G・K・チェスタトン、『奇商クラブ』

 『奇商クラブ』の感想を少しばかり。

 “こんな奇妙なクラブが存在するということを知ったときの気持は、実に胸のすくようなものだった。どだい、世のなかに何びとも考えつかなかった商売がまだ十もあるのだと知ることは、新造船や土つかずの鋤を見るのと変わらない。” 13頁

 これも面白かった! もう、チェスタトン大好きだー。 
 その会員は誰もが自分の生業を発明しなけらばならず、しかもそれは似通ったもののない完全な新商売でなければならぬ…という奇商クラブ。この奇妙な集まりを“わたし”ことガリーが知ったのは、友人であり発狂して(!)隠退した元裁判官バジル・グラントが、ある事件をきっかけにその存在を見付けだしたからだった。それからというもの、ガリーとバジル、バジルの弟で探偵のルパートの3人が遭遇する珍事件の陰には、奇商クラブ面々の仕事ぶりが関わっていた…。
 一話目の「ブラウン少佐の大冒険」から、すっかり引き込まれた。ブラウン少佐とは、この話における私立探偵ルパートの依頼人である。そしてこの人の巻き込まれた事件というのが、これまたすこぶる奇妙奇天烈で訳がわからない。退役後はすっかり庭づくりにはまっている少佐は、健康増進のための散歩中に出会った花売りの男にけしかけられ、塀に囲まれた奇妙な庭園の様子を覗き見てしまう。するとその庭の花壇には、三色菫の群れが花文字をなし、それは“死をブラウン少佐に”という文章だった。
 どの話も本当に突拍子もない…と思うのに、結局最後にはにやりと笑わされてしまう。「牧師はなぜ訪問したか」とか、「チャッド教授の奇行」が好きだった。


 表題作の他、禍々しく幻想的な「背信の塔」と、コーンウォール海岸を舞台にした「驕りの樹」が収められている。どちらもとてもよかった。
 「背信の塔」の話は、ハンガリーの辺境辺りの深い冬の森から始まる。その地方には、古めかしい礼拝堂か奇妙な城のような修道院があり、聖なる宝石を守る修道僧たちが勤めていた。謎めいた新しい院長の就任以来、ますます厳重になったダイヤモンドの守護体勢。その僧院の客人で外交官の青年バートラム・ドレイクは、やかましい警戒措置の為に囚人状態に置かれるが、やがて窮地に陥る破目に…。
 バートラム・ドレイクが助けを求めた隠者スティーブン神父の推理、そして青年の恋の行方。何と言っても、銃を持って常に監視している院長の存在が、どす黒くて怖ろしい。


 そして、ケルトの沈んだ色合いも楽しめる「驕りの樹」。“驕りの樹”とは孔雀の樹のことで、コーンウォールの海岸にあって南国的であまりにも不自然で、迷信深い領民たちには忌まれていた。そのコーンウォールの郷士ヴェーンの元へ、客としてやってきたアメリカ人批評家のペインター氏と、詩人のトレハン。さらにヴェーンの娘バーバラと、土地の医師と弁護士の6人は、顔を合わせた最初の会食以来、クラブのような小グループとなって付き合い続けることになる。そしてある日、孔雀の樹をめぐって賭けをすることになるが…。
 “人を食う”とまで人々に語られる孔雀の樹の存在が本当に不気味で、怪異譚のように読めて面白かった。真相にも驚きがあり、堪能した一篇。

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10月2日(日)のつぶやき(海辺の街のレストラン「ブラ・ド・メール」その3)

08:38 from web
おはようございます。たった今読み終えた短篇が、とてもよかった。
08:41 from web
(続き)全然繋がりはないのに、最近読んだ「目眩まし」の中の印象的だったフレーズを思い出した。“風立つなら 駆けよ、駆けよ 風立つなら 立ち止まるな”という、墓碑銘なのだけれど。話に墓地や墓守が出てきたからその連想と、本当に心に風が立つような読後感だったからと、そう両方の所為かな。
08:44 from web (Re: @shiki_soleil
@shiki_soleil やーん、「キューピッドとプシケー」は私も持ってます~。そして「サー・オルフェオ」は……もう、見たら欲しくなっちゃうじゃあないですか(笑)。
11:07 from web
今日はこれから、海辺の街のレストランでお昼ご飯。ささやかにお祝い。
17:28 from web
図書館に行っておこうかな、どうしようかな、ちょっと面倒だしまだいいかな…と、ずーっとここでにょろにょろ迷っていたけれどやっぱり行っておこ。まだ間に合うよ、片道5分だしな。

 ☆    ☆    ☆    ☆

 (後日追記)この日のお昼ご飯は、「ブラ・ド・メール」にて。今までお魚メインのランチしかいただいたことがなかったので、張り切ってお肉も♪
 まずは前菜。これこれこの、スモークサーモン。
 鯵のマリネとか、つぶ貝の香草焼き。

 繊細な昆布だしのコンソメスープ。利尻昆布、でしたか。


 私はここのパンも楽しみ。お店の手作りと聞いています。左のパンが、本当にふかふか。

 そしてお魚料理~♪ ちなみにワインは白でした。手前がアコウで、奥は平目。2種類楽しめるところが、とても嬉しいですね。
 魚が美味しいのは言うまでもないのだけれど、ソースが素晴らしく美味でした。何の風味かしら?と思いきや、ラディッシュですって。

 後は、若狭牛のポワレ。こちらはソースが濃厚で、食べ応えのある一品でしたことよ。


 〆のデザートまで、残さずしっかりいただきました。

 やはり、素晴らしいお店でした。堪能いたしましたよう。ご馳走さまでした♪

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