計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

「講師」に求められる力とは何だろう。

2013年11月16日 | オピニオン・コメント
 学生時代に塾の講師を4年間経験しました。当時はクラス指導が主流でしたので、クラス指導形態。現在も縁あって、本業の傍らとある学習塾での講師も5年近くさせて頂いておりますが、こちらは個別指導の形態です。つまり、講師の仕事を通算9年近く経験しているんですね。

 形態が違うと、講師に求められるものも自ずと異なってきます。一方で、あくまでも変わらないものもあります。それは「説明のわかりやすさ」です。複雑だったり難解だったりする内容を、簡潔に、分かりやすく、しかも最短距離で理解に導く事を心がけるのです。もちろん、最初から手取り足取り教えるのではなく、相手にも自分の力で考える時間を十分に与え、自力での解決を促します

 クラス指導の場合は特に、だらだら解説していると(←講師は丁寧に解説しているつもりでも)、生徒さんは一方的に話を聞くのに飽き始めます。だからこそ、解説のポイントを、時間を掛けず、手短に、伝える技術やフレーズが必要になります。これが「簡潔に、分かりやすく、最短距離を」なのです。当時の塾長から徹底的に叩き込まれた姿勢です。これは、それ以降の私がプレゼン等を行う時の「フィロソフィー」になっています(※でも、このブログでは「だらだら」と思いつくままに書きます)。

 とは言え、いきなり結論だけを伝えて「これがこうなるのを覚えろ!」という解説では駄目です。必要なステップを段階的に踏んで、相手の理解度を探りながら、順を追って説明しなくてはなりません。相手に「わからせる」のが講師の仕事です。「わからせて」なんぼです。

 個別指導の場合は、生徒さんとの「対話」の比重が非常に高くなります。一人一人と向き合っていると「生徒さん御本人の発する言葉、すなわちバーバル(言語的)な情報だけが、必ずしも全てを物語っているのではない」、という事に気付きます。雰囲気や態度、仕草、何気ない行動、と言ったノンバーバル(非言語的)な情報を敏感に感じ取り、そこから相手の状態を「推測する」ことも必要です。本来は「読み取る」ことができれば望ましいのですが、実際には「推測する」でしょう。大切なのは、読み取るにせよ、推測するにせよ、相手の様子をさりげなく観察し、目の前の相手を「知ろう」「感じ取ろう」とすること

 そして学習に関しては、あくまで生徒さんが「自分の力で考えながら、最適解に辿り着けるように」ガイドすること。時には、考える「やり方」を最初から途中まで、目の前で「実演」することもあります。ただ、多くの言葉を発して「おしゃべり」すれば良い、というものではないんですね。何気ない「おしゃべり」の言葉の端々からも、その奥にあるものを読もうとします

 それはすなわち「一を聞いて十を知ろう」とする姿勢です。しかし、もちろん占い師でもなければ超能力者でもないので、全てを察する事なんてできません。それでも、目の前の相手を「知ろう」「感じ取ろう」とし続けるのです。そうすると、相手に説明する際のわかりやすいフレーズや、その言葉を発するタイミングが見えてくるときがあります。

 自分で言うのも変ですが、講師の時と普段では相当「キャラクター」が変わります。私は「自分なりに思い描いている講師像」を演じている、そして「演じる」ことを「楽しんでいる」と言っても良いでしょう。しかし、自分自身の「本当の人柄=本質」は上辺だけの演技で誤魔化すことはできません。私が「演じる」ことで、相手が少しでも「楽しく」学習に向かう事が出来、そして「何か新しい発見がある」という事がすなわち「価値」なのです。

 上司と部下の関係でも似たようなことが言えるかもしれません。上司が部下に伝えるためには、自分の想いや情熱をただ一方的にぶつけても不十分。自分の想いや情熱の上に、その目的や理念、背景や内容を理解させなければならない。そう考えると、なかなか面倒くさいですね。「はぁ~(ため息)・・・いちいち順を追って分かりやすく説明しなければならないのか・・・」って感じですよね(正確には「説明」ではなく「誘導」です。自分の意図する業務を遂行できるように「誘導」し、実行させる)。

 でも、これを怠ると、後々さらに「面倒」なことになります。「はぁ~(ため息)・・・」どころじゃなくなりますよ。現在では、「コーチング」「ファシリテーション」など様々な手法も確立されています。一見面倒ですけど「いちいち順を追って分かりやすく説明する」・・・これはある意味「講師」に通じるものかもしれません。

 つまり、いちいち「はぁ~(ため息)・・・順を追って分かりやすく説明するなんて・・・めんどくせえなぁ・・・」と言う人は、ズバリ!講師には向きません。むしろ、説明する内容を、一つ一つ順を追って、ストーリー立てて整理し、それを説明することを「楽しめる」人じゃないと、講師は務まらないんじゃないかな・・・。

 私?、私はもちろん「説明する内容を、一つ一つ順を追って、ストーリー立てて整理し、それを説明すること」が楽しいです。ちょっと考えただけでも、わくわくしますね。だから、これまでの経験を体系的に整理して、そろそろ気象に関する「講師」業も始めたいな・・・なんて。
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