計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

科学技術の陽はまた昇る・・・と信じたい。

2009年11月20日 | オピニオン・コメント
川端文科相、次世代スパコン予算確保目指す意向(読売新聞) - goo ニュース

 次世代型スパコンやロケット開発に「ノー」という科学技術への「事業仕分け」は確かに衝撃ですが、政権に対する評価については少なくとも4年間のスパンで見なければならないだろうと思います。とは言え、この仕分けの結果は、私の中でもどのように理解すべきか悩ましい現実でした。

 確かに「事業仕分け」によって、訳の分からない団体や基金と言った意義不明な事業や、得体の知れない独立行政法人をあぶり出し、国民に明らかにした上で公開の場で精査した事の意義は大いにあると考えます。これはどんどんやって然るべきと思います。それだけに、この事業仕分けそれ自体を否定するつもりはありません。国家の予算が限られている以上、優先順位をつけるのは当然です。

 敢えて理想論を言えば、国家の事業戦略やビジョン、政治哲学が始めにあり、それを受けてその後の行政運営や仕分けに反映されるのが筋ではないかと考えます。そのためにも、国家戦略局の手腕に期待したい所ではありますが、今回はその順序がごちゃ混ぜになっていた感が否めません。

 今回の一連の出来事は、科学技術の研究開発に関する国家戦略・国家ビジョンが明確にされないまま、そして科学技術の存在意義が理解されないまま、我が国の未来の発展の芽が摘まれた感は否めません。

 いやしくも、この日本が「独立主権国家」として諸外国と渡り合って来れたのは、やはり「科学技術立国ニッポン」としての実績があったからであり、この事実を忘れてはいけないと認識しています。この国には資源も無く、食料自給率も低く、安全保障にも他国の力を借りなければならず・・・そんな状況下で国際社会の荒波を渡り合っていくためには、この国のアドバンテージをギャランティーしなければならないのです。

 それが「科学技術」だったのです。

 これからも「科学技術立国ニッポン」の御旗を掲げ続けていくためには、理科系の人材育成がより一層重要性を増してくるでしょうし、一刻も早い国家戦略・国家ビジョンの明確化が求められる所です。

 これからは、科学技術に関わる専門家一人一人が現場から声を上げて行く事がより一層必要になってくるでしょう。さらに、科学技術の対する理解が広まるためには、各分野の専門家が研究室を飛び出して、広く一般市民に対して、知識や知見の普及に努める事が大切なのではないかと思います。

 スパコンに限らず、研究開発には莫大な資金を必要とする分野は少なくありません。しかし「予算が無いから研究開発が出来ない」ではなく、「この条件でも絶対に成功させるんだ!」と言う情熱と気概、そして信念を大切にして欲しい、と願わずにおれません。理系の強さは何も専門知識や技術だけではありません。例え日陰にあっても、華やかでなくとも、自分の成すべき研究や仕事に対し、情熱と気概と信念をもって只管、地道に挑み続け、いつの日にか自分の花を開かせる強さを持っているのです。

 これまでの歴史の中で、多くの科学者・技術者の努力と情熱が、多くの不可能を可能にしてきました。このような逆境を受けて、私も理系同志の一人として、科学技術者の皆さんにエールを送らずにはいられません。私も、自分の分野でしっかりと努力し続けるつもりです。



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