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Yuhiの読書日記+α

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ジーン・ワルツ

2009年06月10日 00時25分54秒 | 小説
海堂尊著「ジーン・ワルツ」をようやく読了しましたー。「ひかりの剣」に出ていた清川さんが準主役で出てると聞いてから、ずっと読みたかったのですが、図書館で予約してもなかなか来なくて・・・。

本作は「チーム・バチスタ」シリーズの番外編に位置づけられると思います。海堂さんの作品は、他の作品とのリンクがたくさんあるので、読む冊数が増える程に、楽しみが増していく感じがして、いつも楽しみなんですよね。

で、今回は、今社会で問題となっている産婦人科の医師不足、不妊治療、代理母などが主要なテーマとなっていて、帝華大学医学部勤務の女性医師:曽根崎理恵が主人公として、様々な問題点を読者に投げかけていきます。
これまで、子供を出産することなんて誰もがやってることだし簡単にできると思っていただけに、出産や不妊治療の大変さとか、産婦人科だけには限らないけれども医師不足の問題、子供を産む母親の気持ちなどなど、興味深いところがたくさんあって面白かったです。

ところがラストの方で、空気は一変!!人の力で生命をも操れるということが分かって、かなり怖ーくなってきました。
人工授精で子供を授かった夫婦がいましたが、主人公の医師がとある操作をしたことによって、ひょっとしたら自分の子供でない子供を出産した可能性がでてきたんですよね。その夫婦は自分たちの子供だと信じているわけで、ちょっとひどすぎる気がして・・・。医師の都合で勝手にそんなことをしてしまってもいいの???せめて、その夫婦が承諾の上なら仕方ないかなと思うのですが・・・。私的には、かなりショッキングでしたね。

それまでは、型破りではあるけれど、産婦人科医療について真摯に考えていて、上司に盾突いても世間を敵に回しても突き進んでいく、この医師のことをスゴイなーと思っていただけに、突然の方向転換ぶりに唖然としました。(いや、最初から確信犯だったんだろうけど、読者には分からなかっただけですね)

どんな理由があろうとも、それはしてはいけない事ではないのかな?ましてや、男性の方もそんな事に使われるなんて、全く知らなかったわけだし、かなり勝手すぎると思いましたね。

ぐいぐい読ませる筆力はさすがで、すごく面白く一気に読めただけに、ラストだけが、妙に後味の悪さが残る作品となってしまいました・・・。

あ、ちなみに、「ひかりの剣」で速水さんのライバルとして登場した清川さんは、帝華大学の産婦人科の准教授になっておられました。
「ひかりの剣」の時も、二枚目でなんでも卒なくこなし、女性にはモテモテとして描かれていましたが、今作ではさらにパワーアップ。結婚はしていないようですが、女性との噂には事欠かない女たらしで、相変わらず何事にも本気にならないチャラチャラした生き方をしてるんですよね。
まぁ、そのせいで、後で大変な目にも遭うのは自業自得なんでしょうけど、この人はどこか憎めないところがあるんですよね。こういうのを見ると、海堂さんはキャラの作り方が上手いなーと改めて思います。
また、他の作品にも出てきてくれることを祈ってます。


探偵倶楽部

2009年06月04日 00時07分44秒 | 小説
東野圭吾著「探偵倶楽部」を読了しましたー。東野さんの小説は、結構好きで読んできたつもりだったのですが、この作品はつい先日までタイトルすら知りませんでした・・・。探偵ものは大好きなのにね・・・。

この「探偵倶楽部」というのは政財界のVIPのみを会員とする調査機関で、秘密は絶対厳守してくれるし、調査も的確で迅速と評判の組織。でも、その調査方法等は、明らかにされないんですよねー。

本書でも5つの事件が描かれていますが、探偵倶楽部の調査員はあくまでも協力者的立場で、素性は一切明らかにされません。それだけビジネスライクで、客観的だし、鮮やかな手際で事件の真相を解明してくれるのは有難い。
でも、どれも同じようなパターンでしか描かれていないので、事件の謎を解くということ自体は楽しめるんですが、もうひとひねりあっても良かったんじゃないかなーという気がします。
折角の「探偵倶楽部」という組織が、作品の中にうまくとけこんでない気がして・・・。これだったら、警察が真相を暴いてもいいし、あえて「探偵倶楽部」の仕事にする必要あるのかな、という気がしてなりません。
探偵倶楽部をもっとブラックな感じにするとインパクトがあって面白かったかも・・・。

美しきもの見し人は

2009年05月31日 11時24分02秒 | 小説
篠田真由美著「美しきもの見し人は」を読了しました。建築探偵シリーズ以外の篠田さんの小説は、実は読むのは初めてですが、結構楽しめました。建築探偵シリーズとは違って、本作はミステリではなくゴシック・ロマンになると思うのですが、篠田さんはこっちの方が合ってるんじゃないかなーって気がしました。

離島にある怪しげな大きな館、いわくありげな住人達、不可思議な謎などなど・・・。ちょっとホラーっぽいというか、不気味な雰囲気を出すのが上手いなーって気がします。ミステリと違って、全ての謎を明らかにしなければならないわけでもないので、雰囲気が出ていて、興味深い謎があれば、最後まで楽しめますしね。

そういう意味では、本作では不可解な謎が色々と出てきて、ぐいぐい読み進められました。また、作中に色々な手がかりがばら撒かれていて、後になって一気に繋がってくる爽快感もありましたし・・・。
もっとも、この館の主の失踪の件については、後味悪かったですけどね・・・。

ラストの方は時間がなくて、一気にさーっと読んでしまったので、もしかすると私に読み落としがあったのかもしれないのですが、紅子さんの正体って結局何だったのでしょうか???ヴァチカンから封筒が届いたということしか書かれてなかった気がするんですけど・・・。
もしお分かりになる方がいらっしゃったら、是非教えて欲しいです。

カンナ 飛鳥の光臨

2009年05月23日 00時12分44秒 | 小説
高田崇史著「カンナ 飛鳥の光臨」を読了しました。高田さんの小説を読むのはすごく久しぶりな上、新シリーズだったので、ちょっとドキドキしながら読みました。

本シリーズでは、伊賀にある神社の跡取りである甲斐と、その神社の巫女で現役東大生・貴湖がコンビを組み、現実に起こった事件を追いかけていく内に、歴史上の謎が絡んでくる・・・というストーリーになるようです。

で、本作ではタイトルにあるように、飛鳥時代の謎(聖徳太子と、大化の改新)を中心に取り上げられています。聖徳太子は実はいなかったのでは?とか、大化の改新が実は民衆にはあまり受け入れられていなかったとか、「QED」シリーズもそうでしたが、教科書で教えられたのとは全く違う、新たな解釈を知ることができて、なかなか興味深かったです。
特に、「日本書紀」で年代の書き間違いだと思われていたことが、実は書き間違えなどではなかったら?とか、私も以前から気になっていたことが書かれていて、面白かったです。

基本的に「QED」シリーズと同じような歴史ミステリーですけど、主人公が頼りなくボーっとしてるからか、QEDよりも軽くて読みやすい印象です。しかも、忍者だとか、予知能力がある子供だとか、少々現実離れした所があったりするので、好みが別れるところかもしれませんね。
私自身は、最近の「QED」シリーズは、難しくなりすぎてるなーと感じていたので、こっちの方がサクサク読めて楽しいかなと思いました。

本書はラストでも明かされなかった謎がいくつかあったのし、面白くなりそうなキャラクターも何人かいたので、続きを読むのが楽しみです。


火村英生に捧げる犯罪

2009年05月13日 01時03分50秒 | 小説
有栖川有栖著「火村英生に捧げる犯罪」を読了しました。本作は、タイトルにもあるように、作家アリスシリーズの探偵役をつとめる<臨床犯罪学者>火村准教授(助教授から変更されていました!)が事件を解決する短編集となっています。

昔はこのシリーズをかなり読んでいたのですが、最近はちょっとご無沙汰気味だったので、すごく懐かしい気持ちになりました。このシリーズは、アリスと火村の年齢が34歳で止まったままになっているし、他のキャラも全然変わらないので、それもまた懐かしさを感じさせる一因なのかも・・・。

長い影
短編だと思っていたら、結構長くてビックリ。中篇程の長さがありました。さすがに長いだけあって、トリックもなかなか凝っていて、全然分からなかったです。あのトリックは、現実には可能なのかどうか私には分かりませんけどね。


鸚鵡返し
これは逆に短い!でも面白かったです。何がって、やっぱり火村先生が語り手になっているところ!!火村先生は常日頃、アリスにこんな風な感じで喋ってるんだと思うと、なんだか可笑しくて。
あとがきによると、元々は携帯小説として書いたものだったので、字数を圧縮する為の究極のワザだったようです。でも、これは面白い試みだし、成功だと思いますよ~。


あるいは四風荘殺人事件
こちらもまた一風変わった作品となっています。なんと、未完の推理小説の犯人を、火村先生が解決するというもの。実際に起こった事件じゃないものを解決するなんて、これまた初めての試みだと思いますよ~。火村先生は、推理小説なんて、全然読まないし、どっちかというとバカにしてたような気がしたので、その話を受けるというだけでも驚きでしたしねー。
この作品のオチは、実はあの作品に似てるな~と思ったりしたのですが、でも、↑のことだけでも、私は随分楽しめたので良かったです。


殺意と善意の顛末
これも携帯小説向けに書かれた作品とのことで、ごく短いです。こんなんでホシを落としていいのかなーというツッコミはしちゃダメなんだろうなぁ・・・。


偽りのペア
このオチもちょっと苦しい気がしますが、そういう偶然もあるのかなぁ・・・という感じで、あまり深くは考えないことにします(笑)。
短い作品は、凝ったことができないので、難しいですね~。


火村英生に捧げる犯罪
火村先生のファンならば、タイトルを聞くだけで興味をソソられますね。この本の表題にもなっています。
タイトルもある意味トリックになってるのかな。犯人の狙いがまさか、あそこにあるなんて・・・!とちょっと驚きました。作者様の狙いに見事にハマった感じですね。ただ、タイトルから想像していたような火村先生大活躍!という話ではなかったのが、少々物足りなさを感じたのも事実ですが。


殺風景な部屋
火村先生が新幹線に閉じ込められている間に、アリスから聞いた情報だけで謎を解くという趣向。どちらが犯人を当てられるか、アリスと賭けをするのが笑えました。


雷雨の庭で
テレビの推理ものを書いてる放送作家コンビというのが面白かったですね。しかも、東京と神戸に離れていて、ネットを使って打ち合わせしてる・・・というのもすごく現代的です。もっとも、それを使ってアリバイ作りしてるというような展開じゃなかったのは、少々肩透かしだったかなー。こういう設定で、すごいトリックを使った犯罪だったら、さらに面白かっただろうなと思います。



イノセント・ゲリラの祝祭

2009年05月07日 00時02分09秒 | 小説
海堂尊著「イノセント・ゲリラの祝祭」を読了しましたー。「チーム・バチスタの栄光」に始まる田口&白鳥シリーズの本編4作目です。
でも、間に色んな外伝(?)を読んだので、本編ではまだ4作目だとは、ちょっと信じられない気がします。それくらい、もう海堂ワールドのキャラクターは、馴染んでしまってるんですよね。

で、今作ですが、さすが本編だけあって、田口・白鳥はもちろんのこと、高階病院長、加納刑事、玉村刑事、藤原看護師、別宮記者ら、主なメンバーは健在です。
それ以外に、今回新たに出てきたキャラクターも超個性的。白鳥と同期のミスター厚生労働省こと八神課長や、学生時代に白鳥・加納らと共に「確率研究会」に所属していたという内閣府主任研究官の高嶺、常に香水の匂いを撒き散らしている西郷教授などなど、これまで以上に濃いキャラクターが勢ぞろいし、今後も何やら活躍してくれそうな予感がして楽しみになってきました。しかし、今回一番強烈な印象を残したのは、何といっても彦根氏。田口の後輩にあたるらしいのですが、そのパワーたるや恐るべし!今回のストーリーでも、後半は独壇場でしたもんね。

ただ今回のストーリー、キャラクターは相変わらず個性的で面白かったのですが、全体的にあまり動きがないというか何というか。ほとんどが論戦で、何かを究明するというような事件性、サスペンス性はあまりなく、それがちょっと物足りない。論戦自体はなかなか興味深い内容で面白かったのですが、テーマが大きすぎてピンとこない部分がありましたし・・・。

また、今回の話は、どうやら何かの事件の前フリみたいですねー。ところどころに差し挟まれている新聞記事や関係者の発言からして、「北」の問題と「南」の問題が今後からんでくるようで、なんかそっちの方が面白そうで気になっちゃいました。


むかし僕が死んだ家

2009年04月29日 22時26分26秒 | 小説
東野圭吾著「むかし僕が死んだ家」を読了しました。独特のタイトルのため、以前から気になっていたのですが、ようやく読むことができて良かったです。

この作品は純粋な推理小説とは違っているので、私の好きなタイプの作品ではないかなと思ったのですが、読み始めると一気に作品の世界にひかれていってしまいました。
過去にあったかどうかも不確かな事件らしきものの断片を少しずつ拾い集めて、真実へとたどり着いていく過程が、とても緊張感に溢れていて、しかもちょっと背筋が寒くなるようなホラーっぽい要素も詰め込まれていて、ラストまでグイグイと引っ張られていきました。

途中で、主人公の「僕」と元彼女が、過去に接点があったんじゃないのかと考えたりもしたのですが、ミスリードだったのか、単なる私の考えすぎだったのか、全然違っていたので、多少脱力してしまいましたが・・・。
色んな伏線が散りばめられていたことが分かった時の爽快感は、何度味わってもいいものですね。

ラストはちょっと切ない雰囲気ですが、変なハッピーエンドよりも余韻があっていい終わり方かなと思いました。

夢見る黄金地球儀

2009年04月23日 00時10分47秒 | 小説
海堂尊著「夢見る黄金地球儀」を読了しました。海堂さんの小説は、人物や舞台、小道具などなど、これまで読んだ全ての作品で、クロスオーバーしている部分がありましたが、今作もそれは同じで、「ナイチンゲール~」に登場していた浜田小夜さんと牧村瑞人くんが登場していたり、舞台もこれまで同様、桜宮市です。

また細かなところでは、桜宮三姉妹というビンテージ・ワインなんかも登場し、どこかの作品に出ていたよな~と、海堂さんの作品を読んでいる人なら、思わずニヤリとしてしまう所も健在です。

ただ、時間的には、未来の話になるようなんですよね。過去話はいくつか読みましたが、未来のストーリーというのは、私が今まで読んだ作品にはなかったので、ちょっと驚きました。

また、これまでの作品と違って、医療のイの字もないストーリーなんですよね。しかも、文体やストーリーも、すごく軽いノリで書かれているので、サクサク読めて面白い半面、現実味や奥行きのようなものは薄れてしまってるような気がしました。
個人的には、やっぱりこれまでのシリーズの方が好きかなぁ・・・。


ガリレオの苦悩

2009年04月11日 00時16分48秒 | 小説
東野圭吾著「ガリレオの苦悩」を読了しました。探偵ガリレオシリーズの第4弾で、先日読了したばかりの「聖女の救済」とは同時刊行されたものです。ただ、「聖女~」とは違い、こちらは短編集となっています。何となく懐かしさを感じたのですが、それは初期の頃の作品とパターンが似通ってるからだったのですね。
初期の頃のこのシリーズは、短編で、物理学者の湯川が、物理学に基づいた知識を使って難事件を解決するというパターンでした。今回、まさにそれが戻ってきたんだなーと思うと、ちょっと感慨深いものがありましたね。

とは言え、以前と全く同じというわけではありません。本書では、湯川自身や学生時代の恩師、友人たちに降りかかってくる事件が多く、その影響で少しずつ湯川の人間性や内面が見えてきました。
以前は、物理の事にしか興味がなく、人づきあいも苦手な変人で、友人と言えば草薙刑事しかいないんだろうなーと思っていたのですが、本書を読んで、ちょっとイメージが変わりましたね。
彼だって、ごく普通の人間であり、逡巡したり悩んだり苦しかったりするわけです。それが本書のタイトルにもつながってるんだろうなーと思います。
湯川のそういう一面が明らかにされることによって、ますますガリレオシリーズは人気出るでしょうね。

で、肝心の内容ですが、5つの短編から成り立っています。
どれも湯川の才能がいかんなく発揮されていて面白かったのですが、私が一番面白かったのは、「攪乱す」というお話。いつもは警察から依頼されてしぶしぶ動くというパターンの湯川自身が、犯人からターゲットにされてしまうというのが見ものです。

それと、今回は草薙刑事よりも内海刑事の方が目立ってる感じがしました。というか、湯川の相棒は内海刑事になりつつあるような・・・。これってやっぱりドラマの影響でしょうねぇ・・・。ドラマ化される前は内海刑事なんて、影も形もなかったわけですから。女性刑事がいた方が女性ならではの視点で見ると違ったものが見えることも多いので、面白いのは事実ですが、草薙さんがちょっと可哀そうな気もしました。

黒影の館 建築探偵桜井京介の事件簿

2009年04月07日 00時23分46秒 | 小説
篠田真由美著「黒影の館 建築探偵桜井京介の事件簿」を読了しました!本作は、建築探偵シリーズの本編では第14作目となります。作者さまは、当初からこのシリーズは全15巻であると明言されていますので、残るところはあと1冊というわけですねー。わくわく。

確かに本作を読むと、ラストに向かって、これまでにばら蒔かれた様々な伏線を回収し、シリーズ最大の謎である「桜井京介」の過去についてもとうとう明らかになりはじめました。(でも全部ではないので、残念・・・)
まだお読みでない方のために、詳しくは書きませんが、桜井京介の本名や、彼の実家、親・兄弟・親戚縁者などなどが登場します。
また、神代さんと京介との出会いや、門野氏との関わりも明らかになってくるので、シリーズを読んでいる人にとっては、必読の書となっています。
また、これまでの作品の場合、シリーズものとは言え、順番をバラバラに読んだり、その1冊だけを読んでしまっても、とりあえず内容にはついていけたと思いますが、本作だけはそうはいきません。まあ、この作品だけを読む人というのはそうはいないと思いますが、万が一、たまたま手に取ってしまった人がいた場合、ちんぷんかんぷんな内容になってしまっているでしょうね。
それくらい、過去の作品との絡みが多いので、できれば一度復習してから読んだ方が楽しめると思います。実際、私もかなり忘れてる所があって、思い出しながら読んでいたので・・・。

で、今回の作品を読んで思ったのは、篠田さんはゴシックロマンっぽいものが合ってるなーということ。暗くて厳めしく曰くありげな旧家に、怪しげな登場人物たち・・・と、ごく普通の現代ものを描くよりもずっとイメージが湧いて、雰囲気が出ていたと思います。今作も推理ものとしてはイマイチぴんと来なかったけど、作品としては、なかなか楽しめました。

何はともあれ、このシリーズもあと1冊。京介の謎も、明らかになったように見せて、まだもう一段あるようですし、すっごく気になりますが、ずっと待ってやっと辿り着いたわけだし、あと1年程、頑張って待ちたいと思います。



聖女の救済

2009年03月26日 00時19分05秒 | 小説
東野圭吾著「聖女の救済」を読了しました。この作品は、探偵ガリレオシリーズ第4弾、長編では2作目となる推理ものです。

東野圭吾さんは、シリーズものをほとんどお書きにならない作家さんだと思っていたのですが、テレビシリーズで人気が出たからか、あるいはガリレオを気に入っておられるからか、これはシリーズものとして定着させるようですね。

昨年上映された「容疑者Xの献身」を見たこともあり、今回の作品からは、湯川先生のイメージがすっかり福山さんに変わりました。
読んでいてビックリしたのは、内海刑事!!このキャラクターはテレビシリーズ用に設定されただけのものだと思っていたら、今回から小説の方にも登場していました。映像と小説の双方向に影響を与え合っていると考えると、なかなか面白いですね。

で、ストーリーの方ですが、なかなか楽しく読むことができました。東野さんって、どの本も分かりやすくて読みやすい文章なので、安心して読むことができますね。
推理ものとしては、トリックがちょっと強引で現実的ではないように思いました。ネタばれになるので、詳しくは書けないのですが、いくら気をつけていても、何があるか分からないし、実際に自分が病気になったり、身内に不幸があったりしたら、考えている通りには進まないような気がします。でも、万が一そうであってもいいと思っていたのだとしたら、それはそれでアリかなぁ・・・。
最初から犯人は分かったも同然だったのに、最後まで謎を解くことができなかったので、十分楽しめましたけどね。

それにしても、この作品のタイトルを聞いた時は、センスがない変なタイトルだなーと思った(失礼!)のですが、ラストになってその意味がよーく分かりました。
ま、聖女っていうのは、ちょっと微妙だと思いますが・・・。


ひかりの剣

2009年03月20日 10時58分59秒 | 小説
海堂尊著「ひかりの剣」を読了しましたー!本作は、「チーム・バチスタの栄光」に続く田口&白鳥シリーズの番外編で、「ジェネラル・ルージュの凱旋」の主要人物である速水が、まだ医学生で剣道一筋だった時代を描いた作品です。
同じく番外編である「ブラックペアン1988」とも時代が重なっているので、シリーズを読んでいると、思わずニヤリとしてしまう所もありますが、別に読んでいなくてもこれ単体で充分楽しめる作品ですね。

海堂さんの作品は、「チーム・バチスタの栄光」→「ナイチンゲールの沈黙」→「螺鈿迷宮」→「ジェネラル・ルージュの凱旋」→「ブラックペアン1988」と読んできたのですが、今回は初めて医療にまつわるシーンがほとんど出てこなかった上に、ミステリー的要素もサスペンス要素も全くなしでしたね。普通の青春スポ根ものという感じで、私は新鮮で楽しく読めたのですが、これまでのようなものを期待していると、ちょっと物足りないと思われるかもしれません。

それにしても、あのジェネラル・ルージュこと速水さんには、こんな過去があったとは!20年後のイメージとはちょっと違っていて、かなり生真面目で責任感が強いのにビックリしました。いや、20年後だって責任感は強いと思うんですよ。けど、表現の仕方が違うというか・・・。人前ではちゃらんぽらんなように見せかけるようになったのかな。でも、熱くて真っ直ぐな心根はずっと変わりませんね。

対するライバルの清川吾郎は、速水とは全く違うタイプですね。いい加減で、何でも適当に済ませてしまうのに、頭も要領もいいからか、ちゃんと結果も出せて。凡人から見ると許せないタイプの人間ですが、この清川はなんだか憎めない。何でもできると逆につまらないのかもねーと思ってしまう・・・。外見も性格も泥臭いことなんて全然似合わない、スマートで都会的なイメージです。

そんな二人が対決する物語のラストは、何となく想像はついていたものの、やっぱりドキドキしました。この辺の臨場感はいいですね。どんな結果であれ、最善を尽くしたと感じられるのはいいものです。

で、今回主役二人以上にといっていいほど大活躍だったのが、高階顧問。20年後には東城大医学部の病院長にまでなっておられる方ですが、この方のタヌキっぷりがスゴイです。速水と清川の二人に色々と吹き込んで、思い切り操ってましたね。でも全然悪びれてないところが、サスガというべきなのか・・・。

そうそう、今まで読むべきか迷っていた「ジーン・ワルツ」という作品に、清川さんが登場してるらしいですね。そう聞くと、やっぱり読まなきゃって気になってきました。

ブラックペアン1988

2009年03月06日 00時08分50秒 | 小説
海堂尊著「ブラックペアン1988」を読了しました!

この小説は、「チーム・バチスタの栄光」から始まる田口&白鳥シリーズの番外編にあたる作品で、「バチスタ」の時代から約20年前の事件を描いています。

番外編という事だし(ましてや20年も前の話だし)、少々不安に思いながら読み進めていったのですが、これがすご~く面白かった!!
海堂さん、どんどん上達していってるんじゃないですか~

まず良かったのは、主人公が若いこと。「チーム・バチスタ~」等のシリーズ本編では、主だった登場人物は皆、成熟したと言っていいのか分かりませんが、ある程度スタイルの決まった大人たちばかりで、スゴイなーとは思うものの、身近な存在には感じにくかったんですよね。
それが今作では、若くて未熟な新米外科医から見た医療の世界を描いてあって、すごく初々しく新鮮に感じました。
世良くん、現在はどうしてるのかなぁ・・・。いつか本編に出てくるかもしれませんね。

また、大学病院内の権力争いとか、医師と医薬品会社との持ちつ持たれつの間柄とか、私たちが普段目にしない問題点や裏の世界を覗き見た感じで、なかなか興味深かったです。患者のことを考えている医師って、どれだけいるんだろう・・と不安にもなりましたが(汗)

さらに、シリーズ本編に登場するおなじみの顔をあちらこちらに見ることができ、そういう意味でもファン心をくすぐる作品となっていました。
高階病院長が阿修羅とあだ名されていたとか、田口が神経内科を志したそもそもの原点のエピソードが、ちゃーんと描かれていて面白かった
特に高階病院長が、あんな人だったとは!!食えないおじさん(失礼!)とは思っていたけど、過去にこんなことがあったとはねぇ・・・。

で、今作で一番気になったのは、何と言っても渡海医師。<悪魔>とあだ名される程の性格&態度の悪さですが、腕は一級というところがミソですよね。最初はイヤな人だと思っていたけど、だんだんとその魅力にはまってくるというか・・・。ラストの引き際はお見事でした。
でも結局、その後の行方は知れないんですよね。現在も医師を続けているのか・・・。今後の作品に出てくることはあるのか、とても気になります。

なんだか纏まりのない文章になってしまいましたが、シリーズのファンの人もそうでない人も楽しめるエンターテイメントな作品となっていて、私としては大満足でした~



タイタニア/1~3巻

2009年02月14日 00時09分29秒 | 小説
田中芳樹著「タイタニア」(講談社文庫刊)の1~3巻を読了しましたー!
何でもこの小説、随分以前に書かれた作品なんですってね。それが未完のままとなっていたのを、今回アニメ化された事によって、再度講談社文庫から発売されたそうです。(でも相変わらず、続編が書かれる予定はないようなのが残念・・・)

私は「銀河英雄伝説」の大ファンなんですが、田中芳樹さんの作品では、実はそれしか読んだことがなかったんです。
何しろ、完結している作品はすごく少ないと聞いていたので、なかなか手を出す気にはなれず・・・。今回、講談社文庫から再発売されなければ、この作品もきっと読むことはなかったと思いますし、アニメ化されて、新たなファンも増えたと思うので、是非続きを書く気になって欲しいなぁ・・・。

「銀河英雄伝説」と同様の宇宙を舞台にした歴史もの、という感じのストーリーなんですが、文庫のあとがきにもあったように、銀英伝と決定的に違うのは、いわゆる英雄が存在しないという事。
登場人物は皆、一癖も二癖もあるような人ばかりなので、誰かに感情移入しようと思っても、なかなか難しいんですよね。でも、そこがリアルというか、より人間臭い部分があって、味があるようにも思います。

ちなみに私は、この癖のある登場人物の中では、アリアバートがお気に入り。序盤はジュスランがいいかなーと思っていたのですが、ストーリーが進むにつれ、何事に対しても懐疑的で内省的すぎるのが苦手になってきまして・・・(苦笑)。
最初はイマイチだと思ったアリアバートの方が、温厚で潔くて好青年という良いイメージを持つようになりました。
他には、リディア姫やバルアミーも個性的で魅力的キャラクターですね。

ジュスランとアリアバートの二人の従兄弟同士のフクザツな関係とか、藩王アジュマーンの真意とか、タイタニアと対立するファン・ヒューリック一党の動きとか、今後さらに面白くなっていきそうなだけに、中途半端なところで止まっているのが、ものすごーく残念なのですが・・・。

原作がこんな中途半端な所までしかないのに、アニメではどうオチをつけるんでしょうか・・・。もしかすると、アニメはアニメの独自のストーリー展開になっていくのかもしれませんが・・・。それはそれで気になりますね。


ジェネラル・ルージュの凱旋

2009年02月08日 00時39分07秒 | 小説
海堂尊著「ジェネラル・ルージュの凱旋」を読了しましたー!!

本作は、「チーム・バチスタの栄光」から始まる田口&白鳥シリーズの本編第3弾とのこと。発売順では、外伝「螺鈿迷宮」を間に挟んいるので4作目となります。
2作目の「ナイチンゲールの沈黙」とは同時期を描いた作品のため、両作に登場する人物が出てきて面白かったです。もう一度、読み比べて時系列を確認してみても面白そうです。

内容的には、ジェネラルと呼ばれるICUの速水部長の独特のキャラクターが生かされていて、すごく楽しめました。読後の爽快感もありましたし、「チーム・バチスタ~」は別格としても、「ナイチンゲール~」「螺鈿~」より後味がスッキリしていて良かったかなーと思います。
もっとも、現代の医療問題については、とても難しい問題をはらんではいて、すごく考えさせられました。速水のやった事は、理解はできるにしても、やはり良い事だとは言えないですし、だからと言って、すぐに良い解決策が生まれるわけでもない。その間にも緊急性を要する患者は次々と運びこまれるわけで、現場では一時たりとも逡巡している余裕はないし。もし自分が速水の立場だったら、一体どうすることが良かったんだろうか・・・。これは、本当に難しい問題ですね。

それにしても、思っていた程、白鳥の変人ぶりが発揮されていなかったのは、唯一の残念な点かな。田口先生は天敵のイジメにも負けずに頑張っていましたし、姫宮はしっかりと登場して相変わらずドジなのか頭がいいのか分からない不思議キャラを演じていて、すごく楽しめたんですけどね~♪

ラストは「北」がキーワードですよね。「螺鈿~」のあの人も北へ向ったようですし、速水たちともしかすると接触があるんでしょうか!?すごく気になります。
また、田口&速水&島津の同期のつながりも面白いエピソードがありそうでした。このシリーズは今後も気になる存在であり続けるような予感がします。

ちなみに、この作品はもうじき映画化されるそうですね。速水部長の役を堺雅人さんが演じられるということですが、私のイメージとはちょっと違ったので、多少心配・・・。いえ、堺さんは好きな俳優さんなんですけどねー。もっと線の細い役柄の方が似合う気がして。