温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

金沢市 兼六温泉

2014年09月01日 | 石川県・福井県

金沢市街の銭湯にはモール系の温泉に入れる施設があり、その具体例として以前拙ブログでは「石引温泉 亀乃湯」を取り上げたことがありましたが、今回は金沢大学付属病院の裏手に広がる住宅密集地で、憩いの場として地域住民に愛されている「兼六温泉」を訪ねます。まずは金沢の中心部である香林坊から路線バスに乗って「暁町」バス停で下車します。兼六と名乗っていますが、兼六園からは1kmほど隔たっていますので、市街中心部からは無理して歩こうとせずバスを利用した方が無難です。


 
住宅街の路地を数分歩いた先の、西光寺という寺院の手前に位置しています。周囲の住宅に溶け込む控えめな佇まいでして、青と赤の濃淡で施設名が記された看板が無ければ、ここが銭湯だとは気づかないかもしれません。入口はふた手に分かれていますが、どちらから入っても同じ下足場につながっています。その代わり下足場で男湯と女湯の入口が分かれており、各浴室へ入ってすぐのところにある番台で湯銭を支払います。



館内には昭和60年に源泉を掘り当てた時の写真が展示されていました。ボーリングされた鑿井から温泉が自噴しており、そのお湯を手にした子どもたちが笑顔を浮かべています。こんな街なかで温泉が湧き出たんですから、お湯が噴き上がった瞬間は皆さん大興奮だったでしょうね。


 
浴室は白色基調のタイル張りで、浴槽の手前にたくさんのカランが配置されるレイアウトは、まさに街中の銭湯そのものです。浴室入口の傍にはサウナらしき小部屋があるのですが、私の訪問時には使われていないようでした。洗い場のカランは計18ヶ所あり、うち14ヶ所には壁直付のシャワーも付帯しています。カランが並ぶ真ん中の島には、ケロリン桶や腰掛けが綺麗に並べられていました。



カランから吐出されるお湯は源泉であり、押しバネ式のコックを押下すると、ご覧のように琥珀色のお湯がドバドバ出てきます。


 
洗い場の奥に据えられている内湯浴槽は2分割されており、段違いになっています。上段の浴槽は4~5人サイズでやや深い造りになっており、ちょっぴり熱めに加温された循環湯が槽内供給されているほか、「源泉」と篆刻された扇形の銘板下には湯溜まりの枡が置かれていて、下部の配管から上がってくる非加温の生源泉が枡から浴槽へと落とされています。
一方の下段浴槽は、サイズこそ上段とほぼ同じですが、深さは一般的な浴槽と同等になっており、上段から流下してくるお湯を受けていて、41~2℃という万人受けする湯加減がキープされていました。また上段槽から落ちてくるときの勢いによるのか、湯面には白く細かな気泡が浮かんでいました。なお。この下段槽のお湯は切り欠けより床へ溢れ出ていましたので、お湯を加温循環させつつも並行して源泉を投入する循環放流併用の湯使いかと思われます。



銭湯なのに露天風呂に入れるのはありがたいですね。四方を建物で囲まれた中庭のような空間ですので、景色は全く望めませんが、区画いっぱいに岩風呂が広がっており、余ったスペースに植栽や石灯籠を配して日本庭園のような趣をつくりだしています。浴槽縁に並べられた岩の塩梅が良く、この岩に頭の載せながら仰向きに入浴すると、いい感じに頭がフィットしてくれました。


 
日本庭園の池をイメージしていると思しき竹筒より、打たせ湯のような感じで非加温の生源泉が注がれているほか、その脇からは加温されたお湯も投入され、これによって入浴に適した温度への調整が図られていましたが、それでも私の体感で40℃に達しておらず、寧ろこのおかげでじっくり長湯を楽しむことができました。若干ぬるいお湯の方が長く浸かれるので、却って体の芯からよく温まるんですよね。内湯ではお湯が循環されていましたが、露天では放流式を採用しているようでして、ステップと建物壁の隙間から、投入量に見合った分のお湯が惜しげもなく排湯されていました。

お湯は濃い紅茶のような琥珀色を帯びており、湯中では紅茶の茶葉を粉々にしたようなダークブラウンの細かな湯の花が浮遊しています。お湯を手に掬ってみますと、ほんのりとしたモール臭や臭素臭が香り、薄い塩味と清涼感を伴う重曹的なほろ苦みが感じられました。湯中における気泡の付着は見られませんが、ヌルっとした感触が混じるツルスベ浴感がハッキリと肌に伝わり、特に内湯で顕著でした。重曹泉は加熱するとヌルヌル感が増す傾向にありますから、加温によってこの浴感が強まったのかもしれません。なお館内表示によれば塩素消毒を実施しているとのことですが、それらしき臭いはほとんど気になりませんでした。
銭湯料金にもかかわらず、モール系のお湯が張られた露天風呂に入れる、素敵な温泉銭湯でした。


1号源泉
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 38.4℃ pH8.1 102L/min(動力揚湯) 溶存物質2.685g/kg 成分総計2.695g/kg
Na+:781.4mg(94.90mval%),
Cl-:726.7mg(55.83mval%), Br-:4.3mg, I-:0.4mg, HCO3-:966.8mg(43.16mval%), CO3--:8.6mg,
H2SiO3:120.9mg,
加温あり(入浴に適した温度に保つため。露天風呂は気温の低い期間に加温水を投入)
内湯は循環濾過あり(衛生管理のため)
内湯・露天風呂とも塩素系薬剤使用(衛生管理のため)

金沢駅や香林坊などより北鉄バスで「暁町」停留所下車徒歩2~3分(約200m)
石川県金沢市暁町18-36  地図
076-221-2587

平日14:00~23:00、日曜祝日13:00~23:00 金曜定休
420円
ロッカー・ドライヤーあり、石鹸など番台で販売

私の好み:★★
コメント
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