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計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

傾圧不安定波のイメージ

2018年01月17日 | お天気のあれこれ
【※】gooブログのサービス終了に伴い、アメーバブログに移転しています。
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 一昨日の記事「温帯低気圧と前線形成のイメージ」では、次の図のような「寒気と暖気のぶつかり合い」からスタートして、温帯低気圧や前線が形成される様子を描きました。



 この結果、寒気と暖気の接触面と地上が交わる領域上に、前線や低気圧が形成される構造が描き出されました。そして、その上空では西風が強まって偏西風の強い流れが現れます。これは、昨日の記事「層厚と温度風のイメージ」で触れました。



 上空で西風が強化されるメカニズムについては、昨日の記事「層厚と温度風のイメージ」や過去の記事「「温度風の関係」のイメージを描く・・・」で述べた通りです。

 北半球では、等圧面の高度は「南側の方が高く、北側の方が低く」なります。この高低差は、大気の層の(南北方向の)温度差(寒暖差)に相当します。南北間の高度差(温度差)を生じるという事はつまり、等圧面は南北方向に傾いていることであり、この性質を「傾圧性」と言います。

 上空へ行けば行くほど、等圧面の傾きは顕著になるので、西風成分はより顕著に強化されることになります。


 地上では西風の影響はそれほど強く現れるとは限りませんが、上空へ行けば行くほど、ある程度のバランスを保ちつつ、西風の影響が強まることを意味します。ここで、次の図の様に、バランスが保たれている状態を「安定」な状態と呼ぶことにします。




 この状態から、さらに南北間の温度差が大きくなると、傾圧性が強まり、温度風の関係に基づいて、上空の西風がより強化されていきます。そうすると、上空の西風が著しく強化されることになります。次の図のように、西風のバランスがおかしくなってきます。

 このアンバランスな状態を「不安定」な状態と言います。この不安定な状態は、傾圧性が強められたことによって引き起こされるので「傾圧不安定」と言います。




 不安定(アンバランス)な状態が強まると、やがて(バランスのとれた)安定な状態に戻ろうとする働きが生じます。何らかのアクション(現象)を起こすことで、バランスを取り直そうとします。

 つまり、不安定な状態においては「位置エネルギー」をため込んだ状態であり、この状態を解消すべく何らかのアクション(運動)を起こすことで「運動エネルギー」に変える働きを生じるのです。



 アンバランスな状態では、西風成分が強化され過ぎていました。従って、この西風成分の大きさを、バランスの取れるレベルまで落とすことになります。その際、余剰な成分を南北方向に分散させようとします。このため、全体的な流れは、真っ直ぐの東西流(ゾーナル・タイプ)から、南北に蛇行する南北流(メリディオナル・タイプ)へと変化します。

 この波動は、傾圧性が強化されたことに伴うアンバランス(傾圧不安定)を解消するために生じる波なので、傾圧不安定波と言います。冒頭で示した「寒気と暖気のぶつかり合い」によって、上空でもこのようなメカニズムが働いています。温帯低気圧は、傾圧不安定波としての一面も持ち合わせています。

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層厚と温度風のイメージ

2018年01月16日 | お天気のあれこれ
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 数年前に「「温度風の関係」のイメージを描く・・・」という記事を書きました。この記事では数式を用いて温度風の関係を考えましたが、ここではイメージを基に考えたいと思います。

 本来であれば、静力学平衡の関係から層厚の式を導くのが理論的な考え方ですが、ここでは数式を使わずに考えてみます。

 いま、一定に質量を持つ「大気(空気)のブロック(塊)」を考えてみます。このブロックは断熱的に膨張・圧縮するものと仮定します。



 そして、このブロックを何段にも積み上げると、大気の柱(気柱)が出来上がります。下の図では、左側の気柱は4段、右側の気柱は2段のブロックが積み上がっています。

 気柱の上には「おもり」が載っています。これは気柱の上にさらに載っている空気の重さを表します。ここで、左右の気柱の上に載っているおもりの質量(大気の総質量)は等しいと考えます。つまり、左右の気柱の頂面における気圧は互いに等しくなります。



 ここで、空気のブロックは気圧に応じて膨張・圧縮するので、上のブロックは断熱膨張する一方、下のブロックは(上からの重みで)断熱圧縮されます。つまり、左右の気柱の1番上のブロックは同じ温度となりますが、1番下のブロックの温度は左右で異なります。気柱全体の平均的な温度を考えると、左側の気柱の方が高く(暖かく)、右側の気柱の方が低い(冷たい)という事が判ります。

 また、気柱の底面(地上)に加わる重さを考えると、左側の気柱の底面には「おもり+ブロック4段」の重さが加わる一方、右側の気柱の底面には「おもり+ブロック2段」の重さが加わります。つまり、左の気柱の底面の方が(地上)気圧が(相対的に)高く、右の気柱の底面の方が(地上)気圧は(相対的に)低い、という事になります。

 続いて、左右の気柱の頂面と両者をつなげる斜面上は、同じ気圧(おもりの質量)が加わります(つまり、一連の面上では気圧は等しい)。

 同様に、上から1番目のブロックの底面と両者をつなげる斜面は、同じ気圧(おもり+1番目のブロックの質量)が加わります。

 さらに、上から2番目のブロックの底面と両者をつなげる斜面は、同じ気圧(おもり+1番目のブロックの質量+2番目のブロックの質量)が加わります。

 ここで、左右の気柱の頂面やブロックの底面をつなげる斜面は、各々同じ気圧が加わる面ということで「等圧面」と言います。この図のように左右の気柱に挟まれた等圧面は斜めに傾いています。等圧面が傾く性質のことを「傾圧性」と言います。

 さらに、上空に行くにつれて等圧面の傾きが大きくなり、傾圧性が強化されます。そのイメージについては「気柱の平均気温と気柱の高さ・地上気圧の関係」の図をご参照下さい。

 左右の気柱の高さの差が大きくなるにつれて、等圧面の傾きも大きくなります。その様子を次の図に示します。



ここまでをまとめると、次のようになります。

・気柱の背が高いほど平均気温も高くなる。気柱の背が低いほど平均気温も低くなる

・気柱の背が高いほど地上気圧も高くなる。気柱の背が低いほど地上気圧も低くなる

・隣り合う気柱の背の高さの差が大きくなるほど、等圧面は大きく傾く(傾圧性が大きくなる)

・隣り合う気柱の平均気温の差が大きくなるほど、等圧面は大きく傾く(傾圧性が大きくなる)

・上空へ行くほど、等圧面は大きく傾く(傾圧性が大きくなる)



 以上を踏まえ、今度はこのような図を考えてみます。先ほどの図を少しだけ傾けてみました。



 ここで、下の図の様に、高い気柱の上にある「空気塊」を考えてみます。この空気塊は、低い気柱に向かって、等圧面の坂を下っていきます。この際、等圧面の坂道が急になるにつれて、この働きはより強くなります。・・・という事は、このまま真っすぐ坂道を下る様子をイメージしてしまうかもしれません。


 しかし、実際はコリオリの力が働きます。北半球上の運動の場合は、進行方向に対して右向きに働きます。このため、空気塊の進路は右向きに傾いていきます。この結果、空気塊は高い気柱を右手に見るように横向きに進むようになります。


 北半球の場合、南側(赤道側)の方が空気の層は(相対的に)厚く(背が高く)、北側(極側)の方が、空気の層は(相対的に)薄く(背が低く)なります。つまり、上の図の場合、空気塊は「西向き」に運動することになります。

 このような空気塊の運動は、2つの気柱の高低差とコリオリの力によって引き起こされます。そして、この気柱の高低差は、気柱の温度の差にも相当します。従って、このようなメカニズムで生じる風を「温度風」と言います。この関係に従って、南北方向の気温差が大きくなる所では、西風成分が強化されるのです。



 上空では温度風の効果がより強く現れます。この結果、上空の偏西風が形成されます。温帯低気圧や前線との関係は次の図の様に描くことが出来ます。





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温帯低気圧と前線形成のイメージ

2018年01月15日 | お天気のあれこれ
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 前線は「暖気 vs 寒気」のように異なる2つの気団に伴う流れがぶつかり合う所で形成されます。その前線上に低気圧が発生・発達します。この立体的な構造のイメージを描いてみました。

(1) 寒気と暖気が接触することから始まります。
  この時の両者の接触面を前線面(前面)と言います。



(2) 寒気は下降しながら暖気側へ進む一方、暖気は上昇しながら寒気側に進みます。
  この時、寒気は暖気の下に潜り込むため、全体的に盛り下がります。
  一方、暖気は寒気の上に乗り上げる形となるため、全体的に盛り上がります。
  ここで、前線面(前面)と地上が交わる線状の領域を前線と言います。



(3) 地球の自転に伴い、北半球では進行方向に対して右向きにコリオリの力が働きます。
  このため、寒気の下降流と暖気の上昇流も互いに右向きに回転します。
  暖気側から見ると、前線面の右半分では暖気が寒気の上を乗りあげる形(温暖前線)となります。
  一方、前線面の左半分では、寒気が暖気を下から押し上げるような形(寒冷前線)となります。



(4) 横幅を拡張し、高気圧まで併せて描いてみます。
  暖気と寒気の境界で前線や低気圧が形成される様子が判ります。
  また、低気圧の付近では上昇気流となり、これに伴って雲域が広がります。
  一方、その隣では下降気流となり、真下には高気圧が現れます。



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等圧線から風向きを読む

2017年01月24日 | お天気のあれこれ
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 例えば、次のように平行な等圧線があり、下の方が気圧が高く、上に行くにつれて気圧が低くなるような場合の風向きを考えてみましょう。



 とりあえず、空気は気圧の高い方から低い方に向かって移動するわけですから、気圧の高い方から低い方に向かって等圧線と直角に矢印を引きましょう。



 さらに、北半球の場合は、進行方向の右手向きコリオリの力が働きます。また、地上付近では摩擦の力も働きますので、先ほどの矢印を少し右手向きに傾けましょう。どれくらい傾けるかは一概に言えませんが、とりあえず45°くらい傾けます。



 ここで、気圧の差に伴う力(気圧傾度力)、コリオリの力摩擦力、そして風の向きにはこのような関係があります。



 続いて、このように高気圧低気圧の中心を、等圧線が渦状に取り巻く場合を考えてみましょう。



 とりあえず、気圧の高い方から低い方に向かって等圧線と直角に矢印を引きましょう。



 さらに、先ほどの矢印を少し(45°くらい)右手向きに傾けましょう。高気圧の中心からは時計回りに風が吹き出して行く一方、低気圧の中心に向かって反時計回りに風が吹き込んでいます。



 それでは、前線を伴う低気圧(温帯低気圧)を取り巻く風の流れを読み解いて行きましょう。



 とりあえず、気圧の高い方から低い方に向かって等圧線と直角に矢印を引きましょう。



 さらに、先ほどの矢印を少し(45°くらい)右手向きに傾けましょう。



南からの暖気北からの寒気がぶつかり合い、前線が形成される様子が浮かび上がってきます。




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寒冷渦のイメージを描く

2016年08月27日 | お天気のあれこれ
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 上空に現れる「寒冷渦寒冷低気圧)」のイメージを描いてみました。左側は大気層の重なりのイメージで、右側は鉛直断面のイメージです。


 上空の偏西風(図では「強風軸」と表記)の蛇行が激しくなると、南に凸となる部分(トラフ)が寒気を囲むように分離するような状態に至ることがあります。上空に寒気の核が形成され、その周囲を(低気圧性の)大きな渦で取り囲むような感じにも見えます。

 その一方、対流圏界面付近では暖気核となっています。これは圏界面が垂れ下がることに伴って、その上にある下部成層圏の空気も下がってきて、断熱圧縮され、気塊の温度が上がるものです。

 地上天気図では余り明瞭には現れないものですが、下層では寒冷渦の中心の東側では暖気の流れ込み、西側では寒気の流れ込むため、寒冷渦の南東側では激しい現象を伴う可能性があります。


 ちなみに、高層天気図の等高度線を見ると、まるで大きな目玉のようにも見えます。そして、その中心には寒気核が蓄えられています。

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「コリオリの力」について考えてみる。

2015年08月26日 | お天気のあれこれ
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 北半球上では、運動する物体の進行方向から見て右側に向かって、見かけ上の力(慣性力)が働きます。これを「コリオリの力」と言います。


図1・北半球を回転する円盤に置き換えてみる

 ここではまず図1のように、北半球回転する円盤に置き換えて考えてみることにしましょう。そして、次の図2のように、この円盤の中心端側に人が立っていて、キャッチボールをすることをイメージしてみましょう。この時、場が回転する影響で、ボールはどのような軌道を描くのでしょうか


図2・回転円盤上でキャッチボールをする

 円盤が回転していない場合は、そのまままっすぐに飛んでいくわけですが、円盤が回転するとちょっと複雑になりそうです。そこで簡単のため、中心の人が端側の人に向かって投げる場合を考えてみましょう。


図3・ボールの軌道を作図してみる

 ここでは、ボールがどのような軌道を描くのかについて、これを作図で考える方法を考えてみます。円盤が回転する状態で、鉛筆を中心から端側に向かって真っすぐに引いていきます。


図4・反時計回りに回転させた場合の鉛筆の描く線

 ここでは、ピッチャーがボールを投げた瞬間から円盤が反時計回りに回転した後にキャッチャーがボールを受け取る場合をイメージして、ボールの軌道を描いてみました。ボールを投げた側から見るとまっすぐに投げたつもりの筈なのに、ボールが右に逸れているように見えるのです。

 つまり、回転する円盤上では、進行方向を徐々に右向きへと逸れさせていくような力が働いているように見えるわけです。そして、この力は、実体を持たない「見かけの力」なんです。

図5・北半球上の運動する物体に働くコリオリの力

 このように、北半球上で運動する物体は、まっすぐに進もうとしていても、その進行方向は、少しずつ少しずつ、右向きに傾いているのです。このコリオリの力と、物体に働く他の力が合わさって、運動方向は次第に定まっていくのです。

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気柱の平均気温と気柱の高さ・地上気圧の関係

2015年07月30日 | お天気のあれこれ
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 大気の様子を簡単な柱に表現したものを「気柱」と言います。静力学平衡の式から層厚の式を導きますと、その式の形から「気柱の高さ(または気層の厚み)は気柱(または気層)の平均気温が高くなるのにつれて大きくなる」ということが判ります。

 このイメージを、直感的にわかりやすく図に描けないかな・・・と長年思い続けておりまして、ようやくアイデアが閃きました。
 

 左側はもとの気柱の下にさらに暖かい気柱が新たに加わることによって、その分だけ全体の平均気温は上がり気柱の高さも増しています。右側は、もとの気柱の下部にある暖かい気柱が消えて、その分だけ全体の平均気温は下がり気柱の高さも低くなっています。ここで、同じ色の塊は互いに同じ温度で同じ質量というイメージです。

 そして、地上における気圧は、その真上に乗っている気柱の重さによって生じる圧力ですので、気柱の高さが大きくなるほど、地上の気圧も大きくなるわけです。

 さて、上の図ですと、すべての塊が同じ高さに描いてありますが、実際には上空ほど気圧が低く、膨張しやすいので、こんな感じに書き改めてみます。



 ここで、左側(高温・高圧)と右側(低温・低圧)の気柱の途中に板を挟み込み、左右の板を斜めに傾く板でつなげています。この左側の柱から右側に柱に向かう一連の板上においては、気圧が等しいことから、この一連の板面を等圧面と言います。

 この等圧面が傾きが生じることを傾圧性と言い、この傾きが大きくなることを「傾圧性が大きくなる」または「傾圧性が強化される」と言います。上空に行けばいくほど、傾きが大きく、傾圧性が強化されている様子が見て取れます。

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改めてフルード数を考える・・・。

2014年10月26日 | お天気のあれこれ
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 基本的な「山越え気流」の理論解析に用いられる古典的な解析モデルとして、このようなものが知られています。


 ある高さH0[m]における等圧面を破線で表し、これを自由表面と呼びましょう。地表面付近の大気を、自由表面を境に上下2つの層に分ける二層構造で考えます。

 そして、下層の温位をθ0[K]、上層の温位をθ0+Δθ[K]であるとします。そして、左側から速度U0[m/s]の風が流入するものと考えましょう。この時、U0が大きいほど(Frが大きいほど)流れは山を乗り越えやすく、風下では「おろし」と呼ばれる強風が発生しやすいことが理論的に明らかにされております。ここでFrとはフルード数の事です。

 この「Fr数が大きい、小さい」というのは「実際の大気の状態とどのように対応するのか」を考えてみます。

 フルード数Frが実数である時、すなわち「Fr∈R (※Rは実数全体の集合)」である時、根号(√)の中の数は正でなければなりません。つまり、「g(Δθ/θ0)H0>0」となります。

 ここで、現実の問題を想定すると「U0>0 ∧ g>0 ∧ θ0>0 ∧ H0>0」となるので、Δθもまた「Δθ>0」となります。確かに、この解析モデルは、下層(θ0)よりも上層(θ0+Δθ)の温位が高い構造となっているため、安定成層「Δθ/Δz>0」となることが前提となっています。

 つまり、安定性が増すとΔθは大きくなり、分母も大きくなるので、Fr数は小さくなる一方、安定性が減ると(不安定性が増すと)Δθは小さくなり、分母も小さくなるので、Fr数は大きくなる方向にシフトしようとします。

 また、風速U0が増すと、分子も大きくなるので、Fr数は大きくなる一方、風速U0が減ると、、分子も小さくなるので、Fr数は小さくなります。

 フルード数の式の形は大気安定性(分母)と風速(分子)のバランスを「一つの物差し」で表現していると言えるのです。これを簡単に描くと・・・


 と言う事ですね。冬型の気圧配置の場合を考えると「上空の寒気が強まるにつれて、また季節風が強まるにつれてフルード数が大きくなる」という事です。

 但し、大気安定性(分母)は(1/2)乗で効いて来るのに対し、風速(分子)は1乗で効いてくるので、風速に対する感度の方がより強いと言えるでしょう。風が強いとFr数が大きく、風が弱いとFr数が小さいと言えるのも、この辺の事情が絡んでいるようにも思えます。

 ちなみに、工業熱力学や伝熱工学を学んだ方ならご存知のレイノルズ数(Re)グラスホフ数(Gr)と、フルード数(Fr)の間には「1/Fr2 = Gr/Re2という関係があります。この式を見ても風速に相当するレイノルズ数が2乗で効いているのに対し、グラスホフ数は1乗で効いていますね。なお、「1/Fr2」という形は、実際の方程式の中で適用されている形です。

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バックビルディング型の線状降水帯

2014年07月04日 | お天気のあれこれ
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 集中豪雨が発生するメカニズムとして注目されるのが「バックビルディング型」の線状降水帯です。通常、積乱雲は雨を降らせると消えますが、同じ場所で連続して発生し、上空の風に流されると、積乱雲が線状に並び、風下では雨が降り続けるのです。



(イ)すでに対流雲(積乱雲)①が存在し、活発な対流活動を伴っています。



(ロ)対流雲①は風下に流されます。また、対流雲①からは冷気外出流が吹き降りて、下層の風との間で収束します。この収束域では新たな上昇流場が形成されます。



(ハ)新たな上昇流場に伴って対流活動が活発になり、そこには新たな対流雲②が発生します。



(ニ)対流雲①と②は風下に流されます。対流雲②から冷気外出流が吹き降りて、下層の風との間で収束します。この収束域では新たな上昇流場が形成されます。



(ホ)新たな上昇流場に伴って対流活動が活発になり、そこには新たな対流雲③が発生します。



 このような過程を繰り返すことで、対流雲が連続的に発生し、上空の風によって下流側へと流されていきます。まるでベルトコンベアーに乗っている品物のようにも見えます。

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湿舌と梅雨前線

2014年07月04日 | お天気のあれこれ
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https://ameblo.jp/qq-otenki-s/entry-12897844401.html


 梅雨前線の動きも活発になってきました。  この時期になると「湿舌」と言う用語を良く聞くようになります。私もお世話になっている、日本気象学会の機関誌「天気」の2010年12月号に、新用語解説「湿舌」が掲載されています(http://www.metsoc.jp/tenki/pdf/2010/2010_12_0043.pdf)。  この「湿舌」という言葉は、高層天気図上で「梅雨前線の南側沿いに、水蒸気を多量に含む温かい気流(湿暖流)が舌状に張り出している部分」を指して言われることが多いように感じます。しかし、厳密な定義は「梅雨期の高度3km付近に現れる梅雨前線帯に沿った舌状の形をした湿潤な領域。前線帯での対流活動の結果として上空に下層の水蒸気が運ばれることで形成される」とされているようです。  この湿舌がどのようなプロセスで形成されるのか、絵に描いてみました。

(1)下層では、南側の温暖・湿潤な気団からの流れと北側の相対的に低温で乾燥した気団からの流れがぶつかるところで収束帯(梅雨前線帯)を形成されます。一方、上空では西風が流れています。

(2)下層の収束帯付近では次第に上昇流場が形成されます。

(3)収束帯の南側から、南風に乗って水蒸気が(水平方向に)輸送されます。この水蒸気はこのまま上昇流に乗って、さらに上空へと(鉛直方向に)輸送されます。これに伴って、対流雲が形成され、または発達します。

(4)下層から熱や水蒸気が持続的に供給されるため、対流雲はどんどん発達します。また、上空に昇った水蒸気は、上空の西風に乗って東側に(水平方向に)輸送されます。また、集中豪雨を引き起こす水蒸気の大半は高度約1km以下の対流混合層内に蓄えられているようです。

(5)やがて上空では、周囲よりも湿潤な領域(高相当温位域)が東西方向の帯状に形成されます。これが高層天気図では「湿舌」として現れるのです。  「湿舌が大雨をもたらす」のではなく、「湿舌の位置をもとに大雨となりやすい場所を読み解く」と考えるとわかりやすいかもしれませんね。

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「モデル」とは何か? 物理学的なモノの見方・考え方

2014年06月28日 | お天気のあれこれ
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 さて、今日は「物理学的なモノの見方・考え方」について書いてみようと思います。



 今、目の前である現象が起こりました。何が起こったでしょう・・・木からリンゴが落ちましたね。サルじゃないですね。「あ、木からリンゴが落っこちた・・・。」ただ、それだけです。

 しかし、物理的には「リンゴには下向きの力が働いた」と考えます。さらに、「リンゴと地面が互いに引き合ったのでは・・・」と思考が広がります。それはやがて「地球とリンゴの間には引力が働いている」というイメージに発展します。このイメージを「概念モデル」と言います。

 今度はリンゴや地球のパラメータを設定してみます。すると、何気ないイメージから「数式」が導かれました。これが「数理モデル」です。学生時代のあの物理の教科書は、この一連のプロセスを繰り返しているのです。



 つまり、モデルというのは「目の前の自然現象の構造やメカニズムを、どのように理解し、どのように認識するのか?」その表現なんです。頭の中で理解したイメージを整理して、頭の外に取出し、具体的な「模型」の形に表現したものなんです。

 ちなみに、この考え方は「物理の授業で何を学ぶか? 数学と物理と「モデル」の関係」で詳しく述べています。

 このように、局地気象のなぜ?どうして?を数学と物理の言葉で解き明かし、それを実際の局地予報に活かしていくのが私のフィールドです。


 さて、たまに「気象庁などの現業モデルがあるのに、独自の数値モデルを開発する意味があるのか?」との意見を頂きます。これは「一人の「工学屋」のポジションから「局地気象」に向き合う」でも述べておりますが、そもそも気象庁などの現業モデルと、私の取り組みは、一見似ているようでいて、実はポジションが根本的に異なります。


 気象庁を始めとする行政機関や研究機関の研究の積み重ねや気象予測モデルによる数値シミュレーションの結果は、気象庁の観測・解析・予報といった専門的なデータ(マテリアル)という形で、(一財)気象業務支援センターを経由して、民間気象会社に提供されます。

 そして、民間気象会社ではこれらのデータをさらに分析することで、独自の予報を行います。そのためには、対象となる地域の気象の特徴について、より深い知識や理解が必要となりますので、様々なデータや資料の分析、さらに長年にわたっての研究の積み重ね、独自のモデルの形に表現して、これを活用します(プロセス)。

 その結果、ユーザーに提供された独自予報は、実際の様々なシチュエーションで意思決定・判断の材料として活用されるのです(アプリケーション)。

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天気予報や局地予報はどのように行われるのか

2014年06月27日 | お天気のあれこれ
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 まずは一般的な天気予報の流れとして、気象庁の天気予報について紹介します。気象庁の予報は大きく分けて、観測解析予想から構成されます。


 始めは「観測」です。人工衛星気象レーダー、そしてアメダスは天気予報でもお馴染みですね。そして、ラジオゾンデ・・・これは気温や気圧などの観測器を風船にくっつけて空に放ってしまうものなんです。風船と一緒にフワフワと空高く舞い上がっていくのに伴い、上空の大気の状態を時々刻々と観測しながら、その情報を地上に送信し続けるのです。このような様々な観測が世界中で行われています。

 次は「解析」です。世界中で観測されたデータは、気象庁内部のスーパーコンピューターに集められます。このコンピューターの中には、バーチャル地球が構築されていて、この観測されたデータを基に、その時の地球上の大気の状態を再現します。さらに、その状態から「ヨーイ、ドン!」で、これから先の未来に向かってどんなふうに動いていくのかを計算してしまうんです。この結果は、予想天気図など様々な気象予測データとしてアウトプットされます。

 そして、いよいよ「予想」の段階です。様々な観測データスーパーコンピューターの解析結果を基に、予報官が分析して、予報の内容を検討します。その結果が、「明日は晴れ時々曇り、所によって一時にわか雨」のような天気予報や、注意報・警報などのような形で発表されるわけですね。

 そしてその先には、局地予報があります。


 先ほどの気象庁の観測・解析・予報といった専門的なデータは、こちらの(一財)気象業務支援センターを経由して、民間気象会社に提供されています。

 そして、これらのデータをさらに分析することで、独自の予報を行うわけです。予報を行うためには、対象となる地域の気象の特徴について、より深い知識や理解が必要となりますので、様々なデータや資料の分析、さらに長年にわたっての研究の積み重ねが大きくモノを言います。

 「予報」とは「決断」です。より良い「決断」を行うためには、より深く局地気象を学ぶことが必要です。ですから、私は、一人の「工学屋」として「局地気象」にアプローチしています。


 私の専門分野は「コンピューターによる計算気象シミュレーション」です。これは物理学の理論に基づいて、コンピューターの中に「地形や大気の模型」を作り上げて、バーチャルな実験をするものです。この模型のことを、私たち気象屋は「モデル」と呼んでいます。

 実は、このモデルの正体は膨大な数の計算式です。言って見れば、このようなモデルというのは数学や物理学の集大成と言っても良いかもしれません。

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「気象会社」と「お天気ビジネス」って何?

2014年06月26日 | お天気のあれこれ
 「マーケット・イン」の気象情報を考えるで書いたことです。



 これは予報業務許可事業者の全国分布です。この、予報業務許可事業者というのは、いわゆる気象会社の事です。実は、独自の予報を行うためには、予め気象庁に申請して許可をもらっておく必要があります。この許可をもらって独自予報を行うことのできる事業者が、全国にどれだけあるのか?それを都道府県別に集計したのがこちらの図なんです(ちなみに今年の4月1日の時点でのものなので、今では少し情勢が変化しています)。

 これを見ると、都道府県毎に概ね均等に散らばっているような感じですが、関東地方を拡大してみますと東京都だけなんと21事業者。本当に首都圏に密集しているんですよね。全国に60近い気象事業者がありますが、その半数は首都圏に密集しているようです。

 一口に「予報業務許可事業者」だの「気象会社」だのと言いましても、みんながみんな金太郎飴のようなビジネスを展開しているわけではありません。お医者さんも、内科の先生、外科の先生、皮膚科の先生・・・と様々な分野の先生がいらっしゃいます。その中でもさらに例えば、外科と一口に言っても、心臓外科、脳外科、美容整形外科、など色々な専門分野に分かれていますね。

 実は気象会社も似たようなところがありまして、それこそ「総合病院」のように何でもやります!ってな所もあれば、敢えて特定の分野に絞って独自の専門分野を掲げているところがあります。また、予報の対象地域についても、日本全国どこでもカバーしていますってな所もあれば、地元密着型で特定のエリアに限定して事業を展開する所もあります。それをまとめたのがこちらの表です。


 気象にかかわる分野は多岐にわたっていますが、それらを全部ひっくるめてやる!ってのが左半分のグループ、一方で特定の分野に絞って・・・というのが右半分のグループ。特定の分野というのは、例えば、落雷に特化するとか、サーファー向けの波の予報だとか、登山者向けの山の天気であったり、冬であれば雪の情報だったりします。

 また、範囲をどこまで広げるか・・・という所で、全国どこでも見ますよ!ってな上半分のグループもあれば、特定地域の地元密着!ってな下半分のグループがあります。

 要は「事業を手広く広げるのか」、それとも「範囲を限定してそこに集中するか」の違いですね。全国の60近い事業者の多くは、何らかの専門分野を持っています。自分の得意分野を定めた上で「ニッチ市場」を狙っていく、そんな一種の「ランチェスター戦略」をとっているようです。


 難しい概論の後は、ちょっと身近な話題に移りましょう。
 今はまだ梅雨なんですが・・・ちょっとだけ「夏」の話題になっちゃいます。


 夏と言えば・・・やっぱり・・・「暑い!」ですよね。私にとって、夏の楽しみの一つがコレなんです。暑いとやっぱり欲しくなるのが「アイスクリーム」なんです。

 それでは、気温が高くなればなるほどアイスクリームは売れるのか・・・と思って、調べてみたのですが、どうやら23℃から27℃の辺りがピークのようです。それ以降はアイスクリームにとって代わってかき氷の売れ行きが伸びるようです。こちらのピークは28℃から32℃の辺りのようです。

 こんな風に、気象条件によって売れやすい商品も変わってくるんですね。

 と、言うわけで、天気の変化によって、来客数や売れ筋の商品が変わってきます。それなら、事前に来客数や売れ筋の商品を予想して、発注すれば良いじゃないか?という発想につながります。


 事前の気象予測を基にして、お客さんがたくさん来てくれそうだ、こんな商品がいっぱい売れる、って分かったらその品物をいっぱい発注して、いっぱい売って、売上アップが見込めます。また、お客さんが少なそうだな、あまり商品も売れないな・・・ってことが分かっていたら、発注量を調整して、廃棄ロスを減らすこともできるでしょう。

 このように、販売量と天候の相関関係を分析・予測して、生産・出荷・在庫管理や販売促進に活用することを、「ウェザー・マーチャン・ダイジング」と言います。

 かくいう私も学生時代に、とあるコンビニでアルバイトをしたことがありまして・・・発注も担当しましたが・・・これが、なかなか難しいもんですね・・・。


 続いては、夏には欠かせないビールのお話です・・・と言いつつ、かくいう私は「下戸」でございます。それはさておき、夏物の商売は基本的に「暑い夏」を想定して販売計画を立てることが多いかと思います。


 しかし、近年・・・どうでしょう?冷夏の年もありますよね。

 こうなってくると、暑い夏を期待して売り上げの予算を立てていたのに、冷夏になっちゃったので思うように売り上げが伸びなかった・・・ってことにもなりかねません。そんな事態に備える保険があるんです。

 冷夏・暖冬などの気候変動による企業の減収を補償する金融商品で、事前に一定の契約料を支払って、異常気象が発生したら、その補償金が支払われる仕組みを「ウェザー・デリバティブ」と言います。

 これは普通の損害保険とは異なりまして、実際の損害発生の有無に関わらず、予め設定した異常気象が発生したら、補償金が払われるので、実際には金融商品として扱われるようです。


 最後に、気象台と民間の予報って何が違うの?というお話に移ります。正直な話、この手の質問が実に多いんですね。

 簡単に言いますと、従来の天気予報の形はどちらかというと「プロダクト・アウト」に近いのに対して、民間の情報は「マーケット・イン」です。と言いますのも、民間の場合はクライアントとのコミュニケーションを重ねながら情報の形を作り上げていくからなんですね。

 まとめると・・・

【プロダクト・アウト(気象庁など)】
・情報のサプライヤー側がコンテンツの内容や形式を企画・検討して、広く国民全体に提供する。
・国民誰もが同じ内容の情報を受け取ることができる。

【マーケット・イン(民間)】
・個々のクライアントの要望やニーズに基づいて、気象データやメニューを処方し、コンテンツの内容を企画して提供する。
・オーダーメードのカスタマイズや本当に必要な領域の詳しい情報をクライアントとのコミュニケーションを通じて、二人三脚でコンテンツを作り上げていく。

 どちらが良いとかではなく、両者の違いを良く理解した上でお付き合いを頂ければと思います。

 私の勝手な感想ですが、気象情報に対する意識の高まりや、知識の理解が広まっていくのに伴って、潜在的なニーズが顕在化し、具体的なマーケットになっていくものと感じております。その意味では、未だ気象ビジネスのマーケットは未成熟な段階にあり、本格的なビジネスチャンスが訪れるのは、もう少し先になるのかな・・・と言うのが正直な所です。

 マーケットの拡大はもとより、より多くの皆様が気象情報の恩恵を受けられるようになるためには、気象現象や気象情報に関する知識の理解を広める事が必要(むしろ、こちらが優先事項?)なのではないかと思うのです。

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北極振動とは何ぞや?

2013年11月29日 | お天気のあれこれ
【※】gooブログのサービス終了に伴い、アメーバブログに移転しています。
https://ameblo.jp/qq-otenki-s/entry-12897844227.html

北極振動とは、北極付近と中緯度の地上気圧が互いにシーソーのように変動する現象です。  北極付近の地上気圧が平年よりも高い時には中緯度の地上気圧が平年よりも低くなり、その一方で北極付近の地上気圧が平年よりも低い時には中緯度の地上気圧は平年よりも高くなります。このような振動は、特に極夜ジェット気流の強弱と関係があることが知られています。  前者の「北極付近の地上気圧が平年よりも低く、中緯度の地上気圧は平年よりも高くなる」場合を「AOプラス」と言います。AOプラスの状態では、極夜ジェット気流が強く、その流れはゾーナル・タイプ(東西流型)になりやすいため、北極付近に寒気が蓄積されていきます。



 一方、上記とは反対の「北極付近の地上気圧が平年よりも高く、中緯度の地上気圧は平年よりも低くなる場合」を「AOマイナス」と言います。AOマイナスの状態では、極夜ジェット気流が弱くなり、その流れはメリディオナル・タイプ(南北流型)となるため、北極付近に蓄積された寒気が、中緯度地方に向かって放出されます。



 つまり、「AOマイナス」の時には、北からの寒気の南下が顕著になりやすく、状況次第では日本海側で豪雪に見舞われやすい、言う事なのです。  北極付近と中緯度との間では、このような「AOプラス」と「AOマイナス」の状態を交互に行きつ戻りつしているのです。  気候変動については色々な見解がありますが、その中には地球温暖化に伴う海面水温の上昇が上空の偏西風の蛇行を促進するという見方もあるようです。もしそうだとすると、偏西風の蛇行がより一層大きくなると(メアンダー増大)、北極振動の影響がより顕著に現れやすくなると考える事もできます。



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偏西風波動と温帯低気圧

2013年11月28日 | お天気のあれこれ
【※】gooブログのサービス終了に伴い、アメーバブログに移転しています。
https://ameblo.jp/qq-otenki-s/entry-12897844223.html


 昨日の記事の続きです。

 ジェット気流は、北からの寒気と南からの暖気との間に生じる南北の温度コントラストの強化によって形成されます。この温度コントラストが強まっていくにつれて、(有効)位置エネルギーが蓄積されていきます。

 これはこの領域の大気が徐々にストレスを溜め込んでいくようなものです。ストレスが少なければ、ジェット気流の流れ方も下図のような東西流(ゾーナル・タイプ)となります。



 しかし、ストレスが溜まりすぎると、偏西風はこんな感じで大きく南北に波を打って運動し、ストレス解消を図ります。この状態を南北流型(メリディオナル・タイプ)と言います。

 このように(有効)位置エネルギー(有効渦)運動エネルギーに変換する事で、偏西風波動が形成されます。


 偏西風波動の北側に凸になる部分をリッジ、南側に凸となる部分をトラフと言います。リッジでは南側の暖気が北側に流れ込もうとするのに対し、トラフでは北側の寒気が南側に流れ込もうとします。

 次の図で、偏西風波動の立体的な構造を模式的に考えてみましょう。



 左側の上空トラフの中心では反時計回りに流れが集まるので(上昇収束)、集まった空気は下に流れて下降気流となり、地上に達すると時計回りに吹き出します(下層発散)。この形は高気圧になります。

 その一方で、右側の上空リッジの中心では時計回りに空気が吹き出します(上層発散)。これは下層から昇ってくる流れ(上昇気流)があるためです。地上では反時計回りに周囲の空気が流れ込んでおり、この集まった空気が上方へと移動しているのです。この形は低気圧になります。

 こうして、上層と下層は連動している事が理解できます。上の図における考察から、トラフは寒気の下降流場、リッジは暖気の上昇流場に対応することが理解できます。

 さて、偏西風波動は、南側からの暖気と北側からの寒気の接触に伴って形成されます。この暖気と寒気の接触面を前面と言います。ちなみに、前面と地表面が交わる領域を前線と言います。

 前面を境界面にして、その前方で暖気の上昇流場、後面で寒気の下降流場が顕著になると、地上の前線上では反時計回りの渦が発生し、やがてこれが温帯低気圧として発達して行きます。

 従ってこの図は、温帯低気圧が発達する構造を模式的に表したものになるのです。

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