計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

ベータ効果のイメージ

2018年01月19日 | お天気のあれこれ
 昨日の記事「絶対渦度と相対渦度のイメージ」では、「渦度」の話を書きました。ある流れ場の中に羽根車を置いたとき、その羽根車を回転させようとする働きのことを「渦度」と紹介しました。今回はさらに「正の渦度」と「負の渦度」について紹介します。

 正の渦度は「反時計回り」の渦度です。右手の4本の指が回転の向き、親指が渦度ベクトルの向きに対応します。


 一方、負の渦度は「時計回り」の渦度です。こちらも右手の4本の指が回転の向き、親指が渦度ベクトルの向きに対応します。


 また、昨日の記事では、「絶対渦度」と「相対渦度」についても紹介しました。以下、簡単に振り返ってみます。

 まずは、コリオリ・パラメーターfです。地球は自転しているので、地球上で運動する物体・流体は既に自転に伴う渦度ベクトルを持っています。

 この大きさ(f)は、地軸上にある極が最大となり、極から赤道に近づくにつれて小さくなります。地球上に存在する者同士では、互いにこの渦度を認識(観測)することはできません。



 続いて、相対渦度(ζ)です。自転する地球上で、fの他に生じる渦度のことです。地球上に存在する者同士が互いに認識(観測)できるのは、こちらの渦度です。


 以上の2種類の渦度(コリオリ・パラメーターfと相対渦度ζ)を合わせたものが「絶対渦度」(f+ζ)です。つまり、「宇宙空間のある地点に固定された場所」から「地球上で生じる渦度」を見た場合には、この「絶対渦度」が認識(観測)されます。

 さらに、「水平面上(2次元)での運動」で、さらに「収束・発散がない」場合は、絶対渦度(f+ζ)は時間に対して一定に保たれます。これを「絶対渦度の保存則」と言います。地球の自転に伴う台風の北上を例にとって考えてみましょう。

 今、北半球上のある緯度に、台風(強い正の渦度を持つ)があると想定します。


 台風を右半分と左半分に分けて考えてみます。

 右側では、南から北に向かう流れとなるため、コリオリパラメーターfも時間と共に「正の向き」に変化します。一方、相対渦度は絶対渦度の保存則に従うため、時間と共に「負の向き」に変化します。


 左側では、北から南に向かう流れとなるため、コリオリパラメーターfも時間と共に「負の向き」に変化します。一方、相対渦度は絶対渦度の保存則に従うため、時間と共に「正の向き」に変化します。



 このように、ζの時間的な変化は、fの変化とは逆向きで、南北方向の移動速度とfの勾配によって生じます。式で書くと「dζ/dt=-βv」と表されます。

 地球上で重要になるのは、相対渦度ζの変化です。右側・左側共に、ζは台風の中心を北向きに押し上げるように変化します。


 このため、地球の自転に伴う効果で、台風は北上する性質があります。
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