計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

気柱の平均気温と気柱の高さ・地上気圧の関係

2015年07月30日 | お天気のあれこれ
 大気の様子を簡単な柱に表現したものを「気柱」と言います。静力学平衡の式から層厚の式を導きますと、その式の形から「気柱の高さ(または気層の厚み)は気柱(または気層)の平均気温が高くなるのにつれて大きくなる」ということが判ります。

 このイメージを、直感的にわかりやすく図に描けないかな・・・と長年思い続けておりまして、ようやくアイデアが閃きました。
 

 左側はもとの気柱の下にさらに暖かい気柱が新たに加わることによって、その分だけ全体の平均気温は上がり気柱の高さも増しています。右側は、もとの気柱の下部にある暖かい気柱が消えて、その分だけ全体の平均気温は下がり気柱の高さも低くなっています。ここで、同じ色の塊は互いに同じ温度で同じ質量というイメージです。

 そして、地上における気圧は、その真上に乗っている気柱の重さによって生じる圧力ですので、気柱の高さが大きくなるほど、地上の気圧も大きくなるわけです。

 さて、上の図ですと、すべての塊が同じ高さに描いてありますが、実際には上空ほど気圧が低く、膨張しやすいので、こんな感じに書き改めてみます。



 ここで、左側(高温・高圧)と右側(低温・低圧)の気柱の途中に板を挟み込み、左右の板を斜めに傾く板でつなげています。この左側の柱から右側に柱に向かう一連の板上においては、気圧が等しいことから、この一連の板面を等圧面と言います。

 この等圧面が傾きが生じることを傾圧性と言い、この傾きが大きくなることを「傾圧性が大きくなる」または「傾圧性が強化される」と言います。上空に行けばいくほど、傾きが大きく、傾圧性が強化されている様子が見て取れます。
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7 コメント

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気柱の平均気温と気柱の高さ・地上気圧の関係 (ひでぼう)
2015-08-21 17:47:07
いつも拝見しております。
お忙しいところすみません、
ちょっとお尋ねしたいのですが、
海陸風について教科書では
「昼間は陸地の温度が海よりも高くなる。
空気は暖められると膨張して密度が小さくなり気圧が低くなる。
したがって,昼間は陸地側の気圧が海側の気圧より低くなり,風は海側から陸側に吹く」とありますが、
どうも「膨張して気圧が低くなる」というのがピンときません。
反流が吹くところより上で等圧面高度が同じなのに、
地表付近の気圧が海と陸で異なるのでしょうか?
返信する
ご質問ありがとうございます。 (qq_otenki_s)
2015-08-22 10:19:13
 いつもご覧頂きありがとうございます。

 頂きましたご質問ですが、2つの問題に分けてお話したいと思います。


【1.どうも「膨張して気圧が低くなる」というのがピンときません。】

 「膨張して気圧が低くなる」については、理想気体の状態方程式「PV=mRT」から考えると宜しいかと思います。

・「V=mRT/P」となるので、圧力Pが一定の条件であれば、体積Vと温度Tは比例関係にあります。

・「P=mRT/V」となるので、温度Tが一定の条件であれば、圧力Pと体積Vは反比例関係にあります。

 空気が暖まると温度Tが大きくなるので、「V=mRT/P」の関係により、体積Vも大きくなります。

 さらに、体積Vが大きくなりますと、「P=mRT/V」の関係により、圧力Pは小さくなります。

 従って、「空気が暖まると膨張して、その空気の圧力も小さくなる」と言う趣旨で述べているものと考えます。


【2.地表付近の気圧が海と陸で異なるのでしょうか?】

 日射が射しこむ昼間は「海側の気圧>地上の気圧」、日射を受けない夜間は「海側の気圧<地上の気圧」となります。これは海と陸の「熱容量(≒温度変化のしやすさ)」の違いによるものです。

 また、この記事の「気柱の平均気温と気柱の高さ・地上気圧の関係」に基づいて考えると、次のように考えることができます。簡単のため、ここでは「下層2~3km」に限定して考えましょう。

(1) この範囲では、海側と陸側に温度の差が全く生じなければ、海側の気柱と陸側の気柱は共に同じ高さとなります。この状態を「初期状態」、そしてこの時の気柱の高さを仮に「天井」とでも呼ぶことにしましょう。

(2) ここで、日射を受けますと、陸側は「熱しやすく冷めやすい」のに対して、海側は「熱しにくく冷めにくい」ため、海側の気温はなかなか変わらないのに対して、陸側の方はみるみる温度が上がります。

(3) 気柱の平均気温と気柱の高さの関係を考えれば、海側の気柱の高さはそのままであるのに対して、陸側の気柱は上にのびていきます。

(4) すると、陸側の気柱は天井を突き抜けるようになりますので、天井付近では「陸側の方が海側よりも気圧が高い」と言うことになります。

(5) この状態を解消して、初期状態に近づこうとするため、天井付近では陸側から海側に向かって、突き抜けた分の空気が移動し始めます。この流れが「海風反流」です。

(6) 海風反流によって、陸側の気柱は徐々に軽くなり、海側の気柱は徐々に重くなります。

(7) やがて、地上付近(気柱の底面)では、海側の方が陸側よりも気圧が高くなってしまうため、海側から陸側にむかって風が吹くようになります。

(8) こうして、地上付近では「海風」、陸側では「上昇気流」、上空(天井付近)では「海風反流」、海側では「下降気流」と言う、一つの鉛直循環が形成されるのです。

 以上、長くなりましたが、御参考になれば幸いです。
返信する
ご説明ありがとうございます (ひでぼう)
2015-08-29 05:34:38
お忙しいところどうもありがとうございます。

まず、陸側で上昇気流がおきて天井が高くなる。
この時が「新しく書き加えた図」で言いますと、
左側が陸で、右側が海になりますよね。
このとき(コリオリ力を考慮しないところの)温度風が起きる理屈で反流がおきる。
ここまではわかります。
しかし「新しく書き加えた図」でいいますと海風は右から左、
つまり下層で「軽くなる」と書かれた方から
「重くなる」へ向かって吹くんですよね。
重いということは気圧が高い?
いや、シベリア高気圧のように
冷たいところ、つまり海側のほうが気圧が高い?
う~ん、難しいです(´・ω・`)
返信する
等角フォントでご覧ください。 (qq_otenki_s)
2015-08-29 09:22:31
 「新しく書き加えた図」は、海陸風よりも遥か上空(上空10km程度)までをイメージしております。

 海陸風は上空2~3kmの範囲で、それより上空の事情は取りあえず無視して考えます。海陸風は「気柱」で考えると、案外返って難しいかもしれません。

 今回は少し図を入れてみました。おそらくブログ上では崩れてしまうので、メモ帳にコピー&ペーストするなど「等角フォント」にしてご覧下さい。

(1) 海側と陸側に温度の差が全く生じなければ、海側の気柱と陸側の気柱は共に同じ高さとなります。

気柱  気柱
┌─┐─┌─┐─ 天井
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├─┤ ├─┤
│□│ │□│
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 陸   海


(2) ここで、日射を受けますと、海側の気柱の高さはそのままであるのに対して、陸側の気柱は上にのびていきます。

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├─┤ ├─┤
│■│ │□│
┴─┴─┴─┴
 陸   海


(3) この状態を解消しようとするため、上空では陸側から海側に向かって、上に突き抜けた分の空気が移動し始めます。この流れが「海風反流」です。

┌─┐
│□│→→→ 海面反流
├─┤
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├─┤ ├─┤
│■│ │□│
┴─┴─┴─┴
 陸   海


(3) 海風反流によって、陸側の気柱は徐々に(上の状態に比べて)軽くなり、海側の気柱は徐々に(上の状態に比べて)重くなります。
  こうして海と陸の気柱のバランスを取ろうとします。

 →→→→→ 海面反流
┌─┐ ┌─┐ 
│□│ │□│
├─┤─├─┤─
│■│ │□│
├─┤ ├─┤
│■│ │□│
┴─┴─┴─┴
 陸   海


(4) このプロセスに伴い、陸側の気柱は上端の部分が抜けて行くので、下の方からその抜けた分を補充しようとします。そこで上昇気流が生まれます。
  また、海側の気柱は頭の上にさらに新たな空気が乗っかってくるので、上から押しつぶされるような形になり、下降気流が生まれます。

 →→→→→ 海面反流
┌─┐ ┌─┐ 
│↑│ │↓│
├─┤─├─┤─
│↑│ │↓│
├─┤ ├─┤
│↑│ │↓│
┴─┴─┴─┴
 陸   海

 つまり、「上昇気流は低気圧、下降気流は高気圧」と言うことを考えると、地上付近では海側が高気圧、陸側は低気圧に相当します。


(5) そうすると、地上付近では海側から陸側に向かって(海面反流とは逆向きに)流れを生じます。

 →→→→→ 海面反流
┌─┐ ┌─┐ 
│↑│ │↓│
├─┤─├─┤─
│↑│ │↓│
├─┤ ├─┤
│↑│←│↓│
┴─┴─┴─┴
 陸   海

 これで、「陸面からの上昇気流 → 上空の海面反流 → 海面に向かう下降気流 → 海上から陸面に向かう海風」という流れのサイクル(鉛直循環)が生まれます。

 イメージを掴んで頂ければ幸いです。

(p.s.)
前回の「(7) やがて、地上付近(気柱の底面)では、海側の方が陸側よりも気圧が高くなってしまうため、海側から陸側にむかって風が吹くようになります。」は、今回の説明をもって、訂正します。
返信する
御参考までに、補足します。 (qq_otenki_s)
2015-08-29 10:13:30
 海陸風に関しては、「熱容量の差によって陸側は低気圧、海側は高気圧が形成された結果、海陸風が生じる」と理解される事が多いようです。
 すなわち、「陸側は低気圧、海側は高気圧が形成される」ことが「海風が生じる」こと(結果)に対する原因(または要因)と理解されています。

 これを敢えて、原因(要因)と結果を、逆に解釈することもできるかもしれません。

 つまり、気柱のアンバランスを解消するプロセスによって、「陸面からの上昇気流 → 上空の海面反流 → 海面に向かう下降気流 → 海上から陸面に向かう海風」のような鉛直循環が生じた「結果」として、陸側は低気圧、海側は高気圧が形成される、と言う解釈です。
返信する
すみません (ひでぼう)
2015-09-09 18:37:56
早々にご説明いただいたのに
私からのお返事が遅くなって、すみません。

私には「補足説明」のほうが、ピンときます。
「陸側の低気圧、海側の高気圧→空気の流れ」と考えるから
ややこしいんですよね。
例えば「ハドレー循環のような空気の循環があるから
赤道低圧帯(低気圧)と亜熱帯高圧帯(高気圧)ができる」のと同じですよね。
これはとても分かりやすいです。
お陰様でよくわかりました。

しかしながらといいますか、私事ですが、
どうやら来年の1月には5回目の予報士試験の挑戦が
必要なようです(笑)
サラリーマンをしながらの勉強は大変ですが頑張ります。

どうもありがとうございました。
m(_ _)m
返信する
Unknown (qq_otenki_s)
2015-09-10 00:06:13
 お役に立てたようで何よりです。

 教科書でも、様々な現象のプロセスには「原因」があって「結果」がある、というストーリーを展開して解説しますが、実際にはどちらが「原因」で、どちらが「結果」なのかがよく判らない場合もあります。ニワトリとタマゴのような関係です。

 気象予報士試験に向けて勉強されているとの事ですので、合格の栄冠を勝ち取れることを祈念しております。
返信する

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