古川日出男さん、『ゴッドスター』

 今日は自転車で市役所へ行ったり、今年最後の開館日なので図書館へ。夕闇が落ちてくる気配だけで、早く家に帰りたい気分になるのは何故なんだろう…?

 前作『ハル、ハル、ハル』の記事の中で、古川作品は街中で読みたいと書きました。街の雑踏が似合いそうだから…と。だからこの本も持ち歩いて、なるたけ出先で読みたかったのだけれど、結局は家の中で読み終えてしまいました。 
 でも正直言うとちょっと、そもそもそこまでする思い入れが薄れてきたかもしれない…。とか言いつつ、読んでしまえばやはり面白いのが古川作品、ではありますが。

 『ゴッドスター』、古川日出男を読みました。
 

 滑り出しも快調に、ざっくざっくと読みました。私の好きなライヴ感は相変わらずですし、とにかく言葉と文たちのリズムに乗ってしまえば、ぐんぐんストーリーも流れ動き出す。文字を追うのが気持ち良い、そんな感じでした。  
 まず、主人公“あたし”が語り出すのは、三十五歳の姉がお腹の中の赤ん坊とともに死んでしまったこと。だからず~っと、“死についてかんがえていた”こと。でもある日“あたし”は、“窓の外にふいにうまれた”みたいな男の子に遭遇する。記憶のない子どもを街中で見つけ出し、そのまま二人で暮らし始めてしまう。そして――。

 記憶のない子どもが文字を教えられ、あらためて自分の中に吸収していくところとか、読んでいてすごく面白かったです。余計なことは何も考えずに楽しんでいましたけれど、例えば“文字”についての捉え方とかも、ちょっと独特なので。 
 あと、新たな人物・明治が絡んでくるくだりでは、それまで二人だけだった閉じた世界が、ぐにゃりと押し広げられていくようなスケール感があってそこも好きでした。まるで二人の限定された“エリア”に風穴が出来て、そこから別の次元の風が吹き込まれてくるみたいで、うん、そういうところが古川ワールドだなぁ…と。流石、読ませるなぁ、と。

 けれどもすみませぬ。話が後半に入って、ふっと我に返って自分の中のテンションが下がってしまったときに、「でも、こういう文体はそろそろお腹いっぱいだ…」と思ったというのも正直な気持ちです。朗読したら格好良いってのは、よくわかりますけれどね。グルーヴに身をまかせる気持ち良さだって、味わいましたしね。
 これはもしかしたら、たまたま最近私が古い小説を続けて読んでいて、じっくりと読ませる文章の方に自分のチャンネルが合っていた所為かも知れません。でもいずれにしても、斬新さの印象は長くは続かないものだと思うのですが、いかがなものでしょう…。ううむ。

 昔みたいな作品も読みたいなぁ…(ぼそそ)。

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