軌道エレベーター派

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OEV豆知識(9) 図解その6 低・中軌道部

2009-05-26 03:32:53 | 軌道エレベーター豆知識
 左の写真は、東京湾アクアラインの「海ほたる」です。海ほたるは東京湾の中央部に浮かぶ人工島で、アクアラインの海底トンネルと海上橋の結節点です。建設中は海底トンネルを掘るシールドマシンの発進基地だったものを、完成後はドライブインとして利用しています。

 今回の豆知識は軌道エレベーター(OEV)の低・中軌道部について。なぜ、いきなり海ほたるの話から入ったのかというと、低軌道ステーションを既存の何かに例えると、この海ほたるのような場所になるのではないかと考えたからです。

 厳密な境界線がないのでいま一つ区別はあいまいなのですが、低軌道というのはだいたい高度約300km強から1400kmくらいまで、中軌道がその上から約3万6000kmの静止軌道あたりまでを指すのが一般的です。しかし俗に「宇宙」と呼ばれるのは高度100kmくらいからで、現実問題としてはここの高さから「低軌道」として一括りされている感があります。

 OEVが実現し、付帯施設が設置できるほどの規模になれば、低軌道部には人間が滞在可能なステーションが設けられると考えられています。
 べつだん、低軌道に限らず、OEVのどこにでもステーションを設けるのは可能でしょうが、高度約2000kmから上はヴァン・アレン帯という放射能帯もありますので、おそらくは地上を出発して最初にたどり着くであろう低軌道ステーションが、中継地としてまっ先に想定されるのは自然な考えでしょう。
 人工衛星の多くは低軌道に集中しているほか、スペースシャトルもせいぜい高度600kmていどまでしか飛べません。低軌道は中・高軌道への中継コース的な役割も果たし、国際宇宙ステーション(ISS)の軌道も約400kmの低軌道に位置します。
 道路にたとえるなら特に交通量が多い首都高環状線のようなものでしょうか。ですので今回は、低軌道ステーションの話を中心にしつつ、低・中軌道をひっくるめた話としてお読みください。
 
 おそらくここには、地上の観測や通信、実験のための施設はもちろん、放送局なども設けられるでしょうし、重力が治療の妨げになりうる病気(寝てるのもつらい全身やけどや皮膚疾患など)のための治療施設も造られるかも知れません。
 そして、宇宙という新たな「観光スポット」になるはずです。べつに静止軌道まで行く必要はない。仮に低軌道ステーションがISSと同じ高度に造られるとすれば、東京から大阪へ行くより近い。地上から数時間で往復できると考えられます。
 ちょっと宇宙へ行って景色や低重力環境を楽しんで帰ってこよう。私たち庶民にとってはそんな場所になるでしょう。そんなわけで、海ほたるは低軌道ステーションのイメージにうってつけだと思ったのです。

 海ほたるには展望デッキやレストラン、休憩所、ゲームセンター、おみやげ店などがあり、コンサートなどのイベントはもちろん、結婚式が開かれることもあります。海ほたるを目当てに川崎か木更津から来て、また帰っていく人も多く(そのためにUターンができるようになってます)、都心から横浜までの夜景も綺麗で、元旦には初日の出を見に多くの人が訪れます(海から昇ってくる日の出は見えないんですが)。低軌道ステーションも、発展すればこのような場所になるのではないでしょうか。

 先述のように、低軌道ステーションは実利的な機能も持たされるはずですから、決してレジャー目的だけの存在にはならないでしょうが、OEVのうちでもっとも身近で重要な、誰もが訪れたいひとつの名所の誕生になるかも知れません。OEVがそんな生活を実現してくれる日が早く来て欲しいものです。

 ちなみに、OEVの建造費の見積もりの中には1兆円くらいという試算があります。この数字は少々安く見積もりすぎだとは思うのですが、アクアラインの建設費は1兆4000億円です。

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