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Yuhiの読書日記+α

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ご了承下さいませ。

死神の精度

2008年05月27日 00時19分06秒 | 小説
私にとっては、初の伊坂幸太郎作品でした。最近、とても人気のある作家さんだと聞いていたので、以前から読んでみたいとは思っていたのですが、人気があるのか図書館でも予約しないと手に入らないのですよ。
何冊か予約した中で、やっとのことで届いた本がこちらだったのです。

どんな話なのかという事前の予備知識が全くなかったので、ドキドキしながら本を開いたのですが、案外薄いし字も大きくて、一安心!?
「死神」を主人公とした連作物で6話からなるのですが、文章も分かりやすく、親しみがあって、サクサク読めました。
この作品は設定もなかなか面白かったです。「死神」って聞いただけでも怖い印象ですが、この作品の「死神」はあくまでも「仕事」として人の死を決定しているだけだし、そこには何の感情も入らないというのが、リアルっぽくていいし、ミュージック好きというのも笑えましたしね。

最後の話を読んで、やられた!と思っちゃいました。
短編の連作物なので、1つ1つの話は独立していて、特に関連もなさそう・・・だったんですよね、途中までは。
それが、最終話で初めて、前の作品に登場した人物の話が出てきて、あれ?となったわけです。
今思えば、話の中で、「死神は時間の感覚がよく分からない」というような描写が何度も出てきてたんですが、これが伏線だったとは!!
小説ならではのトリック(と言えるかどうかは分かりません)だったんだなーと、作者様にしてやられた感じです。
しかし、この作品って、確か映画化されてませんでしたっけ???
どんな風に映像化したんでしょうか・・・。ちょっと見てみたくなりました。


真相

2008年05月17日 01時05分04秒 | 小説
横山秀夫作「真相」を読了しました。

実は私、横山作品をちゃんと読むのは初めてなんですよね。「半落ち」の映画版とか「クライマーズ・ハイ」のドラマ版は見たことあるんですけど・・・。
高村薫さんのファンだったら、横山さんの作品はきっと気に入ると思うよ、と人からは薦められていたんですけど、最近重い本ってなかなか手を出しにくくて・・・。
今回は、たまたま人から貸してもらえたので、ようやく読んでみようかなと思ったわけです。

で、この作品なんですが、開いてみてビックリ。長編好きな私は、まず自分では手に取らない短編集でした。でも、初心者には読みやすかったので、かえって良かったかも・・・。

短編5編入った作品なのですが、私が予想していた以上に、人間の心の闇を抉るような話ばかりでした。
重くて暗い話がほとんどなんですが、読みづらいとかいうこともなかったですね。
隠されていた謎が少しずつ少しずつ明らかにされていくので、読み出したら止まらず、あっという間に1編終わってしまいました。こんな勢いで読んだのは、ライトノベル以外では久し振りかも・・・(笑)。

犯罪を通して、人間の心理・心情を描くという手法は、なかなか面白かったので、今度は長編も読んでみたいなと思いました。
ただ、私の好みとしては、もう少しミステリーっぽい謎解き部分もあると、さらに嬉しいんですけどねー。そういう作品もあるんでしょうか?
あと、後味スッキリなものもあると嬉しいんですけど。

ナイフ

2008年04月29日 23時50分55秒 | 小説
重松清氏の「ナイフ」を読了しました。

5編の短編から成り立つこの小説は、イジメ問題が主要なテーマとしてとりあげられていました。
人から借りたので、どんな話か知らずに通勤時に読み始めたのですが、あまりにもリアルなイジメの描写に、読んでいるこちらまで吐き気が襲ってくるほどでした。
最近、こんなに重くて苦しい話を読んだことがなかったので、余計に衝撃が大きかったです。

それにしても近頃の学校って、本当にこんな感じなんでしょうか???怖すぎます~。
こんな壮絶なイジメを受けていたら、誰だって不登校になったり、自殺を考えたりするんじゃないでしょうか。
しかも、親も教師もそれにどう向き合って対処していけばいいのか分からずにいるんですよね。
もし、自分がイジメられていたら、または自分の子供がいじめられていたら・・・。自分はどういう行動をとればいいのだろうか。
色々考えさせられました。

でもこんな風に殺伐としているのは、子供だけじゃなく、最近は大人だってそうですよね。ちょっとしたことが原因で刃傷沙汰になったり、限度を超えた嫌がらせをしたり・・・。みんな「我慢」ができなくなっているような気がします。
それも、ある特定の変わった人たちじゃなく、ごくごく普通の一般人でさえ、少しずつそういう傾向になってきている気がしてなりません。
世の中全体に、余裕がなくなってきてるからなのかなぁ・・・。
すごく、いや~な気分です。

今夜誰のとなりで眠る

2008年04月12日 00時21分16秒 | 小説
 唯川恵作「今夜誰のとなりで眠る」を読了しました!

 唯川さんの作品は、何冊か読んだことがあるのですが、どれも文体が平易だし、テーマも身近なものが多くて、すごく読みやすいです。
恋愛ものが特に多いみたいですが、恋愛ものはあまり読まない私でも、それほど違和感なく読めるのがいいです。

 で、本作ですが、これまで読んできた唯川さんの作品とは一風変わっていて、「恋愛もの」という感じはあまりなく、1人の奔放な男に関わった、様々な生き方をしている女性の人生を描いた作品で、色んなタイプの女性が登場し、それなりに分かるなと思う部分があったり、もし自分だったらと置き換えてみたりして、結構楽しめました。

 ただ、たくさんの女性が入れ替わり立ちかわり登場するので、視点が目まぐるしく動きすぎて、1人1人に感情移入がしづらかったのが残念です。
できれば、もう少し人数を絞って、一人一人の人生を掘り下げて描いてくれたら、もっと楽しめたのではないかなと思います。

 それと、この作品に登場する女性達の中心である男、高瀬秋生には私は正直いって、あまり魅力を感じなかったです。
彼は物語の冒頭で交通事故で死んでしまい、読者は、彼に関わった女性達を通して、彼の人となり、生き方を知ることになるのですが、彼女達の回想シーンを読んでも、そんなにいい人かな?という疑問がわいてきてしまうんですよね。
確かに、人とは違う感性・価値観を持っていて、なかなか人の気づかない面を見つけることに長けていたのだろうとは思いますが、それと同時に自分勝手さ、怠惰な面も目に付いて、皆がそれほど心をとらわれる気持ちが分かりませんでした。
そこが物語の核となる重要な部分なだけに、いまいち同調できなかったのは、ちょっと辛かったですね。

 それでも、続きが気になって、どんどんと読み進められるのは、サスガに唯川さんの作品です。女性の気持ちをつづるのは本当に上手いですね。
時々、本当にドキっとさせられる描写があって、ビックリしますよ。

モロッコ水晶の謎

2008年03月15日 13時42分03秒 | 小説
 有栖川有栖作、犯罪学者火村英生助教授と作者と同名の推理作家有栖川有栖がコンビを組む、通称「作家編」の中の国名シリーズ第8弾。今回のお話は、中編3本と掌編1本の計4つの作品からなってます。

 印象に残ったのは、「ABCキラー」。これはアガサ・クリスティの有名な推理小説「ABC殺人事件」をモチーフにしたもので、違いを比べながら読んでみるとなかなか面白い。あまり書くとネタバレになってしまうので、難しいところですが、クリスティの作品を知らない方は、そちらをまず一読してから、こちらを読んでみるとずっと楽しめるかも(多分)・・・と思います。

 それから、表題作「モロッコ水晶の謎」。これは、今までの作品とはちょっと違った印象を受けました。有栖川さんって、占いやオカルトめいた話って、避けてるというか、正直お嫌いなんじゃないかなぁと思っていましたが、今回の作品では、うま~く話に取り入れられていました。特に最後の小説を引用して終わるシーンは、かなり幻想的でいい感じです。推理作家さんの中でも、有栖川さんは文章がお上手だなと思う部分が多いのですが、今回はまさにそんな感じでした。

 そして、とっても短い「推理合戦」は、火村・アリスコンビの日常も垣間見え、彼らのファンにとってはとても嬉しいサービスではないでしょうか。久しぶりに朝井さんも出てきますしね。読んでいてニンマリしてしまいました(笑)。

 あと「助教授の身代金」という作品。「助教授」と聞くと反射的に火村のことを思い浮かべてしまうのですが、残念ながら(?)火村とは違います。

 以上4作品は、正直トリックや動機といった点で、ちょっとナットクいかないなぁとか、弱いな~とか思う部分があったのですが、最後までグイグイ読ませてくれる筆力はさすがです。火村&アリスのコンビも相変わらずで嬉しい限り・・・。
もっとたくさん読ませて欲しいものです。

 それと、短編集的なものも楽しく読めていいのですが、やっぱり長編を書いて欲しい!基本的に長い話の方が、話の中にどっぷり浸れるので好きなんですよ~!


永遠の途中

2007年12月05日 00時31分17秒 | 小説
唯川恵著「永遠の途中」を読了しました。唯川さんの小説は何冊か読んだことがあるのですが、どれもとても読みやすかった記憶があります。

本書の主人公の薫と乃梨子は、大手の会社の同期で、同じ部署に配属され総合職として働く友人同士でしたが、27歳の時、2人の道は大きく分かれます。薫は職場の男性と結婚し専業主婦の道を選択。それに対して乃梨子は、結婚せずにキャリアウーマンとして仕事にまい進する。
この対照的な2人の女性の生き方を、この後3~4年ピッチで60歳になるまで2人を交互に(時には交差しますが)描いている作品です。

特にドラマチックな展開ではなく、2人の女性の生活がつづられているだけなのですが、話のそこここに、「ああ、分かる!」「こんな話よく聞くなぁ」と思うところがいっぱいあり、読みだしたら止まらず一気にラストまで読んでしまいました。どちらの生き方にもすごく共感できたし、唯川さんは女性の気持ちがとてもよく分かっておられるなーとしみじみ思いました。

女には人生の節目がたくさんありますよね。結婚・出産・育児・介護などなど。その都度、会社を辞めるか続けるか、あるいはいつどんな形で復帰するか、専業主婦になるのか等を選択しないといけません。もちろん男性にもあるでしょうけど、女性の方が圧倒的に多いですよね。
人生の選択肢が多いほど、色々と迷うことも多いわけです。女性が常に不安・不満に思っていることを上手いている作品だからこそ、一気に読ませてしまう力があるんだと思います。

この物語の2人も、今の自分の生活に基本的には満足はしているものの、たまに目にする友人の姿を見て比較し、ついつい羨望したり、優越感を抱いてしまったりしています。この辺はすごくリアルだなーと思います。

この物語の2人は、60歳になる頃には、自分の生き方を肯定できるようになりましたが、私だったら死ぬまで「これで良かったんだろうか?」と自問し続けることになるような気がします。
頭ではこの道を選んだ以上、後悔したり羨望したりしても仕方ないって分かっていますが、達観するのって難しいですね。

パンドラ・ケース

2007年12月04日 00時56分22秒 | 小説
随分古い小説で、最初は適当に図書館で借りてきて読みました。ジャンルとしては、推理小説という分類に入ると思います。が、正直なところ推理物としてはそれほど目新しいところもなく、さほど面白いとは思えなかったんですよね。
けれども、読んでから何年も経っているのに、何故か心に残るものがあって、結局購入してしまいました。もう一度読むと、さらに色々なことが分かってきて面白いです。

大まかな話の流れとしては、学生時代に所属していたサークルのメンバーが、17年ぶりに雪の温泉宿で再会することから起きる連続殺人事件を扱っているということです。
浮世絵ミステリー三部作に登場する塔馬双太郎が探偵役として登場していますが、この小説では本格ミステリーというよりも、塔馬を含む大学時代の仲間達の青春時代の回想が主題となっているんですよね。そのせいか、純粋なミステリーとして読んだ場合、トリックや動機なんかが強引すぎる部分も目立ちます。
けれども、時代は違ったとしても、誰にでもある甘くほろ苦い青春時代の思い出とミステリーとをうまく重ね合わせてあり、最後までぐいぐいと読ませる力があるんですよね。キャラクターもなかなか個性的で面白いですし。

塔馬と同じ年代の方(1970年前後に学生時代を過ごした方)にとっては忘れがたい事件の数々が、事件の重要な小道具として登場するので、よりいっそう感慨深いものがあるのではないでしょうか?

ホームレス中学生

2007年11月24日 00時28分03秒 | 小説
お笑いコンビ麒麟の田村裕の極貧自叙伝として話題沸騰中の「ホームレス中学生」を読みました。すごいベストセラーになっているらしく、私のまわりもこの本の話題でもちきりでした。
もっとも、私はお笑いはあまり詳しくなく、麒麟のこともM-1か何かの番組で、何となく見たことがあるな~というくらいの感じで、この本の作者である田村というのが、コンビのどっちのことかさえもよく分かってなかったくらいなのですよ(^^ゞ こんな調子なので、知人が貸してくれなかったら、ずっと読む機会がなかったかもしれませんね。

この本を読んでみて、中学生が家をなくし公園でひとりで生活するなんて、本当のことなの~!?と驚きの連続で、なるほど話題になるのもよく理解できる、すごい体験話でした。
食べるものがなくて、公園の草を食べたり、ダンボールまでかじったりするなんて、飽食の日本でこんなことがあるなんて信じられません。
それに、いくら貧しくて生活が立ち行かなくなったとしても、まだ中学生の子供がいるのに「解散!」の一言で、逃げてしまう父親というのもとても信じられない話です。

が、逆に、友人やその家族・近所の人・兄姉・学校の先生など、とても心の温かい人達がいるということに、すごく安堵感を覚えました。最近は、殺伐とした事件も多いし、他人を信じられなくなってきてますが、こういうのを読むと、世の中まだまだ捨てたものじゃないんだなーと思えて、ちょっと嬉しい気持ちになりますね。

そして何より、田村くんの兄弟が、自分達を捨てたお父さんのことを全く恨んでないのがスゴイです。彼らのこういう人柄が、周りの人たちを優しい気持ちにさせたのかも・・・。

ちなみに一番笑ったのが「10キロの女」の話です。夜中に大爆笑してしまいましたよ。


流星ワゴン

2007年10月30日 00時43分00秒 | 小説
重松清著「流星ワゴン」を読了しましたー!重松さんの小説を読むのは、今回が初めてだったのですが、なかなか読みやすい文体で、あっという間に読み終えることができました。

簡単なあらすじですが・・・

故郷の父を見舞った帰りに主人公の永田の前に、ワゴン車が止まった所から始まります。ワゴン車には橋本義明・健太親子が乗っており、彼らはなぜか永田の抱えている問題をよく知っていました。永田の問題というのは、妻の美代子はテレクラで男と不倫を重ね、息子の広樹は中学受験に失敗し家庭内暴力をふるい、家庭は崩壊寸前でした。さらに、永田自身も会社からリストラされ、「死にたい」と漠然と考えていた所でした。橋本は彼に、5年前にある交通事故で死んだ者であると告げると、ワゴン車に永田を乗せ、過去へと旅立った・・・。


 過去に遡って人生をやり直したい・・・というのは、誰にでもある欲望かもしれません。映画や小説でも結構見かける設定ですよね。この主人公も、過去のある時点へ戻り、妻や息子と心が離れてしまったキッカケを知り、何とか違う道を進ませようともがきます。
けれども、この小説では、過去を変えようとしても、ほとんど変えられないのが特徴で、その辺が妙にリアルな気がしました。
現実には、少しくらいの変化を加えたところでで、大きい流れを完全に変えるのは無理なんでしょう。

 でも、これまで目を背けてきたことに対応しようと行動を起こしたところに、意義があるんですよね。過去は変えられなかったとしても、主人公自身の心のあり方は確実に変化しました。
「死にたい」と目の前の問題から逃避しようとしていたのが、問題にぶつかっていく気概を持つようになれたことは、すごく大きいことだと思いますし、それこそがこの小説のメインテーマでもあるのだと思います。

 主人公と父親(チュウさん)との確執や、息子広樹との事も、なんだか分かる気がしたのですが、妻の美代子だけは理解不能でした。いくら家庭に不満があったからといっても、見ず知らずの人と(ましてやテレクラなんて!)浮気なんてするものなんでしょうか?
その方がドラマチックではあるのかもしれませんが、どうしてもそこだけが引っかかります。

蒼き炎 大悪女・呂后伝

2007年09月28日 00時17分51秒 | 小説
前202年、最強の敵・項羽を斃した劉邦はついに中国を統一、漢帝国を築いた。だが、その盛大な祝宴とは裏腹に、皇后となった妻・呂后の気分は晴れなかった。彼女の心を占めていたのは、夫の寵を一身に受ける愛妾・戚姫への沸々とたぎる憎悪。そして潔く散った真の勇者・項羽への追慕であった。前195年、劉邦が病没するや、呂后は生き返った。朝廷の実権を握った彼女の標的は、まず戚姫とその息子の如意。世にも残忍な処刑命令が下された…。

藤水名子さんの作品です。元々、歴史物は好きだった筈なのに、最近ずっとご無沙汰してました。でも、歴史物好きとは言っても、基本は日本もの(特に古代・中世・戦国あたりまで)で、中国物はあまり読む方ではないんですけどね。以前は、藤水名子さんの小説で中国を題材にした歴史物(時代物?)、「赤壁の宴」「公子風狂」「色判官絶句」「王昭君」「あなたの胸で眠りたい」などなど結構色々と読んでいました。

で、今回の主人公である呂后ですが、中国の三大悪女の一人として名前だけは知ってましたが、実はどんな人物だったのか詳しくは知らなかったんですよね。

この小説の呂后は、まだ劉邦が全くの無名で、恐ろしく貧乏だった時代に、親の言いつけにより無理やり結婚させられたこと、人質になった時に見捨てられたことなどがあってか、夫の事は全く愛せなかった。これが不幸の元で、その後、劉邦が天下を取り、自分は皇后になっても少しも幸せを感じることができない、ある意味不幸な女性だったという設定でした。

しかし、彼女がやったことは、世にも恐ろしい処刑の数々。特に、夫の寵姫だった戚姫に対して行ったことは、悪女らしさを伝えるエピソードとして聞いたことがありましたが、こうやって小説として読んでいるだけでも気分が悪くなるほど。
こんなことを人間ができるんだろうか?と信じられない思いです。

夫も子供も心底からは愛せないと思っているのに、自分や自分の息子の地位を脅かす夫の寵姫とその息子に対して容赦なく処刑しているのは、かなり矛盾してるように思えて、混乱しました。
けれど、読んでいくうちに、誰からも愛されない寂しさを紛らわすために、権力を振るうことで、自分の存在を示し、心の平静を保とうとしたのかもしれないなと思えてきました。
でも、権力を一手に握っても、本当に欲しいものは手に入らない。だからか、全く幸せなようには感じられませんでした。
ラストで、自分の信頼していた人に裏切られた呂后は、最後まで孤独な人だったわけで、当然の報いなんだけど、哀れな気がしました。


一角獣の繭 建築探偵桜井京介の事件簿

2007年09月17日 00時48分31秒 | 小説
 篠田真由美氏作の「建築探偵シリーズ」13巻目(本編では)になります。
このシリーズは、1年に1冊ずつ刊行という、最初からの決まりをずっと守っている、とても貴重な作品なんですが、「15巻で完結」すると作者が以前から明言していますので、残りはあと2冊!2年で完結!ってことなんですよね。
今作は、いよいよクライマックスへと向かって、突っ走る重要な位置にある話とも言えます。

 このシリーズは、作中にもちゃんと時間の経過があり、登場人物も巻を追うごとに年齢を重ね、成長していく様子が描かれているのも特徴で、この作品のいいところだなーと思ってます。年月を経ることによって、良くも悪くも変化していく部分って興味ありますし・・・。

 で、今回の話は、主要登場人物の中で、一番若かったせいか、初期の頃からみると明らかな成長が分かる、<蒼>こと薬師寺香澄を中心に描かれています。
最初に登場したときは、すごく幼いイメージだったのに、いつの間にやら、蒼も大学生になり、女の子と恋愛をするなんてね・・・。時の流れを感じてしまいます。
しかーし。正直、私は蒼の恋愛よりも、京介がどうなるのか知りたいので、サッサと話を進めてよーと歯がゆくも思うんですよね。

 ま、このお話が成長物である以上、「恋愛」は避けて通れない部分で、仕方ないかなー。我慢我慢。
と言いつつも、この1冊の大部分を蒼の恋愛話で占めているのも、なんだかなーと思ってしまうんですが・・・・。もうちょっと、「建築探偵」らしいところを入れて欲しかったな。

 すでに15巻の完結を目指して、作者の篠田さんは主要登場人物の話を描くことに注力してるんだと思いますが、元々の「建築探偵」という趣旨からは外れてきてるような気がするのは残念です。
「建築」を題材にしたミステリーというのは、なかなか他にはありませんので、もうちょっとそちらの分野で頑張って欲しいんですけどね。

 ちなみに、今回の蒼の恋の相手がもうちょっと魅力的で、蒼にピッタリだ!と思えれば、もっと恋愛話も楽しめたかなーと残念なんですが・・・。
私的には、あの彼女は全く魅力的ではなかったので、蒼の気持ちが分からない上に、趣味まで疑ってしまいましたよ・・・。

 でもまあ、ラストの京介にはかなりビックリさせられましたからね。彼の正体がいよいよ明らかになりそうなので、次が待ち遠しいですねー。(約1年後ですが)
ここまできたら、15巻まで完読目指します♪

被害者は誰?

2007年09月07日 00時28分22秒 | 小説
貫井徳郎氏の推理もので、短編4編からなる作品です。
 ・「被害者は誰?」
 ・「目撃者は誰?」
 ・「探偵は誰?」
 ・「名探偵は誰?」

タイトルを見てもわかるように、普通の推理小説とは一風変わった作品です。
どこが違うかというと、通常であれば、探偵(あるいは警察)が犯人を探します。
が、この作品では、普通の作品であれば、最初から明らかな「被害者」や「目撃者」あるいは「探偵」を探すのです。

こういうパターンの作品は、あとがきにも書いてありましたが、パット・マガーという人の作品に多く見受けられます。
有名な作品では「探偵を探せ!」や「被害者を探せ!」「七人のおば」などがあります。(タイトルも似てますよねー)
私はこれらの作品を昔読んだことがありましたけど、それでもやっぱり「えー!」と驚かされるところが結構ありました。
(何となく分かってしまった話もありますけどね)

そして、この作品は、登場人物もまた個性的で面白いんです。
4編とも、警視庁捜査一課の桂島刑事と、その学生時代の先輩で、ミステリー作家である吉祥院慶彦が登場します。この作品の中では、桂島刑事がワトソン役で、吉祥院が名探偵役となるわけですが、この吉祥院がかなり規格外の性格で面白い。
眉目秀麗・頭脳明晰でずば抜けたカリスマ性を持った人物・・・なんだけど、性格は悪いし態度はデカい。身の回りの整理整頓は全くできず、後輩である桂島を呼び出して、掃除させたりして、思い切りこき使うという、とんでもない人物なのです。
この二人のやり取りが面白いのと、文体も平易で読みやすいので、最近あまり本を読んでない私でも、スイスイと読み進みました。

普通の推理小説に飽きた方や、一度も「探偵を探せ!」のような作品を読んだことのない方は、ぜひ読んでみてはいかがでしょうか?



風信子の家-神代教授の日常と謎

2007年08月27日 01時01分28秒 | 小説
篠田真由美著「風信子の家-神代教授の日常と謎」を読みました。
この作品は、短編5作品からなっています。
 ・「風信子の家」
 ・「夢魔の目覚める夜」
 ・「干からびた血、凍った涙」
 ・「クリスマスは嫌い」
 ・「思いは雪のように降りつもる」

これらの作品の主人公である神代宗教授は、建築探偵シリーズにも登場する人物で、なかなか気風のいいセンセイだなーと思っていましたが、まさか他の作品に登場するとは思ってませんでしたよ!
またこの作品には、建築探偵シリーズの中の他の登場人物(桜井京介、蒼、栗山深春など)も色々と登場していますので、このシリーズを読んでおられる方には特に読む楽しみのある作品ではないかと思います。
もちろん、一度もこのシリーズを読んでなくても、大丈夫な作りにはなっていますけど、やはり所々登場する人物達のことを知っていた方が色々なところが垣間見れて面白いのでは・・・と思います。

私の中で、一番興味をそそられたのは、最後の作品「思いは雪のように降りつもる」でした。雪山の山荘的な設定は、いかにもミステリーファンの心を鷲づかみにする設定で、久しぶりに楽しめました。
結論は、ここには書きませんが、そういうこともあるのかなーとちょっと考えさせられる内容でしたね。

ちなみに、私は建築探偵シリーズしか読んでないので分からなかったのですが、この作品には、他にも篠田さんの作品に登場する方が登場してるそうです。
誰なんですかー!?(あの人かな?って思う人はいるんですが・・・)

小説版 SUPERNATURAL VOL.3

2007年08月15日 00時21分18秒 | 小説
すでにDVDでは、セカンドシーズンが発売&レンタル開始されていますが、それを見る前に、なんとかこれをアップしたいと思ってました。(一応、セカンドシーズンをレンタルする為、店には何度か行ったのですが、全部貸し出し中で、未だに見れてません

では、簡単にドラマ版と小説版で違うところ&感想を・・・。

・第15話「血塗られた家」
女の子のとらえられたディーンをサムが助けるシーンは、ドラマではなかったですね。会話から察することはできるのですが、なぜ省いちゃったんだろ・・・。

・第16話「闇との対決」
最初に警備会社のつなぎの服の件で、サムとディーンが言い合いをしてますが、ドラマ版の方が、サムの子供の頃の劇の話などをしてて可愛いですね。小説版にはその部分がないので、急遽付け足したのかな?
ちなみに、この回の話では、悪魔を倒したら、学校に戻りたいというサムと、悪霊がいる限り狩りを続けるというディーンの考え方の違いが浮き彫りになってましたね。このシーンは、見るたびディーンが切なくて・・。これほど素直に自分の感情を吐露するのにもビックリしました。

・第17話「死を招く屋敷」
この回は完全にお遊びの話ですね。そもそも舞台となっているテキサス州リチャードソンは、ディーン役のジェンセン・アクレスの出身地でもあるので、製作者側もかなり面白がって作ってる事が窺えますね。
しかし、この兄弟昔からこんなにイタズラばかりしてたんでしょうか・・・。すごい子供時代を送ってたんですね(笑)。

・第18話「魔女」
ディーンとサムの子供の頃の回想シーンがある話。ディーンの気持ちを考えると本当に切ない この話で、ディーンの家族に対する想いがよく分かります。特にパパに対して、何故あれほど従順なのか。この件がトラウマになってるんですよね。そして、サムも兄の気持ちを少しは理解したよう・・・。

・第19話「呪われた肖像画」
ラストシーンがドラマと小説では違ってます。小説版では、ディーンはサムのデート資金を作ってあげようと一人で出て行ってるんですよね。優しいお兄ちゃんぶり発揮!

・第20話「父との再会」
ジョンが息子達をどう思ってるか、そしてサムとディーンもそれを聞いてどう思ったかが詳しく描かれてました。ジョンは自分の感情を表に出さないタイプだと思うけど、文章にされるとジーンとくるものがありますね。

・第21話「駆け引き」
ジョンが1年前に失踪したのは何故か、悪魔を探すために全身全霊を懸けていることが伝わってきました。ところで、悪魔は金色の目だって書いてある!黄色じゃなかったっけ?

・第22話「悪魔の罠」
父がメグに捕まった事を知って、兄弟がボビーに助けを求めるあたり、さらにボビーがどんな人物なのか、小説には詳しく書いてあります。ドラマじゃ全然触れてなかったですけどね。面白いのは、ボビーの家で食事をご馳走になった際、食器洗いを担当したのはディーン。その間、サムは古文書を熟読。二人の性格というか役割分担ができてるのが面白いですね。

当たり前と言えば、当たり前ですが、ドラマ版と小説版では大きな違いはありません。が、人物の説明的な所や登場人物の感情など、小説を読まないと分からない、あるいは分かりにくい事が書かれていたりして面白かったです。
なんとか、セカンドシーズンを見る前に、書き上げられてホッとしました。

ちなみに、セカンドシーズンでもボビーは登場するそうです。すごく良さそうな人なので、ぜひこれからも活躍して欲しいです~

小説版 SUPERNATURAL VOL.2

2007年06月09日 00時19分04秒 | 小説
 前回に引き続き、「スーパーナチュラル」のノベライズ版のVOL.2です。原作は前回と同じくエリック・クリプキ、訳は佐野晶。VOL.2は、第8話の「蟲」から、第14話の「悪夢ふたたび」まで収録されています。前回も疑問に思ったのですが、このドラマの翻訳って、元々の台本をベースに書いておられるんでしょうか???
読んでいると、ドラマにはない部分がちょこちょこ出てくるんですよね。これは収録の途中で、時間の制約の中でカットした部分があるということなのか・・・。うーん、疑問です。

以下、ドラマと小説版で違うなーと思ったところを簡単にご紹介。(ネタバレしてる可能性がありますので、ドラマ未見の人はご注意下さい!)

・第8話「蟲」
ディーンはビリヤードとポーカーの名手!ドラマではポーカーで稼いでることは出てきてましたけど、ビリヤードはなかったと思うんですよね。新発見!
この話の中で、新築の家に不法侵入して、サウナを試してましたけど、小説版によると、なんとディーンは3回も入っていたとか!

・第9話「帰宅」
ディーンの母を亡くしたトラウマ度が、はっきりと描かれていて切ない・・・
ディーンの車好きは、父親が自動車修理工場で働く姿を子供の頃に見ていたせいらしい。

・第10話「137号室」
ドラマでは、無事に悪霊を退治してインパラに乗り込んだ後、すぐにモーテルの部屋で父からの電話の場面に変わるけど、小説版ではインパラの中で例の言葉を言い合ったり、サムが一人でディーンに言ってしまった言葉について考えるシーンあり。

・第11話「出会い」
ドラマで、サムとディーンが携帯で話す場面があるけど、小説版でディーンからかけたというのが判明。理由は、カカシに襲われた際に「このまま死んだら後悔すると思ったから」と思ったからだそう。

・第12話「死神との取引」
正論を唱えている時のサムにディーンは敵わない。こういうサムの姿に「感嘆の念とかすかな悔しさ」を感じてるらしい。
ディーンが食欲をなくすなんて・・・!でも、レイラは本当にいい人でした。

・第13話「ルート666」
前回の話を引きずって元気のないディーンが、ハスラーの大会に出たいというので久々に生き生きとしたのを見て、サムがほっしている所がイイ。
ドラマバージョンでは、前回の話はまるで引きずってないように見えて、ちょっと変な気がしてたんですが、小説バージョンなら理解できます。

・第14話「悪夢ふたたび」
この話、ドラマ版のラストがすごく気に入ってました。サイキック能力があると分かり不安になるサムに、「大丈夫だ」と答えるディーン。
サムは、「なぜそう言える?親父がいるからか?」と尋ねますが、ディーンは一言「俺だ」と答える。ここ、めちゃカッコイイですよー!
しかも、不安がるサムを安心させる為か、そのサイキック力を生かそうと「ベガス」と一言答えるのがまたカッコイ。弟の不安を取り除き、冗談にまぎらわせる所が、ディーンの優しさがよく表れていて、すごく好きな場面です。
ところが、小説版だと、描写は細かくていいのですが、このさりげないかっこよさがうまく生かされてないように感じます。やっぱり、ドラマにはドラマの、小説には小説の良さっていうものがあるんだなとつくづく感じました。