ギジェルモ・カブレラ・インファンテ、『TTT: トラのトリオのトラウマトロジー』

 『TTT: トラのトリオのトラウマトロジー』の感想を少しばかり。

 “ブストロフェドンとは何者だったのか?” 240頁

 素晴らしい読み応えだった。こちらもキューバ濃ゆい…! 革命前の歓楽街エル・ベダードへ捧げられたこの作品、当時の歌手や演奏者はどんどん出てくるわ、“キューバ語”による言葉遊びに語呂合わせ…はいささか過剰だわで、圧倒されて凄く楽しかった。
 言語実験についてはかなりの意訳とのことで(宜なるかな)、それがまた頗る妙味である。言語でんぐり返しの、更にでんぐりでんぐり返しですな…(なんのことやら)。

 「新参者たち」の章は多声的に始まるが、次の章からはカメラマンのコダック、パーカッション奏者エリボー、アルセニオ・クエ、シルベストレ…といった面々が交互に語り手となる。そしてもちろん、忘れてならない存在がブストロフェドン…! 例えばブストロフェドンによるキューバ人作家のパロディ「トロツキーの死」の章などは、邦訳されている作家が少ないにも関わらずとても面白く読めた。
 親友同士の軽妙な対話が続きつつも、どこかしら行き詰まり倦んだ雰囲気を感じさせる中、「バッハ騒ぎ」は幕を閉じた。
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