスガだなーと再認識しました。
私としては、本格推理っぽい物をまた書いて欲しいのですが、色んなタイプの作品を次々の書ける能力は、本当にスゴイですよ。本物のエンターテイナーだなと思います。

オーデュボンの祈り

2008年07月11日 00時36分24秒 | 小説
伊坂幸太郎著「オーデュボンの祈り」を読了しました。伊坂さんのデビュー作で、第五回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞した作品でもあるということで、ミステリー好きとしては、ものすごく楽しみに読んだわけですが・・・。これまで読んだ伊坂作品の中でも(といってもまだ3作目ですが)、特に変わったお話で、かなり異色のミステリーでした。

まず、舞台の設定からしてかなり変わってます。なんたって、150年間、世間とほとんど交流のない島が舞台なんですよー。「孤島もの」というのはミステリーの世界ではよくある設定ではありますが、この島は完全なる「孤島」ではないので、ミステリーとして「孤島」を設定しているわけではないようです。
さらに、その島に住む人たちも、かなりの奇人変人ぞろい。嘘しか話さない男やら、殺人がなぜか許される男、極めつけは未来を予測し言葉を喋る案山子!!その案山子が殺される・・・というのが、この話の根幹をなすストーリーなのです。

こんな「ありえない」設定のストーリーだと、普通だったら物語世界に入り込めなかったりするものですが、そこはさすが伊坂さん。絶対にありえない世界、ありえない登場人物に、グイグイと引き込んでくれました。
この辺りの筆力は、とてもデビュー作だとは思えません。

序盤~中盤にかけて、登場人物たちの一見無関係に思える言動が続き、少々退屈しながら読んでいたのですが、ラスト付近になると全ての伏線が一気に収束してくるところが爽快でした!
一度読み終えた後、もう一度最初の方を読み返してみたら、たくさんの伏線があちこちに仕掛けられていたことが分かり驚きました。
一度読むだけでは勿体無い。2度楽しめる小説ですね。


陽気なギャングが地球を回す

2008年07月03日 00時25分52秒 | 小説
 伊坂幸太郎「陽気なギャングが地球を回す」を読了しました~!伊坂さんの作品を読むのは、「死神の精度」に続き、2作目になります。

 確か、このお話は映画化されてましたよね?個性的なタイトルなんで、どんな話なのかずっと気になってたんですよね。
読んでみると、ちょっと変わった特技を持つ銀行強盗4人組のお話でした。もともと、頭脳を使って銀行強盗するというタイプのストーリーは、かなり私好みなので、ワクワクしながら読んだのですが、さすが伊坂さんだけあって、文章はクールでスタイリッシュ。しかも、サクサク読める平易な文体ですごく読みやすかったです。

 ただ、サクサク読めすぎて、各登場人物の持つ魅力がはっきりとは読み取れなかったのが、ちょっと残念でした。これは私があまりにもササっと読みすぎたせいもあると思うんですけどね。皆面白い特技を持っていることはよく分かったのですが、じゃあ普段はどんな生活をしているのかとか、どんな考え方なのかというところまでは読み取れなかったんですよね。次作もあるようなので、その辺は次に読むときにじっくりと読んでみようと思ってます。
 
 序盤は登場人物たちの会話が回りくどいし、余計なところが多すぎるなーと感じてたのですが、それが後々になって効いてくる伏線の張り方はサスガですねー。

顔 FACE

2008年06月23日 00時08分32秒 | 小説
横山秀夫作「顔 FACE 」を読了しました!

横山作品は「真相」に続き2作目です。今回は、元似顔絵描き婦警の平野瑞穂を主人公とした短編集です。

読みはじめて気づいたのですが、この作品って、確か仲間由紀恵主演でドラマ化してましたよね。ドラマはチラッと見ただけで、中身は全然知らなかったのですが、確かにこんな作品だったような・・・。

短編集なのですが、1人の婦警の成長する姿を描いた連作もので、ミステリーとして読むと、正直イマイチ盛り上がりに欠けました。
しかし、男社会である警察の中で、必死でもがきながらも前に進んでいく1人の婦警の姿としては、なかなか興味深く読むことができました。

ただ、ちょっと残念なのは、瑞穂が折角似顔絵描きを得意としている婦警なのだから、もっとそれを元にした大活躍を見せて欲しかった。
それは確かに現実的ではないだろうし、瑞穂のような扱いを受けるのがリアルなんだろうとは思いますが、せめてラストくらいは、そういう方面での活躍があったらもっと楽しめただろうなーと思います。

決して面白くないわけではなかったのですが、アっという驚きや、ジーンとくるエピソードが特になかったので、少々印象が薄めだった気がします。
こんな地味な話をドラマ化したわけだから、どんなドラマだったのか、そっちの方が妙に気になる・・・。


犯人に告ぐ

2008年06月03日 00時40分53秒 | 小説
雫井脩介作「犯人に告ぐ」を読了しました。雫井さんの本は「火の粉」を読んで、なかなか面白かったので、またいつか読もうと思っていたのですが、この本がベストセラーになっているとは知らず・・・。今回はたまたま図書館で目に付いたので、手に取ってみました。


「アンフェア」なんかもそうだったと思うのですが、マスコミを使った「劇場型の犯罪」を扱った作品が、最近注目をあびているのでしょうか。
この作品も、まさにマスコミを使って犯人と警察が駆け引きをしながら、事件を解決に導くというもので、なかなかスリルがあって面白かったです。
しかも、単に「犯人VS警察」という構図だけではなく、「マスコミVS警察」だったり、警察内部の争いだったりと、様々な構図が見え隠れしていて、より一層楽しめました。
特に、警察内部からの情報漏れを察知した主人公の巻島が、敵をあっと言わせた時には、爽快感を感じましたよー。

文章も分かりやすく、サラっとしていて、とても読みやすいし、普段あまり小説を読まれない方でも読みやすい作品ではないかと思います。ベストセラーになるのも分かります。

とは言え、不満も少々。犯人は最後に捕まりましたが、結局の所、動機は何だったのか?という事については、明確な回答が書かれていませんでしたね。それに、巻島がそもそも左遷されることになった事件の犯人についても、結局誰だったのか曖昧なままだったのが、何となくスッキリしません。
読者の想像におまかせします、という事なのでしょうけど、私はハッキリ書いてくれている方が好みなので、ちょっと物足りなかったです。
この辺が、純粋な推理小説とは違うところで、評価が分かれるかも・・・。