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オーバー・フェンス ★★★★

2016年09月23日 | アクション映画ーア行
近年再評価が進む不遇の作家・佐藤泰志の小説を、大阪芸術大学出身の気鋭監督で映画化する「海炭市叙景」「そこのみにて光輝くに続く“函館三部作”最終章。人生に挫折し、将来の展望のないままに孤独で無気力な日々を送る主人公が、キャバクラで働くヒロインや職業訓練校の仲間たちと織りなす不器用な交流を通して少しずつ変わっていく姿を描き出す。主演はオダギリジョー、共演に蒼井優、松田翔太。監督は苦役列車」「>味園ユニバースの山下敦弘。
あらすじ:妻子と別れ、故郷の函館に戻り、職業訓練校に通いながら失業保険で暮らす男、白岩。訓練校とアパートを往復するだけの毎日で、すっかり生きる意味を見失っていた。そんなある日、同じ訓練校に通う代島に連れて行かれたキャバクラで、聡という男みたいな名前のホステスと出会う。昼間は寂れた遊園地でバイトし、鳥の動きを真似て踊るこの風変わりなホステスに急速に惹かれていく白岩だったが…。

<感想>同じ原作者の前2作の気取りと名作志向は感じられなかった。作品を山下敦弘監督が自分の世界にしているのも良かった。舞台となる函館の灰色の空を、数羽のカモメが飛んでいる。空が曇るのは鳥が飛ぶ時だけのようだ。晴れやらないのはオダギリジョー演じる白岩の心のようだ。

だが、傍目にはそうは見えない、職業訓練校では白岩は静かな雰囲気の兄貴分のイメージであり、仲間から慕われているようだ。何処へ行くにも自転車で移動する。
主人公は引っ越してきて3か月も経つのに、段ボールはそのまま開けていない。そこへ妹の旦那がやって来て、存在感も隠し味的に効いている。主人公のことを、実家の父親とか心配しているのだ。

職業訓練校のやるきの感じられない建築課の訓練の後で、決まってソフトボールの練習をするのだが、こちらもやるきのなさが感じられるのだ。若い教官にしてみれば、みんなのチームワークを図るための運動なのだろう。

ここへ通っている生徒たちは、経歴も年齢もバラバラな連中に、大工や自動車修理工の技術を習得させることを建て前とした場の、生徒と教官双方を覆う独特の倦怠感が感じられるのだ。中には定年退職者の年齢の人もいるし、みんなどういうわけか喫煙所でたばこを吸いながら飲み屋の女の話とかしている。
しかし、大人同士なのに、いい年をして弱いもの虐めみたいに、やる気のない大学中途出の男を教官からして、ダメ人間とハンを押したように決めつけ、だからなのか、生徒たちもみなその男を阻害して仲間外れにしてしまう。その男、森が精神的にキレてしまう場面では、ソフトボール大会では外されて見物状態に、そして教官を襲う森くんの行動に驚き、みんなが止める。結局は、彼は退学となるのだ。

そして、松田翔太演じる代島が白岩をキャバクラに誘う。つまり、彼はそのキャバクラの店長として働くことを決めているも、白岩を副店長として一緒に働かないかと誘って来る。

そこで働いている女、聡が店の中で機嫌のいい時には、鳥の求愛ダンスの真似をしてはしゃぐという特異な存在が強調されている。

この聡という女を演じているのが、蒼井優であり情緒不安定で鬱病らしく、白岩が結婚指輪をはめていることや、別れた妻と会って泣いていたりすることに過剰に反応し、鬼の形相をして暴力的であり、破壊的な行動に出るのだ。

それに、白岩を自分の部屋に招き入れ、暗い台所で全裸になり体を洗う姿とか、ここでは奇怪なふるまいを通して、危うい傷つきやすい魂を抱えている女を演じて上手いのだ。

そんな危ない女、聡を好きになり、失業保険で暮らしている中年男の白岩のいい加減さも含めて、将来性もまったく感じられないし、そういう絶妙な距離感というか、別れた妻の優香との久しぶりの逢瀬。喧嘩別れをしても、幼い女の子がいる元夫婦。妻が指輪を返してくれ、自分はまだ未練たらしく指輪をしている白岩の男心(ここでさめざめと泣く白岩)も垣間見えて良かった。
タイトルの意味が最後に判明するのだが、ソフトボール大会のことであり、大負けに負けていたのに、白岩がホームランをかっ飛ばすその瞬間の感銘には、分かっているのに衝撃を受けた。これは、白岩がウジウジしていた今までの生活に決着をつけるという意味もあるかと、そう思ってならない。

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