第2次世界大戦下のパリを舞台に、街を守りたいスウェーデン総領事と街の破壊命令を受けたドイツ軍将校との心理戦を描いたヒューマンドラマ。『ブリキの太鼓』などのフォルカー・シュレンドルフがメガホンを取り、フランスでヒットした舞台を映画化。ドイツ軍将校を説得するスウェーデン総領事に『恋するシャンソン』などのアンドレ・デュソリエ、妻子を人質に取られて作戦を実行するしかないドイツ人将校に『預言者』などのニエル・アレストリュプがふんする。緊迫した展開と、舞台でも同役を演じたベテラン俳優の重厚な演技に圧倒される。
<感想>第二次大戦末期、パリの破壊を命じられた男と、パリを救おうとした男の駆け引きを描いたドラマ。
1945年8月25日。連合軍がパリに迫る中、ドイツのパリ占領司令官コルティッツ将軍は、ヒトラーからパリのノートルダム大聖堂などの世界的な建築物を破壊することを命じられていた。それを阻止しようと現れたのが、パリ生まれのスウェーデン総領事のノルドリンク。
二人の一歩も譲らない緊張した会話で幕を開ける。
コルティッツ将軍は、ヒトラーの命令に背けば家族が処刑されるため、実行せざるを得ないと語る。だが、そこへ部下からの連絡が入り、起爆装置が破壊されたというのだ。
さらには、ベルリンのヒムラー長官からの伝言で、美術品を確保するように新たな指令が入るのだ。この期に及んで、ベルリンは何を考えているのか。コルティッツ将軍の心は揺れる。
その時、持病の喘息の発作がコルティッツ将軍を襲うのである。スウェーデン総領事のノルドリンクは、コルティッツを倒すチャンスにもかかわらず、薬を与えて彼を救うのだ。
さらに、コルティッツの家族の安全も保証するとまで語るのだ。コルティッツはあくまでもヒトラーの命令を実行してしまうのだろうか?・・・。
パリ防衛司令官コルティッツを演じたニエル・アレストリュプと、スウェーデン総領事のノルドリンクを演じたアンドレ・デュソリエ。二人の名優による戯曲の緊張感をそのまま映像に移し、一瞬たりとも目の離せない演技力に拍手もんですから。
ヒトラーがベルリンを空爆された報復に、愛するパリの街を破壊することをコルティッツ将軍に命ずる、その屈折した心理が、サスペンスを生むのです。それを阻止しようとするスウェーデン総領事のノルドリンク。
舞台劇がもとになっているだけに、二人の駆け引きは心理的で、台詞ややりとりも巧妙です。劇中のほとんどがホテルの一室ながら、飽きるどころか2人のベテラン俳優の名演ゆえに、その場面にのまれてしまいました。
戦後70年、戦争は人間を殺傷するばかりではない。都市を、その記憶を、破壊するものでもあります。パリの街並みのシャンゼリゼ、ルーヴル美術館、モンパルナス、エッフェル塔、オペラ座、セーヌ河の両岸を画家たちが埋め尽くす光景。ステンドガラスのバラ窓が綺麗な、ノートルダム大聖堂などの世界的な建築物を破壊する計画を立てていたなんて。
老練の極みをみせる対話劇のさなかに、こぼれる地名の星座に、かつてそこで撮られたいくつものフィルムに想いを馳せてしまった。あの日パリが燃えていたならば、これからも旅行に行くであろうパリの街並みの美しさを、見ることは出来なかったと思うと身震いする想いである。
この映画を見て、一層に生々しくその空間や、1944年という歴史上の出来事を体感して、美しいもの、魅惑的なものが持ち得る力、そして、現代、土地も建物もお金が神様で、入手も破壊も自由な怖さが、・・・優れた歴史劇は現代を想わせてやまない。
2015年劇場鑑賞作品・・・98映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
<感想>第二次大戦末期、パリの破壊を命じられた男と、パリを救おうとした男の駆け引きを描いたドラマ。
1945年8月25日。連合軍がパリに迫る中、ドイツのパリ占領司令官コルティッツ将軍は、ヒトラーからパリのノートルダム大聖堂などの世界的な建築物を破壊することを命じられていた。それを阻止しようと現れたのが、パリ生まれのスウェーデン総領事のノルドリンク。
二人の一歩も譲らない緊張した会話で幕を開ける。
コルティッツ将軍は、ヒトラーの命令に背けば家族が処刑されるため、実行せざるを得ないと語る。だが、そこへ部下からの連絡が入り、起爆装置が破壊されたというのだ。
さらには、ベルリンのヒムラー長官からの伝言で、美術品を確保するように新たな指令が入るのだ。この期に及んで、ベルリンは何を考えているのか。コルティッツ将軍の心は揺れる。
その時、持病の喘息の発作がコルティッツ将軍を襲うのである。スウェーデン総領事のノルドリンクは、コルティッツを倒すチャンスにもかかわらず、薬を与えて彼を救うのだ。
さらに、コルティッツの家族の安全も保証するとまで語るのだ。コルティッツはあくまでもヒトラーの命令を実行してしまうのだろうか?・・・。
パリ防衛司令官コルティッツを演じたニエル・アレストリュプと、スウェーデン総領事のノルドリンクを演じたアンドレ・デュソリエ。二人の名優による戯曲の緊張感をそのまま映像に移し、一瞬たりとも目の離せない演技力に拍手もんですから。
ヒトラーがベルリンを空爆された報復に、愛するパリの街を破壊することをコルティッツ将軍に命ずる、その屈折した心理が、サスペンスを生むのです。それを阻止しようとするスウェーデン総領事のノルドリンク。
舞台劇がもとになっているだけに、二人の駆け引きは心理的で、台詞ややりとりも巧妙です。劇中のほとんどがホテルの一室ながら、飽きるどころか2人のベテラン俳優の名演ゆえに、その場面にのまれてしまいました。
戦後70年、戦争は人間を殺傷するばかりではない。都市を、その記憶を、破壊するものでもあります。パリの街並みのシャンゼリゼ、ルーヴル美術館、モンパルナス、エッフェル塔、オペラ座、セーヌ河の両岸を画家たちが埋め尽くす光景。ステンドガラスのバラ窓が綺麗な、ノートルダム大聖堂などの世界的な建築物を破壊する計画を立てていたなんて。
老練の極みをみせる対話劇のさなかに、こぼれる地名の星座に、かつてそこで撮られたいくつものフィルムに想いを馳せてしまった。あの日パリが燃えていたならば、これからも旅行に行くであろうパリの街並みの美しさを、見ることは出来なかったと思うと身震いする想いである。
この映画を見て、一層に生々しくその空間や、1944年という歴史上の出来事を体感して、美しいもの、魅惑的なものが持ち得る力、そして、現代、土地も建物もお金が神様で、入手も破壊も自由な怖さが、・・・優れた歴史劇は現代を想わせてやまない。
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