アンナ・カヴァン、『氷』

 お勧めいただき喰いついた一冊、アンナ・カヴァンの『氷』を読んだので感想を。

 凍てつく雪と氷とに覆い尽くされていく、あまりにも美しくあまりにも邪な世界の終りの無情な光景に、ただただふるえるほど魅了された物語。夥しく流される血の深紅と底知れぬ輝きを放つ青い眼の焔が、果てしない雪白に滲んで眼裏を焦がすようだった。
 
 あらわれたかと思えばつと消え去り手を伸ばせば必ずすり抜けていく、繰り返される幻のような場面(信用ならぬこと極まりなし)と、“私”が執着し何処までも追い求め続ける少女の儚い姿。犠牲者の烙印をその身に押された、ガラスのように透き通る少女の残像。四囲にそそり立つ氷の壁、壁、壁…に、まるで氷の化身のような銀白の髪の少女が対峙するヴィジョンが、執拗なまでにつきまとう。
 抱くことの出来ない少女を求める“私”の心情にいつしか寄り添い、息苦しさの中で焦燥感に身を捩っていた。そして押し殺された凶暴な衝動にも。…邪な快感だった。

 私の、堅固に閉ざされた観念の中で。例えば目の前の世界が頽れ滅びゆくヴィジョン、或いは、一方的かつ強靭な力による完膚なき破壊、誰かを壊すということ誰かに壊されるということ…に、何故かしら魂の根底を揺さぶられるように心惹かれてやまない傾向がある。そしてまた、己の腕の中にあるか弱いもの、己の庇護を必要とするひ弱な存在を、力いっぱい抱きしめて抱きしめて最後には捻ってしまいそうな、そんな衝動に身を委ねたら…という妄想に遊んでしまう傾向。だからこれは、観念の話。
 そういう意味でもこの作品は、自身の無意識の底をかきたてられるようで堪らない一冊だった。“私”の内にある分裂――願い通りに少女を胸に抱いたならば、さらに力を込めてそのガラスのような体を一思いに打ち砕いてしまいそうな暴力への志向、衝動と、愛情豊かに暮らすインドリ(歌うキツネザル)たちの無垢な姿と魅惑的なその歌声に、狂おしいほどに憧れてしまう純粋な気持ちとを、同時に秘めている――この一見正反対の方向への人格の分裂に、とても興味深いものを感じた。誰も彼も…とまでは言わないが、実は人はそんな風に引き裂かれていたりする存在なのかも知れない。…そんなことをうっとりと思う、素敵な余韻。
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6月6日(日)のつぶやき

05:57 from web
おはようございます。これから奥の部屋で体を動かしながら本を読もうと思う…(ご想像にお任せ)。お昼にヴォリュームのあるランチをとる予定なので。目覚めたてじゃないから大丈夫。宿酔いもないから。

 ☆    ☆    ☆    ☆


 後日追記。時間が経ってしまったので、サクサクと画像中心に。
 この日は一応記念日のランチと言うことで…と言っても近場のお店(徒歩20分くらい?)で、近江牛のステーキなどをいただいてきた。敦賀の「ぼたん亭」というお店。
 二階のカウンター席にて、まずは乾杯(…ていつものことか)。

 二人ともステーキCランチをお願いした。そして合わせたワインは、だーさんが選んだ赤(あ、画像がないわ)。
 前菜。
 真ん中の自家製のパテは、後からふわっとレバーの独特な匂いと苦味が追いかけてくる。
 本日のスープは、ヴィシソワーズ。
 お天気のいい中を歩いてきたので、スープが冷製で嬉しかった。
 海の幸のステーキは、若狭ぐじ…!
 若狭ぐじ、いちばん嬉しかったかも…(え、肉は?)。
 はい、お待ちかね近江牛のサーロインステーキ120g。
 何もつけなくても甘みがしっかりあって美味しかった。でも実は塩が合う合う~と思ったよ。120gって聞くと少ないくらいかな?と感じるけれど、美味しくいただける量としては私には無難なところかも。これまた画像がないが、ガーリックトースト(好き!)を一緒に頬張りつつ残さずいただく。
 最後に出てくる飲み物は、ラウンジに移動して寛ぎながらいただいた。ご馳走様でした♪
 ご主人が話の楽しい方だったので、それも込みで美味しくいただけた感じ。敦賀のお店のこととか、いろいろ教えてもらえてよかった。小さな町だからあちらこちらで繋がっているようだ。ちと赤ワインを呑み過ぎて、帰り道が大変だったけれど…(もう歩きたくない~と駄々をこねたような記憶がぼんやり)。

18:42 from web
お酒は赤ワインをメインに近江牛のステーキランチをしたためて、よいお天気の元を結構歩いたので帰宅後はよく眠れました(お腹空かん、当たり前か)。そんな記念日であいすみません…。きーねんびっびっびー♪
19:09 from web
あ、メインイベントは二週間後。まだ〇回目じゃが(一桁ね)。
19:41 from web
PSY・S…! 懐かし過ぎる~。PSY・Sとかって、旦那さんは全然知らないのよね。年は数個上なのだが、当時から聴いてた辺りが全く違う。
20:35 from web (Re: @tariko_
@tariko_ 「 レモンの勇気」!いいですねぇ。私は今、「水のマージナル」が脳内を流れてます。“金色の冠はストレインジな太陽”とか“空を渡ってクラリネットの歌”とか、歌詞が無性に好きです♪
20:40 from web
キノコを白ワインでサッと煮詰めてピクルスにする…ってのを仕込んだところ、部屋中がオリーブオイルくさい。
20:42 from web (Re: @nov_wv
@nov_wv 前奏が秀逸なあの曲ですね!
22:45 from web
池田屋事件、凄く怖い見せ方だった…。
22:52 from web (Re: @tariko_
@tariko_ 歌詞の言い回しと言えば、「ファジィな痛み」なんかも面白かったですね。“ファジィ”というのがもう、時代ですけれど(笑)。
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