温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

龍鳳谷温泉 羅漢窟温泉公共浴室

2014年09月18日 | 台湾
※残念ながら2014年11月に取り壊されてしまったようです。

 
台北の温泉地といえばその筆頭に挙げられるのは言わずもがな北投温泉ですが、そこから山へ登った奥の方にも多くの温泉地があり、秘湯めいた温泉もあちこちに点在しています。今回はこの一帯屈指の地熱地帯である龍鳳谷へ向かって、当地の公共浴場を利用してみることにしました。まずはMRT北投駅前から、230番(陽明山行)か小25番(六窟行)のいずれかのバスに乗車します。この時は黄色いマイクロバスの230番がやってきました。



バスは北投駅から北投温泉街を抜けて、陽明山の山裾を上がる泉源路の坂を延々登り続け、23分で「龍鳳谷」バス停に到着しました。ここで下車します。なお北投駅の他、石牌駅から行義路を上がってくる535番(六窟行)か128番(第二停車場行)のバスに乗ってもOKです。バス停の前には仮設のトイレがひとつあり、偶々便意を催したので使わせていただいたのですが、公衆仮設トイレにもかかわらずとても綺麗に維持されており、気持ちよく用を足せました。


 
バス停の前には「龍鳳谷餐庁」という温泉施設の跡があるのですが、全体的に埃を被ったように暗く、しかもゲートには売り物件の札が張られていたので、現在は営業をやめてしまったのかもしれません(間違っていたらゴメンナサイ)。この「龍鳳谷餐庁」の先(バス停から数十メートル)のところに、「龍泉宮」と彫られた石碑が立っており、その脇から谷底へ伸びる階段がありますので、この階段へと進んでどんどん下ってゆきます。


 
落石注意の標識に怯えながら階段を下ってゆくと、やがて中華風のお宮の前を通ります。このお宮が「龍泉宮」なのでしょうね。階段は更に下方へ伸びており、お宮のテラス下を潜る感じで進むと…


 
階段は橋へ直結されており、この橋で白く濁った谷底の川を渡ります。川岸には黒いホースがウネウネと無数に並行しており、また両岸を跨いでいるホースもたくさん見られます。いずれも界隈の民家へ上水を引くためのものでしょうけど、台湾ってこの手の設備を無秩序状態で放ったらかしにしておく傾向にあるんですよね。せっかくの美観も台無し…。


 
橋の対岸右手には、トーチカみたいに細長い小窓が開いている、古びたコンクリの低い建物があり、その壁には「女→」とペンキで大きく書かれていました。これこそ今回の目的地である「羅漢窟温泉公共浴室」であります。その表示の通り、手前の川側は女湯でして、奥の崖側が男湯となっています。


 
継ぎ接ぎだらけの目隠しが施された入口より奥へ進むと、小窓からはおじさん達の会話と、手桶でザバーッと掛け湯する音が聞こえて来ました。ほほぉ、これが男湯の外観か。


 
この「羅漢窟温泉公共浴室」は地元民向けの共同浴場なのですが、私のような外来者でも無料で利用することができます。と言っても、台湾のジモ専ならではの独特な空気感と衛生観念に抵抗感が無ければ(あるいは耐久力があれば)の話ですけどね。なお男女別の内湯ですから、全裸で入浴します。
台湾の公共浴場はえてして脱衣スペースと入浴スペースが一体化していることが多いのですが、ご多分に漏れずこちらも同様の造りでして、しかも両スペースがフラットであるため、脱衣スペースまでビショビショでした。L字形に棚が並んでおり、その上では換気扇がブンブン音を奏でて勢い良く回っています。見るからにオンボロな共同浴場なのですが、それでも脱衣スペースにはお茶を淹れるための器具が一式揃っており、台湾の方々の生活とお茶は切っても切れないものであることを、改めて認識させられました。


 

室内の壁には「洗乾浄才入池」、つまり体を綺麗にしてから湯船に入りましょうと直に書かれています。この手の注意書きは台湾の温泉浴場でしたらどこでも見られますので、別段珍しいものではないのですが、殊にここのお風呂においては、妙に現実味を持って訴えかけているように思われます。と言いますのも、反対側の壁に掲示されている「使用注意事項」のプレートには、約10年前に衛生局が当浴場へ出した勧告が貼り付けられており、そこには当浴場と近所の「媽祖窟公共温泉浴室」の2箇所が「水質不合格・請使用民衆配合改善」、つまり水質検査の結果、浴用の基準に達していなかった(不合格だった)ので、利用する皆さんの善処を求めます、と書かれているのです。どんな基準において不合格だったのかは記されていませんが、文中にて「使用民衆於進入浴池前、先行沖洗清潔後再入池」、つまり湯船へ浸かる前にまず体を綺麗に洗いましょうとあるので、おそらく大腸菌関係の数値が規定をオーバーしていたのでしょう。つまり衛生局の見解では、マナーに問題があると言いたいようです。確かにそれもあるでしょうけど、外部と浴室内がほぼフラットで、足裏に外の泥をつけたまま湯船へ入れてしまうような造りになっていることも、大いに影響しているような気がします。

ちなみに私の利用時、衛生局から文句を言われる筋合いなんて無いほど、常連さんは全身石鹸の泡だらけになって、しっかりと体を洗ってから入浴なさっていました。洗い場にシャワーなどのカランは無いのですが、その代わり大きなバケツや手桶がたくさん用意されており、各自で後述する湯口からお湯をバケツに汲んで、そのお湯で掛け湯をしたり、体を洗ったりしていました。また室内右側には小さな冷水槽もあり、常時水が供給されているので、クールダウンを図るべくこの水を浴びる方も多く見られました。


 
浴槽は2分割されており、いずれも7人サイズ(左の方が若干大きい)。左側の槽に源泉から引かれている配湯管があり、ホースに接続されていて、両浴槽へお湯を供給できるようになっていました。ホース口から吐出されるお湯は50℃以上あり、浴槽へは直接加水できない構造のため、このホース口が落とされている方の浴槽が必然的に熱くなります。しかも、このホースは常連さんの気まぐれによって左右のどちらにも向けられるため、おそらくその時々によって、どちらの浴槽が熱いのか(そしてどのくらい熱いのか)は変わってくるものと思われます。なお上画像ではホース口が左側槽に向いていますが、この直前までは右側槽でひたすらお湯を吐出し続けていたため、右側槽は体感で46~7℃という高温となっており、熱すぎて入れたもんじゃありませんでしたが、左側槽は43℃前後で良い湯加減でした。

さて肝心のお湯に関してですが、麓の北投温泉のような酸性泉でなく、はたまた近所の行義路温泉のような白濁の硫黄泉でもなく、鉄錆系の金気がとても強い泉質でして、湯船ではやや橙色を帯びた貝汁濁りを呈しており、強い金気の他、石膏的な甘み、そして明瞭な炭酸味も感じられました。前々回取り上げた「冷水坑温泉」に近い泉質かと推測されますが、冷水坑温泉のような入浴中における気泡の付着は見られませんでした。入浴中の肌にはギッシギシと強い引っ掛かりがあり、湯上がりもかなりのベタつきが残りました。とても個性の強いお湯です。湯使いは当然ながら完全掛け流しです。



浴室の隣には上画像のような休憩スペースがあり、腰掛けが用意されている他、水場もあって、浴室ではなくこちらで水浴びをしているお爺さんもいらっしゃいました。また常連さんの風呂道具(バケツを含む)もたくさん並んでいました。

地元のおじさん(お爺さん)たちがスッポンポンで賑やかに喋りながら入浴しており、しかも谷底の薄暗い環境のもと、日本人の衛生観念から考えれば及び腰にならざるを得ない状態で入浴するわけですので、台湾の公衆浴場に慣れていない方にはあまりおすすめできませんが(おそらく台湾の若者も敬遠するでしょう)、泉質重視の温泉ファンでしたら行っても損は無い、なかなか面白いお風呂でした。


MRT北投駅前から、230番(陽明山行)か小25番(六窟行)、あるいは石牌駅から535番(六窟行)か128番(第二停車場行)のいずれかの路線バスで「龍鳳谷」バス停下車、徒歩3~4分
台北市北投区泉源路242号  地図

利用可能時間不明
無料
備品類なし

私の好み:★★+0.5
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陽明山温泉 国際大旅館

2014年09月17日 | 台湾
 
バスターミナルなどがある陽明山エリア中心部の仰徳大道沿いに位置する、石造りの重厚感ある建物が印象的な、創業62年の老舗旅館「国際大旅館」。
ここの浴場では濃厚な硫黄の温泉に浸かれるため、日本のガイドブックでも屡々紹介されています。しかしながら、訪問した人によって評価が極端に分かれており、低評価の内容があまりに散々であるため、チキン野郎な私はいままで訪問することに尻込みしていたのですが、前回取り上げた冷水坑温泉を出た後、市街でレンタカーを返却するまで時間に余裕がありましたし、冷水坑から菁山路を南下すれば陽明山中心部まですぐ行けちゃいますので、勇気を出して訪れてみることにしました。



古びて重い雰囲気の外観とは裏腹に、暖色系の照明が室内から照らされているガラスのエントランスは意外にも入りやすい雰囲気です。自動扉の右側には「インバウンド」と記されたプレートがあるように、かつては要人や外国人など利用できる者は一部に限られていたんだそうですが、今では境遇や国籍など問わず誰でも自由に利用できます。フロントの前には小さなステップがあるのですが、かつてはそこが下足場で、靴を脱いで館内へ上がっていたんだそうです(今は下足のままで入館します)。


 
フロントにて入浴をお願いし、100元支払って浴室へ向かいます。受付の脇には台湾の温泉観光協会が正真正銘の天然温泉であると認めた施設に対して交付する「天然温泉」のプレートが掲示されていました。プレートには温泉に関するデータも記されており、その内容はこのページの下部にて抄出致しますが、記載されていないことを補足しますと、こちらに引かれているお湯は、ミルクのような乳白色を呈する池で有名な中山楼付近の源泉から引いているんだそうです。


 
フロントから案内表示に従って左側へ伸びる廊下を歩いた突き当りに男女別の浴室入口があり、そこで下足して貴重品をロッカーへ預けます。浴室は一応「大衆浴池」と銘打たれているのですが、その言葉に反して入口はやけに狭く、はじめて目にした時は、お風呂ではなくトイレの入口ではないかと勘違いしてしまいました。壁には中国語・英語・日本語で入浴方法やマナーに関する注意書きが掲示されていると共に、浴槽の温度を示すデジタル温度計が設置されていました。これによれば男湯は39.1℃とのことですが、この数値がかなりデタラメであることは、入浴前の私はまだ知る由もありません。

ここから先の画像はありません。というのも、週末の夕方だからか、浴室は芋洗い状態だったのです。ただ混雑しているだけならまだしも、まず浴室入口の戸を開けてビックリ。古くて狭い室内に、裸体の男たちが犇めき合っており、しかも洗面台の前や壁際で並ぶようにして静かに直立しているではありませんか。何だこの極めて異様な光景は! 今更引き返すわけにもいかないので、臍を固めて脱衣ゾーンへと向かったのですが、そこでもやはり全身温泉と汗でビショビショになった男たちが突っ立っていました。室内には小さなベンチがあるのですが、腰掛けられる人数が限られているため、座れない人たちが壁際などで立っていたのです。しかもみなさんグッタリしているご様子。そんな男たちに囲まれながら私も脱衣するのですが、更衣室に用意された棚の数が少なく、訪問時には全て埋まっていましたので、仕方なく棚の上に衣類や荷物を置きました。棚の前にはスノコが敷かれていたのですが、朽ちて部分的に踏み抜かれており、それに気付かず割れた場所を踏んでしまった私は思わず「痛ぇ」と声を出してしまいました。

建物の外観と同様に、浴室内も安山岩の切り出し石材が積み上げられており、石ならではの重厚感、そして古い造りゆえの天井の低さなど、他の浴場ではあまりお目にかかれない独特の雰囲気が醸しだされています。そしてこの浴室の壁際でも隙間なく男たちが並んでグッタリしていました。室内には7~8人サイズの長方形の浴槽がひとつと、浴槽とほぼ同じ面積の床があるばかりで、入口周りや脱衣スペースと同様にかなり狭く、シャワーなどはありません。その代わり、水を貯める2つの樽が用意されており、手桶を使ってこの水をかぶることならできます。

浴槽上の壁には「原湯原汁」という字が躍っているのですが、その文字の通り、中山楼源泉のお湯を完全掛け流しで浴槽へ注いでおり、湯船には明るい灰色を帯びた濃厚な白濁湯が張られています。脱衣スペースから見て左端でちょこんと突き出ている塩ビ管からお湯が投入されており、時折濃厚な湯泥をドロっと吐出することもありました。この湯泥の影響もあるのか、濁り方がとても強く、透明度は5センチも無いほどです。また湯中では白く細かな湯華も無数に舞っていました。それにしても「原湯原汁」って凄い表現だと思いませんか。「掛け流し」なんて京言葉のバッタモンみたいな言い回しではなく、「原湯原汁」と漢字4文字で端的に記した方が、断然わかりやすくて訴求力も強いですね。しかも汁って字を使うところがインパクト大であり、火山から絞った果汁、自然の恵みというイメージが強く伝わってきます。お湯からはクレゾールのようにツーンと鼻孔の粘膜を刺激するイオウ臭が強く漂っており、口に含んでみますと苦味や渋味が強く感じられ、頬の内側や喉チンコなどに痺れのような感覚がこびりついて暫く残りました。お湯に含まれる硫化水素が多いため、浴室の窓は常時開放されており、ガラスなどは無く、鉄格子が嵌められていました。

見た目・匂い・味のみならず、実際に湯船に浸かっていてもその濃厚さを実感できます。「原湯原汁」と書かれた壁には、お湯が濃いので入浴時間を3~5分にとどめておいて、という注意書きも付されているのですが、これは決して大げさではなく、本当にこの程度で上がっておかないと湯あたりして体がヘロヘロになってしまいます。しかも湯加減が結構熱く、上述のように入口では39.1℃と表示されていましたが、実際には(私の体感で)44℃近くはあり、温度的にも体への負担が大きいのです。どんな人でも決して長湯できないでしょう。普通の温泉でしたら、湯あたりする際にはボディブローのようにジワジワ効いてくるものですが、ここのお湯はストレートでいきなりノックアウトされちゃうような、凶暴なハードパンチャーなのです。浴室内や脱衣スペース、はたまた入口付近でグッタリしていた裸体の男たちは、皆さんこの原湯原汁パワーでボコボコに打ちのめされた末の姿であり、混雑している上に浴室内が狭すぎて休憩スペースが無いため、仕方なく立ちながら体力の回復を待っているのでした。
なお入浴中はシットリ&スルスルとした浴感なのですが、湯上がりには毛穴の全てにイオウの湯の華が詰まったような感覚があり、いつまでも汗が引かず、濃厚な硫黄泉らしいベタつきも残りました。

寛ぎとは無縁の、格闘と捉えるべき温泉ですが、それでもお湯の濃さは大いに魅力的であり、KOされちゃうのはわかっていながら、何度も湯船に浸かりたくなっちゃうのが不思議なところ。ここのお風呂でクタクタになりながらも、何度も湯船に浸かろうとするお客さんは、間違いなくマゾヒストでしょう。かく言う私もその一人であります。インバウンドの文字を信じてやってきた外国人旅行者は、狭い空間で裸の男達が肩を寄せあっているこの浴室の光景を目にしたら、尻尾を巻いて逃げてしまうかもしれませんが、お湯の質や濃さを求める方でしたら、寧ろ非常にアトラクティブです。人によって評価が極端に分かれてしまうのが、実際に入ってみてよくわかりました。もちろん私は、あの光景に身の危険を覚えましたが、その恐れを上回るほどお湯の魅力に惹かれた者の一人です。

なお客室には畳敷きの和室や洋室があり、大衆浴池と同じ温泉が引かれたお風呂も備え付けられているそうですから、こちらのお湯を誰にも邪魔されずのんびり楽しみたければ、思い切って泊まってしまうか、あるいは比較的空いている平日の日中を狙うと宜しいかと思います。いろんな意味で面白い体験ができたお風呂でした。
あ、そうそう、私みたいに金気の強い温泉(私の場合は冷水坑温泉)の後にこの濃厚な硫黄のお湯に浸かると、全身に付着していた金気とお湯の硫黄が反応してしまい、硫化鉄によって肌が真っ黒く染まってしまいますので、もし温泉をハシゴしようとお考えの方は、その点をご注意くださいませ(そんな人いるのか?)


炭酸泉 60℃ pH6.4 溶存物質884mg/kg 

陽明山バスターミナルより徒歩3分
台北市北投区湖山路一段7号  地図
(02)2861-7100
ホームページ

日帰り入浴時間7:00~21:00(16:00頃に30分間ほど清掃時間あり)
100元
ロッカー(10元リターン式)あり

私の好み:★★★




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冷水坑温泉 冷水坑公共温泉浴室

2014年09月16日 | 台湾
 
台北近郊・陽明山の冷水坑は、市街から近距離にあるにもかかわらず、緑豊かな陽明山の自然と爽快な高原の景色を楽しめるため、週末にはハイキングやドライブなどで大勢の市民が集まってきます。今回私は土曜日の午後4時頃にレンタカーで訪れたのですが、駐車場には空き待ちの行列ができており、一帯は家族連れを中心にして多くの人びとで賑わっていました。私が車を駐めた第1駐車場(有料)と同じ区域にあるビジターセンターは見晴らしの良い展望台となっており、私も記念撮影の人々と一緒に景色を眺望したところ、眼下に台北市街を一望できました。


 
冷水坑の名物といえばこの牛奶湖(日本語に訳せば牛乳池)。
池の鉱泉が牛乳のような美しい乳白色を呈しているためこの名前になったのですが、牛乳みたいではなく、牛乳そのものが溜まっているじゃないかと信じてしまいそうになるほど、純白の池面は実に神秘的でして、私もこの画像を撮りながらつい「すげー」と口に出してしまいました。この山の裏手(北側)には前回取り上げた磺渓温泉や大油坑(噴気帯)などがあり、大油坑でかつて硫黄が採掘されていたように、この冷水坑でも以前硫黄鉱山が操業しており、硫黄採掘の影響でこの白い池が生まれたんだそうです。また池の周りの草原も、鉱山時代の名残なんだとか。



牛奶湖の奥には第2駐車場があり、第1駐車場より狭いためか、空き待ちの車列が長く続いていたのですが、この第2駐車場の左側に小さな建物が何棟が並んでいるのがおわかりいただけるでしょうか。今回の目的地はこの小屋であります(目的地の目の前にある第2駐車場が非常に混んでいたので、ちょっと離れているもののすんなり駐められた第1駐車場を利用したのでした)。


 

冷水坑は温泉地としても知られており、第2駐車場の前には上画像のような無料の足湯が設けられ、東屋の下を中心にして多くの方が足湯を楽しんでいらっしゃいました。すぐ近くに硫黄の白い冷鉱泉が張られている牛奶湖があり、また陽明山一帯の温泉は硫黄が強い傾向がありますから、てっきりここのお湯も硫黄泉に属するのかと思いきや、足湯から流下してくるお湯は濃いオレンジ色に染まっていました。この見た目から想像するに、相当金気が強そうです。



私は別に足湯を利用したくてわざわざここへやってきたわけではありません。足湯の一段上には誰でも無料で利用できる公共浴場があり、このお風呂に入るべく当地を訪れたわけです。


  
浴室は男女別に棟が分かれており、左(上)画像は女湯、右(下)画像は男湯です。男女別に分かれた内湯というスタイルからもわかるように、日本のお風呂のように全裸で入浴します。無料で利用できる上、陽明山の山々からハイカー達が下山してくるタイミングでもあったうえ、男女両浴室とも絶えず客の出入りがあり、実際の浴室内も空の棚を見つけるのに苦労するほど、大混雑でした。


 
入口にはバスの時刻表が掲示されていました。自家用車のみならずバスでやってくるハイカーも多いのでしょう。一方、湯屋の前など何箇所かに掲示されている営業時間案内は非常に重要ですので、その内容をここで紹介いたします。と言いますのも、この浴場では利用できる時間帯が限られており、以前の開放時間は6:00~21:00で、12:30~14:00は清掃時間のため利用不可でしたが、今年(2014年)4月9日より時間割が全面的に変更され、以下のように、開放時間中に挟まれる清掃時間が3回に増え、利用可能時間が短縮されました。なお毎月最終月曜は定休です。
  6:00~9:00 利用可
(9:00~10:30は清掃時間のため利用不可)
10:30~13:00 利用可
(13:00~14:30は清掃時間のため利用不可)
14:30~17:00 利用可
(17:00~18:30は清掃時間のため利用不可)
18:30~21:00 利用可
(21:00で閉鎖)
室内の掲示によれば、今年1~3月期における当浴場の水質検査の結果、浴槽に於いて規定を上回る菌類が検出されてしまったそうですから、これを受けて清掃時間を増やして対処しているのかもしれません。
 

 
室内は台湾の公衆浴場によく見られる脱衣浴室一体型でして、ご多分に漏れず室内は棚の下までビショビショなのですが、棚が並ぶ更衣ゾーンにはスノコ状の板の間となっており、他の公衆浴場のように着替えに難儀するようなことはありませんでした。荷物を収める棚はたくさんあるのですが、何しろその数に匹敵するほどの入浴客がいるため、上述のように空いている箇所を探すのに苦労したのですが、この時はちょうど退出するタイミングだったお爺さんに枠を譲ってもらって、なんとか着替えることができました。

入浴ゾーンの中央には腰掛け台のような物が据えられ、左の壁際には水道の蛇口が2つ並んでいます。浴槽は「沐浴区(shower area)と「泡湯区(Hot Spring Area)」に分かれており、前者には冷たい水(おそらくただの水道水)が張られていまして、この水を頭から浴びたり、あるいは水風呂としてそのまま入っちゃう人もいました。
一方、後者は英語表記の通りに温泉が張られており、容量としては約10人サイズで、窓の下から伸びる塩ビ管より屋外の足湯と同じ温泉がドボドボと音を立てて供給されていました。下手な小細工など一切ない、完全掛け流しであり、底から立ち上がっているオーバーフロー管の他、窓側の縁にある溝からの排湯も見られました。


 
金気を多く含むためか、浴槽をはじめとして温泉の飛沫がかかるところは悉く赤茶色に染まっており、浴槽に至っては元々の素材の色が判然としません。足湯では濃いオレンジ色に濁っていたお湯も、この浴槽では酸化がさほど進んでいないためか、やや赤銅色を帯びた貝汁濁り程度にとどめられており、まるで赤錆を帯びたかのように濃い色に染まるタイルの底が辛うじて目視できるほどの透明度を有しています。私の体感で湯加減は41℃前後といったところでしたが、壁に設置されているデジタル温度計は42℃と表示していました(わずか1℃の差ですが、42℃には達していなかったはずです)。案の定というべきか、非常に金気が強く、それでいて炭酸味も多く含まれ、湯船に1分でも浸かっていると、肌に細かな気泡が付着しはじめ、やがて全身泡だらけになります。この泡付きは結構強力でして、入浴中は何度拭ってもその度に気泡の付着が見られました。

なお上述のように体に浴びるための冷水はあるのですが、温水のシャワーや水栓などは無く、洗い場も限られているため、利用者はみなさん水で我慢するか、あるいは用意されている大きなバケツに湯船から(あるいは湯口から直接)お湯を汲み、スペースに余裕があるところへ移った上で、バケツのお湯を使って体を洗っていらっしゃいました。浴室の窓の外側には浴槽も水栓も何もない、ただ腰掛けが取り付けられているだけの半屋外スペースがあるのですが(右(下)画像)、窓から腕を伸ばせば湯口のお湯を直接汲めるので、ここはバケツでお湯を汲む人にとっての洗い場となっており、それゆえ床は温泉によって赤茶色に染まっているのでした。わざわざバケツで汲む手間があるということは、中には面倒がって掛け湯せずに湯船へドボンと入っちゃう人もいるはず。もし浴槽の水質を改善したいなら、清掃時間を細かく設定することも大切でしょうけど、湯船に浸かる前にしっかりと体を洗える設備を整えないと、抜本的な改善にはつながらない気もします。

とはいえお湯の濃さは非常に素晴らしく、こんなお湯は日本でもなかなかお目にかかれません。入浴中は肌にギッシギシと強い引っかかりを感じ、湯上り後も全身に粉がまぶされているかのようなザラつきやベタつきが残りました。また炭酸による温浴効果のためか温まりもパワフルで、大して熱くないお湯にもかかわらず、湯上がりはしばらく汗がひきませんでした。場所柄、私が訪れた週末には混雑するようですが、周囲に民家があるような場所ではなく、あくまで山間の観光地ですから、時間帯を外せば意外とゆっくり寛げるかもしれません。
なお女湯に関しては、入浴の際に水泳帽かシャワーキャップなどを被るなどして、髪の毛が湯船に入らないようにしないと、マナー違反であるとして常連さんから厳しく指摘されるとの情報もあります。利用の際には予めその手のものを用意しておきましょう。お湯の質にこだわる人には是非おすすめの、個性の強いお湯でした。


MRT淡水線・剣潭駅より首都客運の小15番バス「天崗」行で「冷水坑」バス停下車
台北市士林区菁山路101巷  地図

無料
利用時間は以下のとおり。毎月最終月曜定休
6:00~21:00(9:00~10:30・13:00~14:30・17:00~18:30は清掃時間のため利用不可)
備品類なし

私の好み:★★★
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磺渓温泉

2014年09月14日 | 台湾
陽明山国家公園内の、台北市と新北市の境界付近には大油坑という火山活動が活発なエリアがあるのですが、この大油坑付近には磺溪温泉と称する美しい野湯があるという情報を仕入れたので、どんなところか探索してみることにしました。


 
陽明山の山域を貫いて台北市街と北海岸地区を結ぶ幹線道路の台2甲線。
皇家客運の上磺渓橋バス停からちょっと台北側へ戻ると、上画像のようにカーブしながら小さな橋を渡る箇所があります。ここが磺溪温泉へ向かう道のスタート地点。沿道に立つ104番の街路灯が目印です。


 
小さな橋の袂には赤い看板が立っており(看板が意味する内容は言わずもがな)、申し訳程度の有刺鉄線が張られているのですが、このヨレヨレの鉄線を潜って先に入ると、足元に「台北市温泉監測井」と記されたトラ模様の施設が埋め込まれていました。ほほぉ、ここからして既に温泉の存在が臭ってきますね。


 
「台北市温泉監測井」の先には一本道が伸びていますので、道なりに進んでゆきます。途中岩盤の上を通る箇所があるのですが、湿っていると滑りやすいので注意です。かく言う私はサンダル履きでしたけどね。


 
スタートから約3~4分で沢にぶつかり、左手の川原には大きなヒューム管が横たわっていました(左(上)画像の箇所)。ここは土管の手前を渡渉して対岸へ渡ります。気象状況などにもよるのでしょうけど、私が行った時には岩の上を飛んでゆけば、足元を濡らすこと無く難なく渡れました。対岸へ渡ると、今度は同じようなヒューム管が3つバラバラに転がっているのですが、今度はこれらの右手に回る感じで岸の上へとよじ登ります。


 
すると左(上)画像のような広場に出て、更に奥へと道が続いていますので、道なりにどんどん進んでゆき、沢に沿って坂道を登ってゆけばOKです。全行程で迷いやすい箇所はこの渡渉ポイントのみでして、他は殆ど一本道ですから、余程のことが無い限り、遭難することはないでしょう。


 
真夏の台湾で登山をする人は少ないのか、はたまた通過する人の絶対数が少ないのか、この杣道は両側から丈の高い藪が茂っており、多くの区間で藪こぎを強いられました。しかもひたすら登り坂ですので、炎天下での山登りは体に堪えます。でも途中で来た道を振り返ると、麓の丘の向こうに紺碧の大海原が広がっていました(右(下)画像)。見晴らし良好です!


 
スタート地点から歩くこと約10分で勾配が緩やかになり、やがてフラットになりました。ここを含む大油坑一帯ではかつて硫黄鉱山が操業していたそうですが、かなり前に閉山されており、当時を面影はほとんど姿を消しています。でもこのフラットな草っ原には、当時のものと思しき、錆びて朽ちた架空索道のゴンドラと思しき残骸が転がっていました。


 
大規模な噴気帯が広がる大油坑は、ここより若干東へ移動した場所にあるのですが、その地熱エネルギーのおこぼれが当地でも露れており、岩肌が剥き出しになっている崖の一部には、硫黄を含む温泉の湧出によって白く染まっていました。



このフラットな草っ原に立っていると、右側からせせらぎの音が耳に入ってきたので、その方向へ近づいてみますと、青白い水が落ちる滝壺に、まるで牛乳のように真っ白なものが注ぎこんでいるではありませんか。沢や滝が青白いということは、おそらく水に硫黄を含む温泉が混入しているのでしょうけど、そこへ流入する濃厚なミルキーホワイトの流れは一体何なのでしょうか。


 
崖を下りてその牛乳みたいな流れへ接近してみました。地面にあいた穴から自噴の温泉が湧出しており、そこから流れ落ちる過程で硫黄やカルシウムなどが付着し、まるで瓶から牛乳をこぼしたかのような光景を造り出していたのでした。


 
規模はあまりに違いすぎますが、その純白さや石灰華の美しさは、台湾版パムッカレと称しても良さそうです。


 
自噴している湧出口でデータを計測しますと、湧出温度は41.8℃で、水素イオン濃度はpH2.9でした。湧出口から刺激を伴うイオウ臭がプンプン漂ってきますので、所謂酸性硫化水素泉であることは明白なのですが、それにしてもこの濃厚な乳白色は只者ではありません。そこで試しにお湯を口に含んでみますと、非常に強い苦味と渋味があり、唇や口腔内などの粘膜がビリビリ痺れてしまいました。美しいものには刺があると言いますが、汚れのない真っ白な見た目とは裏腹に、とんでもなく攻撃的な味覚を有していたのでした。この手のお湯には何が含まれているかわかりませんから、口に含んだ温泉は一切喉の奥に流し込まず、持参していたミネラルウォーターでしっかり口の中を濯ぎました。


 

上流から流れてくる温泉が溶け込んだ青白い滝に、牛乳のような真っ白い濃厚硫黄泉が交じり合う滝壺。
草の緑、岩肌のグレー、そして滝坪の青白色というトリコロールが実に美しいのですが、この滝壺の温度を測ってみますと24.3℃であり、露天風呂とは言えないまでも、一般的な水風呂より遥かに入りやすく、しかもその水はイオウ感を有しています。傍らに止まったトンボが「You 入っちゃいなよ」とつぶやいているように思えたので…



その場で服を脱いで滝壺に入ってみました。藪こぎをしながら坂道を登ってきたので、全身汗だくだったのですが、この硫黄感を有する滝壺に入ったらメチャクチャ爽快なのです!! 深さもちょうどよく、絶えず新鮮な水が流れ込んでくるので、体が受ける感覚がとてもフレッシュ。一度入ると出たくありません。しかも不快な虫(ブヨ等)が全くいないのも嬉しいところ。景観は美しいし、浴感は爽快。こんな極上な野湯はなかなかお目にかかれません。台湾の野湯の中で最も気に入ったかも。



いつまでも入っていたかったのですが、この日は他にも巡りたいところがあったので、1時間ほど浸かり続けた後、後ろ髪を引かれる思いで滝壺から上がり、滝を落ちる水が既に青白かったことが気になったので、更に上流へ遡ってみました。


 

滝壺から数十メートル上流に、上画像のように岩で堰き止められているプール状の淀みがあり、この淀みの底からはプクプクと絶え間なく気泡が上がっていました。おそらくこのプールの底で温泉が自噴しているのでしょう。でも温泉湧出量と比べて沢の水量の方が遥かに多いため、プールでの温度は20℃を少々上回る程度であり、先ほど入った滝壺よりも若干低い感じでした。大きさとしてはここでも水浴びできそうです。



このプールより上流側の沢水は完全に澄み切っています。ということは、あのプールで自噴の硫黄泉が混じることにより、沢水が青白色を呈し始めるわけですね。この一帯は温泉の湧出量が少ないため、熱い湯船での湯浴みはできそうにありませんが、それでもあの滝壺はこの上なく爽快。南国の暑さを忘れて極楽気分のひと時が過ごせました。夏におすすめです。


台北市士林区大油坑  地図

野湯につき無料

私の好み:★★★

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新北市 三金庚子坪温泉会館

2014年09月13日 | 台湾
 
前回取り上げた庚子坪温泉の野湯ではちょっとワイルドすぎて近づけない、同じ温泉を綺麗な施設で楽しみたいという方。お待たせいたしました。前回記事において私が車を止めた鋭角カーブから100メートル程度車道を進んだ突き当りにある「三金庚子坪温泉会館」では、私が入った野湯のある源泉地帯からお湯を引いており、広大な敷地で露天風呂をのんびり楽しむことができます。こちらは以前は「長春谷温泉会館」として営業していましたが、一旦閉業した後、「三金庚子坪温泉会館」として営業が再開されました。建物は以前のものを活用していますが、玄関まわりなどかなりの部分は改築されたようです。
※「庚子坪」の「庚」は、正しくは火偏に庚で「焿」と表記しますが、日本のパソコンでは文字化けしてしまいますので、この記事においては「庚」の字で代用します。


 
落ち着いた雰囲気のフロントで入浴をお願いしますと、私が日本人だとわかったスタッフの方は、わざわざ露天風呂ゾーンまで案内してくださいました。庚子坪ではかつて硫黄が採掘されており、その当時の名残なのか、ロビーには大きな硫黄の結晶が展示されていました。


 
食堂や個室風呂ゾーンを抜けて、屋外の露天風呂へと向かいます。個室風呂ゾーンの階段で2階へ上がると、裸で入れる男女別の内湯があるのですが、それを知ったのは帰国後のこと。この時は露天風呂のみの利用となりました。掲示によればこちらの温泉の水素イオン濃度はpH1.6~2.7とのこと。すなわち酸性泉なわけですが、数値は結構上下するようですね。源泉地における天水の影響が大きいのかな。


 
露天風呂ゾーンは広い敷地を存分に使っており、とっても開放的です。しかも全体的に綺麗であり、台湾の温泉にありがちな音楽もありません。山の緑と静寂に包まれ、森から吹くそよ風が実にさわやか。時間の流れ方がとてもゆったりしています。なおこの露天風呂では水着着用です。


 
露天風呂ゾーン入口の左右にはベンチなどが並べられた休憩スペースがあり、ご覧のようにドライヤーやコインロッカーがズラリと並んでいます。そのコインロッカーの奥にあるテントはシャワールームとなっていて、内部で男女別にセパレートされており、ここで水着に着替えるのですが、テント内は換気が悪くて非常に蒸し暑く、着替えの際の僅かな時間でも汗が止まらずに難儀しました。なおシャワーから出てくるお湯は温泉を使っており、酸性の硫黄泉なのですが、そんなお湯をシャワーに使って大丈夫なのでしょうか。水栓類がすぐにぶっ壊れちゃいそうな気がします。


 

広い敷地には3つの大きな温泉槽が据えられています。
最も手前側に位置している、瓦屋根に覆われた石板張りの長方形浴槽は、トルコ石を彷彿とさせるような美しい青白色濁りのお湯を湛えているのですが、3つある浴槽のうちでは一番熱く、中央の島から湯気を上げてアツアツなお湯が注がれており、湯船で計測したところ42.5℃でpH2.8でした。日本で42~3℃ですと丁度良い湯加減となるはずですが、いくら山のそよ風が吹き抜ける爽快な環境とはいえ、私が訪れたのは夏真っ盛りの7月中旬であり、ジリジリと焼けるような灼熱の陽光が降り注いでいましたので、この湯加減でも私の体感で44~5℃のお湯と同等の熱さが感じられました。こんな熱いお風呂に好んで入る人などいるのかとお思いの方もいらっしゃるかと思いますが、台湾の方は恰も瞑想するかのように、静かにゆっくりと肩まで浸かっており、その表情は実に穏やかでした。日本人以外熱いお風呂には入れない、という固定概念は最早過去のものなりつつあるようです。


 
メインの露天風呂は広々とした岩風呂で、こちらには屋根が無くてとても開放的。お湯は薄く白濁しており、山の緑とのコントラストがとても綺麗です。浴槽縁には何本か石柱が立っていますが、これは打たせ湯の支柱であり、実際にボタンを押してみますと関節が外れそうになるほど強烈な勢いでお湯が吐出されました。
この浴槽では35℃前後のかなりぬるめの温度設定となっていますが、暑い陽気の中ではこのくらいの温度のほうが寧ろ気持ちよく、湯船に入って熟睡しているおじさんもいたほどです。



湯船に浸かりながら夢の国へお出かけになっているおじさんを横目にしながら、私もメインの岩風呂に入ってみました。山の緑を目にしながら浸かる開放的な露天風呂は、実に爽快です。お湯は上述のように庚子坪温泉の源泉地帯から引いているもので、湯面からイオウ臭を漂わせる白濁湯は酸味があり、酸性泉ならではのツルスベも肌に伝わってとても心地よい浴感です。


 
屋根なし岩風呂(メイン槽)に隣接して、屋根付きの岩風呂(サブ槽)も設けられており、こちらはメイン槽よりもやや温度が高めです。隣接する2つの岩風呂では、まずこのサブ槽に源泉が投入され、そこからメイン槽へ流下するような流れができているようでした。また両浴槽の縁からは大量にお湯が溢れ出ており、オーバーフローは川をなして排水口へと流下していました。露天の3浴槽はいずれも加水した上で放流式の湯使いとなっているようです。


 
広々とした露天ゾーンから見えた森の中には「山辺小池」と称される小さな露天風呂群が8つ段々に並んでおり、入浴客はこちらも自由に使えます。広場の大きな浴槽と異なり、こちらは使用の度にお湯を張り替えますので、鮮度良好な状態で入浴できます。ご夫婦や一人客など大人な雰囲気で静かにのんびり湯浴みしたい方は大きな露天で、家族やグループなどで和気藹々と楽しみたい方はこの「山辺小池」を使うと宜しいかと思います。


 
8つあるうち、一番奥の槽が空いていたので、私もここでお湯を張ることにしました。3~4人サイズの岩風呂です。バルブを開けるとイオウ臭と共に源泉から流れてきたお湯がドバっと大量に吐出されるのですが、お湯だけでは熱すぎちゃうので同時に水のバルブも開けたところ、僅か数分で入浴に適した嵩までお湯が溜まりました。
お湯の配管口にてデータを計測すると、61.3℃およびpH2.8と表示されましたが、この数値を見る限り、広場の長方形の浴槽と同等のpHでありながら湯温は高いようでして、前回取り上げた源泉地帯の数値(49.0℃、pH3.2)と比べると、温度も酸性の度合いもはるかに高いようでした。こちらに引湯する源泉においては天水の混入を極力防いでいるものと思われ、それゆえ高温が維持され、酸性の度合いもさほど薄まることが無いのでしょう。



お湯が良い嵩まで溜まったところで実際に入ってみました。加水の具合が良かったおかげで、とても心地よい湯加減です。大きな露天で開放的な環境を楽しむのも良いですが、木陰の下で静かに湯浴みするのもまた一興ですね。
長方形の浴槽では青白色に強く濁っていたお湯も、吐出されたばかりのこの湯船では弱い貝汁濁り程度に留まっており、お湯のコンディションによって濁り方が異なることがよくわかります。濁り方のみならずお湯から体に伝わる鮮度感も優れており、入浴していると森の方々から小鳥の囀りが聞こえ、五感を存分に楽しませることができました。



帰り際に駐車場から奥の方を見ると、何やら工事が行われていました。更に温泉プールを拡張するのでしょうか。

山の緑に抱かれた静かな環境の下、広々とした露天風呂で掛け流しの白濁湯に入れ、しかも客の好みに応じたスタイルの浴槽が使えるという、老若男女を問わず楽しめる実に素晴らしい施設でした。しかも私が訪れたのは週末だったのですが、大して混雑することもなく、お客さんのマナーも良いため、終始のんびりと落ち着いた空気感に浸れました。おすすめです。


新北市萬里区磺潭里坪頂3号  地図
ホームページ

7:00~翌2:00
300元
ロッカー(有料20元)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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