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Yuhiの読書日記+α

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シューマンの指

2010年11月22日 00時11分48秒 | 小説
奥泉光著「シューマンの指」を読了しました!新聞の書評を読んでから、ずっと気になっていた作品です。図書館で予約してから、結構待たされましたが、ようやく読むことができて嬉しいです。

さてこの作品。新聞の書評で読んである程度覚悟はしていたものの、とにかくクラシック音楽の蘊蓄がすごくて、最初はかなりとまどいました。なんたって私はショパンとシューマンの区別もつかない程のクラシックオンチなもので・・・。

でも不思議と読むのが辛いとか、やめようとかは思わなかったです。指を大けがしてピアノを弾くことができなくなった筈の人がピアノを弾いている・・・という冒頭に提示された謎が気になったこともありますが、クラシックの蘊蓄部分もなかなかに面白かったんですよね。小説の中で出てきた曲を聴いてみたくなりましたもん。

中盤、ついに殺人事件が起き、一気にミステリ小説らしくなって、ページをめくる手も早まっていったのですが、途中から何だか妙な違和感があったんですよねー。もしや私の嫌いなあのパターンでは???と思っていたら、案の定・・・。

クラシック音楽をテーマにした点は面白かったし、青春ものとしてや幻想小説としても、読み応えあっただけに、あのオチだけは惜しいな~と残念に思います。

それにしても結局、本当の真相は闇の中ってことなんでしょうか?妹が推理したものが本当に正しいかどうかは誰にも分からないわけですもんね。結末を断定しないところも、幻想小説っぽくて良いのかもしれませんが、この辺は評価が分かれるところかもしれませんね。

ブレイズメス1990

2010年11月10日 00時05分55秒 | 小説
海堂尊著「ブレイズメス1990」を読了しました!黒い表紙に年号と言えばもしや・・・と思ったら、予想通り「ブラックペアン1988」の続編でした。「ブラックペアン」が海堂作品の中では1、2を争う面白さだったので、続編が読めて嬉しい~!

主人公は「ブラックペアン」の時と同じく世良先生。前作からまだ2年程しか経ってないので、まだまだペーペーの身分。医師になりたてで、まだまだ学生気分が抜けてなかった前作と雰囲気もほとんど変わってなくて、ちょっと嬉しかったです。

ストーリーの方は、序盤はかなり面白かったです。変わり者の天才外科医の天城を東城大に連れて帰るという使命を果たすべく、あちこち駆けずり回り、時には一か八かの大博打をやったりと、ハラハラ・ドキドキの展開で、これは面白そう!と期待が高まりました。
また、物語が進むにつれ、これまでの作品に出てきた人たちがどんどん出てくるので、過去の作品に思いを馳せたりと2重3重に楽しめました。

それが、中盤から後半になるにつて、ややトーンダウン。面白くないわけではないけど、手術のシーンが長くて、素人にはちょっと分かりづらかったかな。

また、本作より未来にあたる作品を読んでいるだけに、天城の作ろうとしたセンターが結局は作られなかったとか、病院内の勢力図なんかも既に知っているので、ちょっと物悲しい気分になってしまうんですよね・・・。それに他の作品に天城の「あ」の字も出てなかったと思うし・・・。どうも天城だけが、この中では異質な存在に思えてなりません。

そして何よりもラスト!まさか、こんなところで終わり!?という中途半端さ。びっくりしましよー。思わず次のページに何か書いてあるのかと探してしまったくらいです。結局、この小説を読んだだけでは、結末は分からず仕舞。続編があると期待して良いんですよね???

そう言えば、世良先生と花房看護婦は、この時点ではいい仲だったんですね。でもその後きっと別れちゃったんだろうな~。花房さんは今は速水先生といい仲ですもんね。二人の間に何があったのか?世良先生の人生も、この時点で想像されるものとはかなり大きく変わったようだし、この先の展開をぜひ描いて欲しいです!

貴族探偵

2010年07月20日 00時47分31秒 | 小説
麻耶雄嵩著「貴族探偵」を読了しましたー!!<読書日記>とか銘打っているわりには、最近小説の話題が少なくて、心苦しい限りだったのですが・・・(^^ゞなかなか本を読む時間と気力がなくて、ついついドラマや映画を優先してしまうんですよね。

で、今回久々に推理小説を読みました。なんといっても麻耶さんの何年ぶりかの新刊ですしねー。この方、とーっても寡作な作家さんですが、出来上がった推理小説は、一般的なものとかなり違っていて面白いんですよー。特に推理小説としてはつきものの探偵役が、かなり変わっていて、アクが強いというか性格が悪いというか・・・(苦笑)。普通の推理小説での探偵役は、読者側に立っているのでなんだかんだ言っても、本当のワルではない事がほとんどですよね。でも、麻耶さんの作品に出てくる探偵は、本当に根性悪。でも、そこが面白くてやめられないんですけど。

で、今回の作品。数年ぶりということもあって、私もすごく期待していて、期待しすぎた面もあると思いますが、正直微妙でした。
いえ、決して面白くないというわけではないです。「貴族探偵」なんていう一風変わった探偵が出てきて、自分では全く推理も捜査もせず、全て自分の使用人にやらせてしまう・・・なんて、相変わらず個性的な探偵ですし。でも、何か物足りないと思う面があるのも事実。
それは多分、貴族探偵自身の性格やら何やらがあまりにも不明すぎて、どんな感情も持つことができないからかなと思うのです。
良いにしろ悪いにしろ、何らかの感情を持てないなら、記号と変わりないですもんね。この貴族探偵の設定も、やりようによっては、もっと面白くなりそうだっただけに、そこがちょっと残念でした。

ラッシュライフ

2009年11月05日 00時25分36秒 | 小説
伊坂幸太郎著「ラッシュライフ」を読了しました。この作品は、堺雅人さん主演で映画化もされていたんですね。全然知らなかったのですが、伊坂さんの作品を何作か読んで、結構面白かったので、気になって読んでみました。

とにかく変わった作品の一言ですね。エッシャーの「だまし絵」が表紙になっていますし、作中にも何度も描写がありましたが、まさに「だまし絵」そのものの作品でした。

一見バラバラな5つのストーリーが緻密に配置されていて、ラスト付近になって一気に集約されてくると、「ああ、そうだったんだー!」とようやく全体像が見えてくるという手法です。映画ではそういう作品をいくつか見たことがありましたが、小説でここまでキッチリと構成されているのを見たは初めてだったので、読み応えありました。
ただ、ちょっと気持ち悪い描写もあり、思わず読み飛ばしてしまった部分もありましたが・・・(^^ゞ

キャラクターでは、プロフェッショナルな泥棒を自称する黒澤が一番のお気に入り。彼は、伊坂さんの他の作品にも登場するとのことなので、他の作品も読んでみたくなりました。

そうそう、あとがきを読んで知ったのですが、伊坂作品も他の作品とのリンクがあれこれとあるそうですね。「チーム・バチスタ~」の海堂さんも自分の他の作品とのリンクがたくさんありますが、これって流行り???ファンとしては、たくさんの作品を読めば読むほど、ニヤリとしてしまう部分が増えるので、私としては嬉しいことではあります。

アマルフィ

2009年10月24日 00時08分13秒 | 小説
真保裕一著「アマルフィ」を読み終わりました!この作品は、織田裕二主演の映画「アマルフィ 女神の報酬」の原作となった小説です。
先に映画を見ていたので、登場人物を映画のキャストのイメージで読んでいましたが、キャスト的にはイメージになかなか合ってたように思いました。
<映画の感想はコチラ

さて内容ですが、意外と映画とは違っている点が多くてビックリしました。もちろん、大まかな流れは同じなんですが、細部がかなり違ってるんですよね。
特にラストは全然違います。誘拐犯も違えば、その目的も全然違うし、犯人を捕まえる場所も違うんですよねー。
また映画では、身代金の受け渡しに指定されたのはローマ市内の有名観光地でしたけど、小説の方はいきなりアマルフィですし・・・。
やはり映画版は、カメラ映りのいい、いわゆる「絵になる場所」を採択してるんでしょうね。

ストーリー展開の方は、さすがに原作小説の方が、まだ無理のない展開だなと思えました。映画は、劇的で面白いし映像も美しくて楽しめたのですが、強引すぎる部分も目立ちましたしね。
その分、小説版は地味でちょっと中だるみも感じましたが、映画でよく分からなかった所が詳しく描かれていたりして、楽しめました。

特に、この作品のタイトルである「アマルフィ」は、映画ではなぜそんなタイトルにしたのか、イマイチよく分からなかったのですが、小説の方では詳しく語られています。(誘拐の作戦名でもあるんですよね)
また、映画では私生活が全然明らかでない謎の男・黒田のことも、わりと詳しく描かれていて、なかなか興味深かったです。もっとも、黒田に関して言えば、映画のように謎に満ちていた方が、ミステリアスで興味をそそられたのも事実ですけどね。
あと、映画では声だけだった片桐という男が何者かというのも、小説ではあっさりと最初から出てきますし、やはり小説は情報量が映画とは比較にならないくらい多いので、読み応えありました。

真保さんの小説を読むのは実は初めてだったのですが、他の作品も読んでみたいですね。

医学のたまご

2009年10月12日 00時01分05秒 | 小説
海堂尊著「医学のたまご」を読了しました。この本は、海堂さんが中高生向けに書かれた小説というだけあって、主人公を中学生設定し、その主人公の一人称で物語が進んでいくため、とても読みやすいく仕上がっています。

内容ですが、ごく普通の(というか劣等生ぎみかも)中学生・曽根崎薫が、ひょんなことから、「日本一の天才中学生」という事になり、東城大学医学部で医学の研究をする事になってしまう・・・というストーリーです。時代は今より約10年程未来の2022年頃となっています。この頃になると、日本でも飛び級とか出てくるのかもしれませんねー。

物語自体は、設定の面白さもさることながら、薫がやっている研究が発端で、色んな騒動が巻き起こり、先がどうなるのか分からない面白さもありました。また、中学の同級生とのやり取りなんかも面白くて、普通の青春小説としても楽しめる作品です。

また、主人公がアメリカに住む父親とメールを交わすのですが、このメールがまたいいんですよね。含蓄のある言葉が随所にあり、離れ離れになっていても、父と子の絆がすごく感じられて、とても良かったです。
最初は、横書きの小説なんて読みづらいと思ったのですが、このメールのやり取りには、やはり横書きが似合う。小説の肝である、父親とのメールに焦点を合わせるなら、やっぱり横書きが正解かなと思いました。

海堂作品では、他の作品とのリンクも読む楽しみの一つになってるのですが、今回もわんさか出てきました。
主人公の曽根崎薫自体も、「ジーン・ワルツ」の主人公、曽根崎理恵の双子の子供の一人だし、理恵の夫・曽根崎伸一郎もメールのみの出番ながら、重要な役割を果たしていました。
また、田口先生や高階先生、垣谷先生の動向なんかもちらりと描写がありますし、「ナイチンゲール~」の如月翔子やアツシくんも再登場して、意外なつながりに驚かされます。
読む作品の数が増えれば増えるほど、色んな楽しみが増えていくのが、海堂さんの小説の面白いところですね。


虚空の旅人

2009年10月04日 20時54分48秒 | 小説
上橋菜穂子著「虚空の旅人」を読了しました!この作品は、「守り人」シリーズの第4弾で、本作が書かれた当初は番外編的な位置付だったそうです。

確かに本作は、チャグムが主人公で、舞台も<サンガル王国>であり、バルサもタンガもトロガイもチャグムの回想の中にしか出てこないということで、これまでの作品とは一線を画した雰囲気です。

でも、サンガル王国という、これまで未知だった国の様子を描くことで、更に世界観が広がったのは間違いないですね。
そこに住む人たちの見た目、考え方、文化、食べ物などなど、色んな部分で違いがたくさんあります。それが目に浮かぶように、いきいきと描かれていて、とても興味深かったです。

物語は、やがてサンガル王国の謀反問題に発展していき、とてもきな臭い雰囲気に。序盤に出てきた伏線が絡み合い、一気に面白くなりました。私って、やっぱりこういうストーリーが好きなんですね。
今回の話で出てきた色んな国とのやり取りで、さらに世界が大きく広がっていきそうな予感・・・。とても、壮大な物語になりそうで、今からワクワクします。

チャグムは、14歳になり、皇太子として他国との外交もソツなくこなし、とても立派に成長していたのが印象的。皇太子としての身の不自由さ、孤独さにも負けず、自分のするべきことをちゃんと理解していて、本当に大人っぽくなったなと思います。
これからの活躍が多いに楽しみになってきました。

夢の守り人

2009年09月26日 00時46分54秒 | 小説
上橋菜穂子著「夢の守り人」を読了しました。
本作は、「守り人」シリーズの第3巻目で、三部作の最後の作品とか。でも、読み終わった後も、まだまだ終わった感じがしない・・・と思ったら、続きがちゃんとあるそうです!ホッ。

この作品は、タイトルにもあるように「夢」の世界が中心で、これまでとはちょっと趣が異なっていて、現実離れした幻想的なストーリーでした。
何と言っても、あの老魔術師トロガイの若かりし頃の恋愛が描かれていて、もうビックリ!当たり前と言えば当たり前なんですけど、あのおばあちゃんにも、恋愛に夢中になってた時があるんですねぇ・・・。しかも、子供までいるなんて!思わぬ展開に、グイグイ引き込まれていきました。

また、今回はタンダが大ピンチになり、こちらもハラハラ・ドキドキさせられました。バルサが特に必死でタンダを助けようとする所が、すごく切なくて良かったです。
これまで、バルサとタンダの関係って、すごく微妙だったんですよね。タンダの方は明らかにバルサが好きだけど、バルサはタンダの事、どう思ってるのかなって・・。
でも、普段は冷静沈着なバルサがあの必死さ。今回の件でよーく分かりました。
それにチャグムも「あの二人が心の底でひかれあっているのは、子供の自分でも分かるのに」って言ってましたしね。

とは言え、タンダが元に戻ってからは、相変わらずの関係のよう・・・。これが二人にとってのベストな立ち位置なのかなぁ。でも、ファンにとっては、もっと進展してもらいたいのですが・・。

闇の守り人

2009年09月10日 00時06分50秒 | 小説
上橋菜穂子著「闇の守り人」を読了しました!これは先日読んだ「精霊の守り人」の続編にあたり、「精霊~」に登場した女用心棒バルサの辛い過去にまつわるストーリーでした。

著者のあとがきによると、大人には本作「闇の守り人」が一番人気があると書かれていましたが、さもありなん。子供向けだけだなんて勿体ない。大人こそが堪能できるストーリーではないかと私も強く感じました。

「精霊~」では、バルサも主役格の一人ではありますが、どちらかというと13歳の少年チャグムの冒険譚が中心に描かれていました。その年代の少年少女が読むと、とてもワクワクできるお話だと思いますし、元々児童書として出版された本ですから、それは当然なんですけどね。
でも、児童書というには、ストーリーや物語世界がとてもしっかりしていて、まるでその世界が本当にあるかのような生き生きとした描写だっただけに、やはり大人の私としては、バルサという女性の過去や生き方に興味が出てしまったんですよね。
それを見事に描いてくれたのが、まさにこの作品でした。

本作は、バルサやバルサの育ての親ジグロの過去が明らかになるだけではなく、様々な登場人物が、辛く苦しい過去や怒り、恨み、憎しみなどの様々な負の感情を正面から見つめ、昇華していくという、重いんだけれども読み終えた後に清々しさが感じられるいいストーリーでした。

最初に思った以上にいい作品なので、次作もぜひ近いうちに読みたいと思います。



精霊の守り人

2009年08月31日 00時03分42秒 | 小説
上橋菜穂子著「精霊の守り人」(新潮文庫刊)を読了しました!
この小説、友人からずっと薦められていて、何度か図書館で借りては見たのですが、読めずに返す・・・ということを繰り返していたんですよね。
というのも、元々このシリーズは、児童文学として出版されていたので、図書館には児童向けに文字や行間が大きく、ひらがなが多用されたものしか置いてなかったんですよ。それを借りてみたものの、あまりにも読みづらく断念してしまっていました。

それが、今回たまたま新潮文庫から出ている事に気づいて、中を見てみると、ちゃんと大人向けになっていたんです!これだったら読めると思って、早速借りてきました。


読んでみると、なるほど大人が読んでも充分面白い。というか、子供だけに読ませておくなんて勿体無い。ファンタジーものはそれほど好きではない私ですが、最初の何ページか読んだだけでも、その世界が目に浮かんでくるような感じでしたし、話に無理がなく、一気に引き込まれました。

思えば、「ハリー・ポッター」シリーズや、「ロード・オブ・ザ・リング」の成功を受けて、ここ10年ほどはすっかりファンタジーブーム。色んな作品がこの世に生み出されましたけど、ここまでしっかりと細部まで世界観が考え尽くされているものって、あまりなかったような気がします。
しかも、窮地に陥ったら都合よく魔法が飛び出して助かる・・・というようなファンタジーものにありがちな安易な設定(これやられると、しらけますからね)もなかったのが嬉しかったです。

そして何と言っても、主人公のバルサがイイ!女性ながら老練な短槍使いの用心棒という設定もいいし、人柄もサバサバしていてシブいんですよね。彼女の人生をもっと詳しく知りたくなりました。

また他の登場人物も個性的で面白い人たちばかりです。バルサより年下で武道はからっきしダメだけど、呪術や薬草の知識は人一倍ある心優しいタンダ。タンダの師で70歳を過ぎても元気すぎるトロガイ。そして今回、バルサが助けた皇子チャグムなどなど。
皆の今後の活躍が早く知りたくて、早速続きを借りてきてしまいました。今から読むのが楽しみです。


極北クレイマー

2009年08月11日 23時39分22秒 | 小説
海堂尊著「極北クレイマー」を読了しました。
この作品は、「チーム・バチスタの栄光」から始まる「田口・白鳥」シリーズの番外編的存在になるのかな。読むまでは、本編なのかなと思っていたのですが、田口さんも白鳥さんも全く登場しないので・・・。その代わりと言ってはなんですが、白鳥の部下の氷姫こと姫宮は登場します。とは言え、登場している期間はすごく短くて、「え?もう終わり?」と呆気ない程なのですが、さすがに氷姫。ものすごいインパクトは残していってくれますけどね。

さて、本書は、「ジーン・ワルツ」や「イノセント・ゲリラの祝祭」で断片的に語られていた、産婦人科医・三枝久広の医療事故の件を中心に、極度の財政難に喘ぐ極北市と、そこにある大赤字の極北市民病院の実態と、地域医療問題を描いた作品となっています。

全体的にかなり重々しい展開で、笑いの要素はほとんどないのが、ちょっと辛かったのですが、それでもサクサク読めてしまう海堂さんの筆致のおかげで、一気に読んでしまいました。

大赤字でダレきった極北市民病院の中で、唯一良心的で市民の信頼も厚い三枝医師が、医療事故で訴えられる件は、やり切れなさでいっぱいになりました。
遺族としては真実を知りたいのは当たり前だと思うし、逆に医師側からすると、精一杯の事はしたのに、それを事故だと言われてしまったら・・・。これは本当に難しい問題ですよね。

それにしても、今回三枝医師の事件に絡んできた医療ジャーナリストという怪しげな人物。読んでて、かなりイライラ・ムカムカしたんですが、よく考えるとあの「螺鈿迷宮」に出ていたあの方ですか!?そういえば北へ行くって言ってたような・・・。彼女の目的は何なのか、まだ全然分からないので、次作以降で明らかになるのかな。楽しみに待ちたいと思います。

その他にも、本作では、おなじみの方々が登場していました。上に書いた姫宮の他にも、「ジェネラル・ルージュ~」の速水さん、「ジーン・ワルツ」の清川さん、「ブラック・ペアン~」の世良さんなどなどもほんの少しですが登場するので、ずっと読んでるファンにはそれもまた楽しめます。

特に世良さんには、ビックリですよー!まさかこんな形で再会するとは思っていなかったし、「ブラック・ペアン」の頃とはイメージも違うような・・・。もう20年くらい経ってるんだから、当たり前と言えば当たり前なんですが、この方の仕事が今後の作品にも関わってくるんでしょうか!?これまた楽しみです。

カンナ 天草の神兵

2009年08月08日 00時59分33秒 | 小説
高田崇史著「カンナ 天草の神兵」を読了しましたー。

「カンナ」シリーズの第2弾となる今作は、天草四郎と島原の乱の謎をメインに描かれます。
読みやすい文体で、興味深い謎について描かれているので、気楽に楽しめるのが魅力のこのシリーズ。主人公を含むメインキャラの魅力がまだそこまで出切っていないのと、歴史の謎を追う過程で描かれる殺人事件が2時間サスペンスのように安易なのが気になるところで、もうちょっとひねりが欲しいとは思いますが、その辺は次作以降に期待したいところです。

ちなみに今回一番気になったのが、隠れキリシタンたちがつくったという忍者屋敷顔負けの建物。隠し扉や隠し階段があるというその建物は、今でも島原へ行けば見ることができるようで、ぜひ一度行ってみたいものです。

あとラストで、因縁というか因果は巡るというか・・・のオチは、ちょっとビックリしました。読んでいる時から何かありそうだとは思っていたのですが、そういう風に来るとは思ってもみなかったので、ある種のショックがありました(苦笑)。

トライアングル

2009年07月12日 00時38分51秒 | 小説
新津きよみ著「トライアングル」を読了しました!
この小説は、フジテレビ系列で2009年1月からのクールで放映されていたドラマ「トライアングル」の原作小説になります。

ドラマの方は全部見たのですが、先の読めないストーリー展開と、江口洋介、広末涼子、稲垣吾郎らキャストの豪華さで、最近の日本のドラマの中ではわりと楽しみに見ていたんですよね。
もっとも、ラストで判明する犯人はかなり意外でビックリした事はしたのですが、よくよく考えると、かなり強引に犯人に仕立てあげた感じだなーとちょっと納得いかない部分も確かにありました。そこで、原作小説を読めば、その辺が少しは明らかになるかな?と思って期待していたのですが・・・。

実際に読んでみると、ドラマと原作ではかなり相違がありまして、原作を読んだからといって、ドラマで分からなかった事が判明する、というような事は一切なかったです。
というか、原作の方が、ラストまで来ても全然スッキリしないし、「え?これで終わり?」というところで終わってるし、ドラマにあったハラハラドキドキ感とかもなく、正直拍子抜けした感じです・・。

特に犯人なんて事前に伏線もなく、ラストになって唐突に出てくるので、絶対に推理することなんて不可能だし、そもそも、犯罪だったのかどうかも怪しい話になってきて・・・・。ミステリーとして読むと、かなり納得いかないストーリーになっていると思います。

それを思えば、あの原作を元にして、それなりに次回を楽しみにさせるドラマを作ったのは、脚本家が優れてるっていうことなのかもしれませんね。
私の場合、原作があるものを映像化すると、やっぱり原作がいいなと思ってしまう事が多いのですが、これは原作よりもドラマの方が絶対に良かったです。

まあ、作者さんとしては、ミステリーとして書いたのではなく、20年前に一つの事件に関わったものたちの、その後の人生に焦点を当てたかったんだろうなーとは思いますが。
ミステリー好きとしては、どうしても、犯人は誰なのか?というところに興味がいってしまいますので、尻切れトンボっぽさは否めませんでした。


その日のまえに

2009年06月28日 11時48分29秒 | 小説
重松清著「その日のまえに」を読了しました。

知人に貸してもらったのを読んだので、どんな内容なのかとか全く知らずに読んだのですが、てっきり普通の短編だと思って読んでいたら、実は、身近な人の死を扱った連作ものだったんですねー。この意外性には、かなりビックリしましたが、知らなかった分、余計にじーんとくるものがありました。

一つ一つの作品は、身近な人の死をテーマにした色んな情景を描いています。それは、それほど親しいわけではないクラスメートだったり、母子家庭の母親だったり、まだまだ若い妻だったりと、それぞれの事情は違います。
でも、いずれ死に至る病であると知ったことで、周囲の人間も、本人もまた、いろんな思いを抱えて、「その日」を迎えることになるわけで。
正直言って、読むだけでもそのことを考えるのは、とても辛くて苦しいけど、でも目をそらすことのできない吸引力があって、一気に読み終えてしまいました。

重松さんの作品は何作か読んでいますが、どの本も読み終えた後にも、色んなことを考えさせられる作品ばかりだったのですが、その中でも、本書は一番胸にせまるものがあった気がします。

犯罪小説家

2009年06月18日 00時44分43秒 | 小説
雫井脩介著「犯罪小説家」を読了しましたー!何かの書評を読んで面白そう!と思い、図書館で予約したのは去年のこと。もう予約したこともすっかり忘れていたら、ようやく順番が回ってきて読むことができました。

タイトルだけを聞いて、てっきり本格推理小説っぽい作品なんだと思い込んでいたのですが、読んでみると、そういうジャンルではありませんでした。というか、どういうジャンルに区分けしていいか分からない作品です。やっぱりサスペンスになるのかな。

推理ものが好きでそういうのを期待していた私としては、正直、序盤はあれれ???という感じでした。特に、主人公の待居が受賞した作品「凍て鶴」のストーリーがあまりにも古めかしく、また面白味がないので、本当に賞を取って映画化の話が出るような作品なの???と首をかしげたくなりましたし、映画化に力を入れている脚本家の小野川という人物の、変に明るい口調とネットサイト上の伝説的人物との関連性を強引に結び付けようとする展開に、唖然としました。

でも、読み進めていく内に、話が思わぬ方向へ転がっていったせいか、ぐいぐいと物語世界に引き込まれていきました。
特に、ハンドルネームしか分からない「落花の会」の元メンバーを、わずかな情報から突き止めていくところなんかはドキドキしましたし、ラスト近くになってくると、サスペンス色が強くなり、結末がどうなるのか知りたくて、ページを繰る手がどんどん早まっていきました。

ネタバレすると面白くないので、内容にはあまり触れられませんが、読み終わってみると、「犯罪小説家」というタイトルも、色んな意味でなかなか秀逸だったと思います。

また、ネット世界特有の匿名性とか、謎に包まれた部分などが、余計に不気味さや不可思議な雰囲気を出していて、なかなか面白かったです。