9月に読んだ本

9月の読書メーター
読んだ本の数:17冊
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▼読んだ本
殺す (創元SF文庫)殺す (創元SF文庫)
読了日:09月30日 著者:J・G・バラード



奇商クラブ (創元推理文庫)奇商クラブ (創元推理文庫)
面白かった! その会員は誰もが自分の生業を発明しなけらばならず、しかもそれは似通ったもののない完全な新商売でなければならぬ…という奇商クラブ。この集まりを“わたし”が知ったのは、友人であり発狂して隠退した元裁判官バジル・グラントが、ある事件をきっかけにその存在を見付けだしたからだ。それからというもの、バジルの弟ルパートも加わった3人が遭遇する珍事件の陰には、奇商クラブ面々の仕事ぶりが関わっていた。他、禍々しく幻想的な「背信の塔」と、コーンウォール海岸を舞台にした「驕りの樹」の2篇。こちらもとても良かった。
読了日:09月30日 著者:G.K.チェスタトン
目眩まし (ゼーバルト・コレクション)目眩まし (ゼーバルト・コレクション)
とても好き。薄灰色の雲が満遍なく垂れこめているような、沈んだ色合いの作風が、どうしてこんなに馴染むのか。そう思えばもの哀しい気持ちすらする。カフカの「狩人グラフス」の不気味さが、暗い陰りを落としているのもよい。「ベール あるいは愛の面妖なことども」ではスタンダール、「ドクター・Kのリーヴァ湯治旅」ではカフカが旅をし、他二篇が作家自身の旅の手記。不安に満ちて奇妙な、現実と幻想が境目を失くした旅行記である。その揺らぎに、記憶というものの信用ならなさを思う。ゼーバルトの文章は、そんな心の隙間に沁みてくる
読了日:09月28日 著者:W・G・ゼーバルト
カフカ 《Classics in Comics》カフカ 《Classics in Comics》
読了日:09月26日 著者:西岡兄妹,フランツ・カフカ



カフカ短篇集 (岩波文庫)カフカ短篇集 (岩波文庫)
読了日:09月26日 著者:カフカ



イルストラード (エクス・リブリス)イルストラード (エクス・リブリス)
面白かった。興味がなかった国の物語を読んでいる事に時々不思議になりつつ、断片的な章が繋がり合い豊かな広がりと奥行きを見せる様に、瞠目した。ミゲルの青臭さもよい。恩師でもある大作家クリスピン・サルバドールの自殺に疑問を持ったミゲルは、真の理由を知るべく故国へと旅立つ。作家が執筆途中だった『燃える橋』の原稿はなぜ無くなっていたのか…。ミゲルとクリスピンの間には様々な共通点があり、半生を振り返る記述の中で何度も二人が重なり合う。そんな中、恋人マディソンとの出会いと別れを省みていく記述が、ほろ苦くて私は好きだ。
読了日:09月25日 著者:ミゲル シフーコ
オレンジだけが果物じゃない (白水Uブックス176)オレンジだけが果物じゃない (白水Uブックス176)
身につまされる母娘の話かと構えていたが、面白く読めた。狂信的な母親によって、幼い内から徹底的に仕込まれるという、特殊な境遇に育ったジャネット。学校でどんなに浮いていても、教会のことを考えていればよかった。だが、教会への疑問が芽生えてしまった時から何かが変わり、彼女を守っていた世界が苛酷な様相を呈し始める。母親への慕わしさと裏切られた思いに、ジャネットの心は引き裂かれ…。学校の創作コンテストで賞を目指し、めげずに入魂の力作を作り続ける件が好きだ。納得出来ないジャネットの奮闘が、ほろりと可笑しくて愛おしい。
読了日:09月21日 著者:ジャネット ウィンターソン
19本の薔薇19本の薔薇
これは割と面白かった。社会主義国ルーマニアで自由を希求する芸術家たち…という下地が呑みこめないとわかり難いところが多く、最後まで謎が残る作品ではある。語り手が大作家パンデレの口述筆記をしている最中に、作家の息子であるという青年がいきなり訪れる。だが老作家は、自分に息子がいるという事実に思い当たりがない(不可解な記憶喪失)。そして彼らの参加する劇団のスペクタクルに魅了された老作家は、俄かに戯曲を精力的に書き始めるが…。別天地を求めて異次元を彷徨う彼らの姿を想像すると、とり残されたようで悪くない読後感だった。
読了日:09月20日 著者:ミルチャ エリアーデ
幽閉幽閉
邪な愛執と美への妄執に満ち満ちた物語。独りよがりな愛が、身の毛がよだつ異端美を帯びる。際どいところにまで連れていかれて足元が覚束なくなる。看護婦フランソワーズは、孤島モルト=フロンチエールに住む老人ロンクールが依頼した仕事を引き受け、屋敷へとやってくる。そこで、看病が必要なのは面倒を見ているみなしごで、爆撃によってひどい怪我を負った娘アゼルであると知る。彼女の顔を見たフランソワーズは、激しい衝撃を受けるが…。ラストの仕掛けも面白かった。並べて提示することで物語の毒がより効きやすくなり、おぞましくてよい。
読了日:09月19日 著者:アメリー ノトン
アンドロギュノスの裔 (渡辺温全集) (創元推理文庫)アンドロギュノスの裔 (渡辺温全集) (創元推理文庫)
全集でありながら、この一冊で収まってしまうのか…と溜め息がでる。やはり、「可哀相な姉」は白眉だと思った。物語に救いはないが、ぞくり…射竦められる瞬間が凄くよかった。他に短篇で好きだったのは、「イワンとイワンの兄」や「風船美人」(悲劇と滑稽味の匙加減…)。リライト作品の「島の娘」も面白かった。
読了日:09月18日 著者:渡辺 温

真珠の耳飾りの少女 (白水Uブックス)真珠の耳飾りの少女 (白水Uブックス)
いみじくも、フェルメールの絵をみて“いつまでも見ていたくなる絵”…と感じて評したその少女自身が、やがてその絵の中に己の姿を永遠に留めおかれ、いつまでもその眼差しで人々を魅了してやまないことになろうとは…。名匠フェルメールの作品を元に紡ぎ出された、静かで愛おしい物語。そこにあるはずのものを“ある”とあからさまに書くことなく、けれども確かにそこにあるのだ――と、伝わるように描き出す。フリートとフェルメールの間に流れる思いや行き交う慕わしさを、ひたひたと行間から溢れさせる…その筆致が本当に素晴らしいと思った。
読了日:09月15日 著者:トレイシー シュヴァリエ
宇宙舟歌 (未来の文学)宇宙舟歌 (未来の文学)
“さあ、間違った方向に向けて家に帰る者どもよ、進め!” おおお面白かった!けたけた笑ったり思わず吹きだしたり、そんなことばっかりでどんどん読めてしまった。宇宙版オデュッセイアということで、面白くないはずがないと思いきや、これが滅法面白かったという…。まず初っ端から、道草を喰う気満々の大船長ロードストラムが可笑しい。あっという間に6人中5人の船長が話に乗って、果てしない宇宙での冒険に向けて繰りだす。ぐんぐん繰り出してしまう…! オデュッセイアの世界が絶妙な塩梅で踏まえられた、宇宙時代の壮大(で滑稽)な神話。
読了日:09月13日 著者:R.A. ラファティ
ホメロス オデュッセイア〈上〉 (岩波文庫)ホメロス オデュッセイア〈上〉 (岩波文庫)
読了日:09月12日 著者:
余白の街余白の街
物憂い読み心地。そして内容もかったるいのだが、ここにうずくまる悲哀の色を、どうしてどうして嫌いになれようか…。甘い腐臭に惹かれ淫売街へやってきたシジスモンは、そこで妻の死の知らせを受けとる。その時から、死に直面することを拒んだ彼は、全てを保留にし“透明な泡”に閉じこもる。淫蕩な街の通りから通りへ、“泡”は転がっていく。そして彼は、何も変わっていないように振る舞い、死を引き連れてさ迷う。絶望に抗うシジスモンの孤独と、バルセロナの青空の下でかき消されてはあらわれる古い夢の空間の、哀しい美しさが忘れがたい。
読了日:09月10日 著者:アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグ
火刑法廷[新訳版] (ハヤカワ・ミステリ文庫)火刑法廷[新訳版] (ハヤカワ・ミステリ文庫)
面白かった~。カーを読んだのがこれで二作目なのだが、偶々がらっと雰囲気の違う作品だったのも嬉しい。編集者スティーヴンズが手にした、ゴーダン・クロスの最新作の原稿。そこに留められていたギロチン刑に処された女性の写真が、どうみても自分の妻…!という出だしの章から、おどろおどろしく異様な話にぐんぐん引き込まれた。そして、ラストが凄い。それまで見てきた世界が一瞬にして陰画になったようだった。
読了日:09月07日 著者:ジョン・ディクスン・カー
水底フェスタ水底フェスタ
山奥の村で催されるロックフェス。そこで高校生の広海は、織場由貴美に目を留める―。人目を忍ぶ狂おしい恋、年上の美女との逢瀬から心が離れず…と、やるせなく翻弄される少年の姿にはきゅんとした。が、一方では普通の人たちの普通ゆえの怖ろしさをこれでもかこれでもかと容赦なく突きつけられ、背筋がそそけるくらい本当に怖かった。甘い蜜のない貧しく閉鎖的な村が、ここまで生き延びてきた隠された理由。村の外の世界を思ってみることもしない、想像力のない人々。それはかつてはぎりぎりの知恵だったかもしれないけれど、澱んだ水はいずれ腐る
読了日:09月05日 著者:辻村 深月
黒い本 (中公文庫)黒い本 (中公文庫)
アレクサンドリア…が好きでつい手に取った。倦み果て生きながらに爛れゆく登場人物たちの濃厚な死臭、歪んだ愛と自意識に溺れていく姿と、きつい内容だ。だが文章の持つ力が凄まじく、それだけで読まされてしまう。しだく言葉の奔流に、圧倒されるがままだった。黒い本とは、“ぼく”が見付けた緑色の筆跡の手記。グレゴリーのこの日記と“ぼく”の独白の手記が交錯するこの物語に、これと言った筋はない。若い語り手が、年上の友人たちの無様を具に見つめ、毒のある言葉を吐き散らした挙句一体どこへたどり着けるのか…と、その遍歴があるだけだ。
読了日:09月02日 著者:ロレンス ダレル

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