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デトロイト★★★・5

2018年02月13日 | アクション映画ータ行

キャスリン・ビグロー監督が「ハート・ロッカー」「ゼロ・ダーク・サーティ」に続いて再び脚本にマーク・ボールを迎え、1967年の“デトロイト暴動”のさなかに起きた衝撃の事件を映画化し、今なお続く銃社会の恐怖と根深い人種対立の闇を浮き彫りにした戦慄の実録サスペンス。黒人宿泊客で賑わうモールを舞台に、いたずらの発砲騒ぎがきっかけで、警察官に拘束された黒人宿泊客たちを待ち受ける理不尽な悲劇の一部始終を圧倒的な臨場感で描き出す。主演は「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」のジョン・ボイエガと「メイズ・ランナー」のウィル・ポールター、共演にアルジー・スミス、ジョン・クラシンスキー、アンソニー・マッキー。

あらすじ:1967年7月、デトロイト。黒人たちによる暴動が激化し、鎮圧に乗り出した軍や地元警察との衝突で街はまるで戦場と化していた。そんな中、運悪く暴動に巻き込まれ身動きできなくなった人気バンド“ザ・ドラマティックス”のメンバー、ラリーが宿泊していたアルジェ・モーテルで銃声が鳴り響く。それは黒人宿泊客の一人がレース用の空砲をふざけて鳴らしたものだった。しかし、それを狙撃手による発砲と思い込んだ大勢の警察官がモーテルになだれ込んでくる。やがて、偶然居合わせただけの若者たちが、白人警官のおぞましい尋問の餌食となっていくのだったが…。

<感想>1967年の夏、デトロイトの暴動のさなかに起きた、あるモーテルでの悲劇的な実話が、史実に映像化されたフィクションである。外出禁止令のためモーテルの中で若者たちがパーティを楽しんでいる最中、無邪気に発砲されたオモチャのピストル(スターターピストル)の音により、警察が突入する。その場にいた若者たち、多数は黒人たちが尋問を受け、と言うよりも暴行して、やがてはそれがエスカレートし、白人警官による“死のゲーム”が3人の黒人の青年を殺す惨劇へと至る。

映画は冒頭、アメリカ黒人の歴史をダイジェストで伝えるアニメーションで幕を開けた後、デトロイトの暴動に話が移るや、あっという間に観客をその渦中に引きずり込む。モーテルに警官たちが侵入してからは、ホラー映画よりも恐ろしいリアルな恐怖を目の当たりにする。

ピグロー監督はこれまでもこうした鬼気迫るドキュ・ドラマの手法を用いてきたが、本作でも何台ものカメラを用いて畳みかけるような展開の中で悪夢のような光景を見せてくれる。

最初のうちは腐敗的に暴動を捉えていくのかと思っていると、途中からは場所も時間も限定され、殆ど耐え難くなるほどの緊張感が画面を満たすのだ。

「これは人間のすることではない。こんなことが決して起こらないようにするために、戦わなければならない」と言う監督。確かに映画は強烈に映し出し、暴力を描くことは暴力そのものだ、という批判が上がるのも理解できなくはない。でも、もっと大切なのは、あの事件の真相をより多くの人に知ってもらうことだというのだ。

だが、本当に「デトロイト」が素晴らしいのは、暴動の夜の“その夜”を描く部分である。そこには正義が果たされるカタルシスも、救済の癒しも存在しないからだ。その後に白人警官たちが黒人を射殺したことで、裁判に掛けられるも、全員無罪となる。

「それでも夜は明ける」「グローリー明日への行進」「ドリーム」など黒人差別をテーマにした優れた作品が現在もつくられ続けている。中でもホラー/コメディ/ファンタジーとジャンルを越境することで人種差別の真実を描く「ゲット・アウト」そして、「カラーパープル」が白人からだけでなく黒人男性からも差別される黒人女性の立場を描いていたように、黒人であること、二重の差別の対象となる要素を持った主人公を描いた「ムーンライト」などは、特に収穫といえよう。

ラストで提示されるのは、正義と救済への祈りなのである。祈りの歌声が、過去のことだから、外国のことだからと、心に響かなくなるのが理想なのかもしれません。ですが、まだまだ、私たちの心に響き揺さぶるのであります。

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