軌道エレベーター派

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軌道エレベーターが登場するお話 古典(3) 超時空世紀オーガスほか その1

2023-07-07 11:12:37 | 軌道エレベーターが登場するお話


超時空世紀オーガス
毎日放送、東京ムービー新社(1983年)
超時空世紀オーガス02
バンダイビジュアル、ビッグウエストほか(1993年)

「超時空世紀オーガス」のあらすじ 2062年、軌道エレベーターの争奪戦に参加した軍人の桂木桂は、次元兵器「時空震動弾」を未調整のまま作動させる。その影響により時空の彼方に飛ばされた彼がたどり着いたのは、多数の並行世界が入り交じった、混乱した地球だった。
 
 私が初めて軌道エレベーターを認知したのは、本作がきっかけだったと記憶しています。しかし原理がよくわからず、それで「楽園の泉」を読み、その基本原理のシンプルな美が心に刻まれたのであります。その意味では、我が軌道エレベーター派誕生の原点とも言える一作です。
 今年は放送40周年とのこと。記念に長めに書いて何回かに分け、記事をアップします。内容は1作目の「超時空世紀オーガス」を中心とし、「オーガス02」は3回目で1節割く予定です。ネタバレご注意下さい。
 
1. 本作に登場する軌道エレベーター
 本作では、物語冒頭の時点で、南米の陸上に軌道エレベーターが造られています。直径1kmくらいはありそうな巨大建造物です。今でこそケーブルでピラーを構成する動的なモデルが主流ですが、本作を含め、「銀河英雄伝説」(OVA版)やZ.O.E Dolores, iなど、20世紀の作品における軌道エレベーターのデザインは、こうしたぶっとい剛体が定番化していました。
 1話の時点では、何もない荒野に地上基部があり、物語終盤では周囲が小さな街のようになっていました。1話でピラーから攻撃がなされる場面があるので、武装もあるようです。
 正確な高さはわかりませんが、宇宙空間の高度には「ステーション」が設けられています。俯瞰以外の細かい描写はここまで。末端には、本来は「スペースアイランド」という施設が設けられていたらしいのですが、後述の混乱により破壊・分離してしまったようです。このため、末端の状態がどのようになっているのかなどは不明です。



 さて物語の序盤、軌道エレベーターの所属を巡って世界を二分する勢力が対立し、主人公・桂木桂の陣営は時空震動弾(本編では「超時空震動弾」とも)を戦線に投入します。セリフから推察するに、軌道エレベーターという財産を破壊するわけにはいかないから、代わりにエネルギー供給施設を無効化するのが作戦の目的で、そのために時空震動弾を使うみたい。その割には軌道エレベーターに向かってミサイルを撃ったりしてましたが。
 結局劣勢で撤退を余儀なくされるのですが、桂は周囲の制止を聞かず、地上基部のすぐそばで調整を終えないままの時空震動弾を起爆させます。

 この兵器、異なる宇宙をぐちゃぐちゃにシャッフルしてしまう代物で、今風に言えばたくさんの世界線を無理矢理1本にまとめてしまう感じ。この結果、異なる世界の異なる人類が、一つの地球に混在する状況が出現。桂はこの時空混乱から20年後の世界に飛ばされます。正常に作動したらどうなっていたか不明ですが、つまりその後の混乱も悲劇も全部こいつのせい。彼は混沌の原因となった「特異点」と呼ばれて追われるのですが、詳細は次回に。

 で、20年後も軌道エレベーターは残存しています。時空混乱後の世界では、地球全域で上空が「相剋界(本編では「相剋面」とも。資料によっては「相克界」)」と呼ばれる、時空の乱れた層で覆われており、海抜150mより上には上昇できません。場所によっては山が中腹から相剋界に突っ込んでいる光景が描かれています。長野県川上村とか群馬県草津町とか、標高の高い所どうなったんでしょうね?

 軌道エレベーターは相剋界を貫いて宇宙に伸びており、この層より上に行ける唯一の手段となっています。物語終盤、桂は宇宙に行く必要に迫られ、上述のステーションまでたどり着きます。ただし昇降機能は失われているのか、それとも敵の妨害で使用できなかったのか、エレベーターには乗らず自力で上昇するんですが。
 それでも以前取り上げた「宇宙空母ブルーノア」なんかと違って、ちゃんと地球人が宇宙へ行くのに使っていますから、映像作品としては初めて、本来の目的に使われた軌道エレベーターと言えるかも知れません。

 物語の大半は地上のあちこちを旅していて軌道エレベーターの登場場面は少ないし、詳細な設定情報はないものの、本作は軌道エレベーターで始まり軌道エレベーターで終わるお話です。その意味でも記念すべき作品と言えます。

 「オーガス」で軌道エレベーターを認識した人は、私だけではないでしょう。本作は「超時空要塞マクロス」(1982年)の後番組で、軌道エレベーターのほかにも、多元宇宙論、慣性制御など、ハードSFとして通用する凝った設定を盛り込んだ意欲作でした。
 お話は現代の水準から見ると冗長で、当時もヒットには程遠かったんですが、軌道エレベーターらしい軌道エレベーターが描かれた映像作品は、これが初めてじゃないでしょうか。この分野のサブカル史において、外せない1作です。
 ここまで読んでくださり、ありがとうございました。次回はストーリーや人物について。
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