計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

「モデル」とは何か? 物理学的なモノの見方・考え方

2014年06月28日 | お天気のあれこれ
 さて、今日は「物理学的なモノの見方・考え方」について書いてみようと思います。



 今、目の前である現象が起こりました。何が起こったでしょう・・・木からリンゴが落ちましたね。サルじゃないですね。「あ、木からリンゴが落っこちた・・・。」ただ、それだけです。

 しかし、物理的には「リンゴには下向きの力が働いた」と考えます。さらに、「リンゴと地面が互いに引き合ったのでは・・・」と思考が広がります。それはやがて「地球とリンゴの間には引力が働いている」というイメージに発展します。このイメージを「概念モデル」と言います。

 今度はリンゴや地球のパラメータを設定してみます。すると、何気ないイメージから「数式」が導かれました。これが「数理モデル」です。学生時代のあの物理の教科書は、この一連のプロセスを繰り返しているのです。



 つまり、モデルというのは「目の前の自然現象の構造やメカニズムを、どのように理解し、どのように認識するのか?」その表現なんです。頭の中で理解したイメージを整理して、頭の外に取出し、具体的な「模型」の形に表現したものなんです。

 ちなみに、この考え方は「物理の授業で何を学ぶか? 数学と物理と「モデル」の関係」で詳しく述べています。

 このように、局地気象のなぜ?どうして?を数学と物理の言葉で解き明かし、それを実際の局地予報に活かしていくのが私のフィールドです。


 さて、たまに「気象庁などの現業モデルがあるのに、独自の数値モデルを開発する意味があるのか?」との意見を頂きます。これは「一人の「工学屋」のポジションから「局地気象」に向き合う」でも述べておりますが、そもそも気象庁などの現業モデルと、私の取り組みは、一見似ているようでいて、実はポジションが根本的に異なります。


 気象庁を始めとする行政機関や研究機関の研究の積み重ねや気象予測モデルによる数値シミュレーションの結果は、気象庁の観測・解析・予報といった専門的なデータ(マテリアル)という形で、(一財)気象業務支援センターを経由して、民間気象会社に提供されます。

 そして、民間気象会社ではこれらのデータをさらに分析することで、独自の予報を行います。そのためには、対象となる地域の気象の特徴について、より深い知識や理解が必要となりますので、様々なデータや資料の分析、さらに長年にわたっての研究の積み重ね、独自のモデルの形に表現して、これを活用します(プロセス)。

 その結果、ユーザーに提供された独自予報は、実際の様々なシチュエーションで意思決定・判断の材料として活用されるのです(アプリケーション)。
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