残雪、『最後の恋人』

 『最後の恋人』の感想を少しばかり。

 “この一生に読んだ小説の物語をもう一度読みなおし、すべての物語をつないでいこうというのだ。” 16頁

 素晴らしい読み応えだった。残雪を読むのは2冊目だ。これはまた、何たる気迫に満ちた小説か。そして差し出された世界の眺めといい、どこへ連れて行かれるのか全く予想のつかない展開といい、比類ない特異さにただもう圧倒された。何だろう…この、既視感のなさ。散りばめられた符牒に気を取られ、足元がふわりと覚束なくなりつつ…頁は繰る。読み進まずにはいられなかった。
 勝手に回る万華鏡を覗いているような按配でもあったけれど、この印象は読み返すことでどんどん変わっていくはず。もっと見えてくるものがあって…。「『最後の恋人』について」の内容も凄かった。

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