軌道エレベーター派

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OEV豆知識(11) 図解その8 投射機(軌道カタパルト)

2009-06-09 11:40:15 | 軌道エレベーター豆知識

 早いものでこの「豆知識」もとうとう11回目になりました。今回は図解その8「投射機」です。投射機というのは便宜上私が勝手に呼んでいる名称に過ぎず、「カタパルト」とかでもよいかと思います。
 静止軌道部の上に描きましたが、要は一定以上の高度なら、末端を含む色んな場所に設定できます(ちなみに絵もマジックハンドのように記号化したもので、こんな単純な形にはならないでしょう)。
 すなわち、軌道エレベーター(OEV)はその構造上、質量を外宇宙へ飛ばすことのできる遠心投射機として利用できるのです。OEVを使って砲丸投げをするようなものだと考えてください。

 質量を放出する最も基本的な高度は静止軌道のちょい上、約4万7000kmだそうです。ここでOEVに固定していた物体を分離すると、その物体はOEVから(厳密には地球から)運動エネルギーをもらって飛んで行き、二度と地球には戻ってこなくなります。この速度は「第2宇宙速度」と呼ばれています。
 理論上は高度や角度の調節次第で、様々なモノをあらゆる方向へ飛ばしていくことができ、いわばつかんでいた手を離すだけで、地球重力圏を脱出する速度を得ることができます。

 この仕組みは、OEVの付随機能として非常に重要な価値を持っています。この機能を利用して、宇宙船や探査機を、基本的に自力推進なしで第2宇宙速度で射出し、月や火星などへ向かう軌道に投入する計画に利用することがすでに提案されています。
 もちろん放出後は微修正などは必要になるでしょうし、そうした制動や帰還時には推力を必要としますが、基本的には初期加速が必要はないんですね。
 この機能はOEVを実現すれば自動的に付いてくる高額特典のようなものです。低コストで地上と宇宙を往復できるだけでなく、こうした利用ができることは、OEVを建造する計り知れない意義となるのではないでしょうか。



 なお余談になりますが、OEVから投射される物体は、角運動量と呼ばれる地球の運動エネルギーを分けてもらって飛んでいきます。このため、実は投射のたびに地球の角運動量がほんの少ぉ~しずつ減っていくんですね。0.000...X秒といった数値で自転が遅くなっていく、つまり一日が長くなっていくんですが、実生活に影響があるものではないはずです(逆に宇宙船の接舷によって角運動量が増すこともあり得ます)。
 OEVとは関係なく、こうしているいま現在も、月が地球の角運動量を奪って常に地球から遠ざかっており、地球の自転速度も徐々に弱まってるんです(だから太古の地球の自転はもっと速く、月はもっと近くを回ってました)。OEVの投射はもっとエネルギーが小さいので心配はないでしょう。今だって1日は24時間より4分ばかり少ないのに、ちゃんとみんな生活してますから。

 この図解も、終点が近くなってきました。次回もよろしくお願いいたします。
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