パピとママ映画のblog

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弁護人 ★★★・5

2016年12月14日 | アクション映画ーハ行
後に韓国大統領となった盧武鉉の弁護士時代の実話を映画化した社会派ドラマ。税務弁護士として経済的な成功を手にした主人公が、国家の横暴を目の当たりにして社会正義に目覚め、公安に不当逮捕された若者を救うべく、たった一人で国家に果敢に戦いを挑む姿を描く。主演は「渇き」「スノーピアサー」のソン・ガンホ、共演にキム・ヨンエ、イム・シワン。監督は、これが長編デビューのヤン・ウソク。
あらすじ:高卒ながら猛勉強の末に司法試験に合格し判事となったソン・ウソク。しかし学歴もコネもなく、横行する差別の前に出世の道は閉ざされ、やむなく弁護士に転身した彼は、未開拓の分野である不動産登記業務に目を付け、大金を荒稼ぎする。そんなある日、なじみの食堂の息子ジヌが突然公安当局に逮捕され、相談を受けたウソクがようやく拘置先を突き止め面会してみると、ジヌの身体に無数のアザを発見する。衝撃を受けたウソクは、国家を相手にジヌの冤罪を晴らすべく、彼の弁護を引き受けるのだったが…。

<感想>韓国では2013年の年末に公開され、大ヒットを記録したソン・ガンホ主演の社会派ドラマ。ソン・ガンホが演じるのは、釜山で最も成功した税務弁護士のソン・ウソクのお話。学歴もコネもないのに必死でのし上がってきた彼は、相棒のドンホ事務長(オ・ダルス)と全国区デビューを目指す。

しかし、かつて世話になった食堂のおばちゃんの息子が、不当逮捕されたことを知り、拘置所へ面会に行ったウソクは、そこで警察による残忍な拷問の跡を目の辺りにする。
本作品は、1981年に起きた「釜林事件」をモデルにしている。民主化運動弾圧のために、司法当局が事件を捏造して、22人の被疑者を強制連行する。拷問によって自白を強要した悪名高き冤罪事件でもあります。

このとき、被告側の弁護を務めていたのが、駆け出し時代のノ・ムヒョン元大統領。ヤン・ウソク監督はその逸話を基に、人権派として目覚めていく弁護士の孤軍奮闘をさりげなく力強いタッチで描いていく。つい30年ほど前までは、韓国は軍事政権だったと言うことで。

弁護士時代のノ・ムヒョン元大統領が、大学生の冤罪を晴らすために奮闘する裁判劇でもある。危険分子の烙印を押された若者を弁護したことで、主人公も「非国民」と罵られる。今の日本でも在り得る話でもある。

何といっても最高なのは、ウソクの同級生である新聞記者役のイ・ソンミンが上手い。普段では、ウソクの俗物ぶりを批判しながら、暴徒に汚されたかれの上着とシャツを、こっそり裁判所のトイレで交換してやるシーンには、思わず涙が零れ落ちるシーンでもあり、名場面でもある。

韓国映画の情の濃さが、ここでは時代の非情さを際立たせているのだが、劣勢だった弁護士が反撃に転じる場面の、躍るようなキャメラ・ワークの興奮。裁判長、検事、軍人など悪役陣の憎々しさぶりも、型通りとはいえ、当時の政権の怖さと手ごわさを彷彿とさせているのも最高です。

貧乏脱出にしか興味のないソン・ガンホ扮する高卒の弁護士が、拷問を受けた思想犯の弁護を引き受けたのをきっかけに、社会正義に目覚めていくのだ。学のない田舎者が正義に目覚め、やがては大事を成すという、暗い時代をコメディ舞台へと転化して見せるのだから。
1970年代後半から、80年代にかけての韓国の空気がとても良く出ているのではないかと思う。後半部分では、政治色が強まっていくが、当時の風俗史を辿れる点でもなかなか興味深い作品になっている。
主演のソン・ガンホが、人懐っこい笑顔で俗物を演じる前半も楽しいですが、後半部分の法廷シーンで見せるシリアスな表情からも目が離せません。正義に目覚めた相方に振り回されるオ・ダルス。国家の暴力装置として容赦なく主人公を追い詰める刑事役のクァク・ドウォン他、脇を固めるキャストも充実していて良かった。
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