温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

祝2000湯記念 台湾・紅香温泉 前編(悪路をバイクでGO!)

2014年09月05日 | 台湾
休みの度に温泉へ出かけ、熱いお湯に逆上せすぎて体調を崩すほど浴場をハシゴしていたら、いつの間にやら訪問した温泉の箇所数が2000湯(※)に達しようとしていました。1500湯目を迎えたのは鹿児島県トカラ列島小宝島のマショ温泉で、2012年7月のことでしたから、ちょうど2年で500箇所も巡ったことになります。ということは1年で250箇所ですから、3日で2湯に入っている計算になります。実際には短期で場所を特定して絨毯爆撃を行うように集中的に訪問しており、2~3週間も温泉とご無沙汰なこともザラなのですが、それにしても我ながらよく巡ったものだと、自画自讃すると同時に呆れてもいます。
(※)自己紹介のページでもご説明しておりますが、この数は対象の入浴施設に初めて訪れた時の回数をカウントしております。源泉数でも温泉地数でもなく、入浴施設数(野湯を含む)を単純にカウントしています。

2000を超えると次は2500か3000か、という話になってきますが、いろんな事情が絡んで、そろそろ私の湯めぐりもスローダウンすべきタイミングを迎えており、次にキリの良い数字を迎える日は、かなり遠くなるか、あるいは無いかもしれません。せっかくだから日本国内じゃつまらない、海外の秘湯でその記念すべき時を迎えたい、でもあまり長期の休暇がとれないので、無難な範囲の距離感と難易度に抑えておきたい…。そう考えながら候補地を選んでいるうちに、昨年訪れようとしたものの一本道が土砂崩れのために到達できなかった台湾の紅香温泉へ再チャレンジしたくなりました。距離感と難易度は、まさに今回叶えたい条件にピッタリです。

そこで7月中旬に灼熱の台湾へ飛び、訪台の度にお世話になっている南投県埔里「ゲストハウスプリ」のオーナーであるWさんに相談し、ご同行をお願いして、現地へ向かうことにしました。


 
今回はいつもの一人旅と異なり、「ゲストハウスプリ」のオーナーであるWさんの他、この9月から中学生になるWさんのご子息D君、この日たまたま埔里へお出でになっていた高雄の日本人ゲストハウス「あひる家」のオーナーSさん、そして私という男4人による、賑やかなツーリングとなりました。

左(上)画像のバイクが今回の私の相棒として活躍してくれたレンタルバイクです。Googleマップで調べたところ、今回の旅の起点となった南投県埔里から現地までは約54kmという結構な距離があるのですが、あまりの僻地なために公共交通機関なんてものはなく、しかも如何せん悪路でありますから、機動性の良いバイクが最も好都合なのです。皆さんで朝食を摂った後、幹線道路を走って埔里から霧社へと向かいます。右(下)画像は、霧社手前の人止関付近で、先行誘導してくださるWさん親子(タンデム)とSさんを、後続の私が撮ったものです。


 
埔里から約50分で霧社地区に到着です。ここは日本統治時代の1930年に発生した「霧社事件」の舞台として知られており、近年では映画『セデック・バレ』によって多くの台湾人から注目されましたが、その熱もすっかり冷めやったようであり、今では山間の穏やかな町に戻っています。当地には役場・警察・消防などの他、各種商店・ガソリンスタンド・コンビニなど、街としての機能がひと通り揃っており、コンビニはセブンイレブンとファミマの2軒が近接して営業していますので、観光拠点としても便利です。その一方、これから向かう紅香集落には商店と呼べるようなものが殆ど無く、食事にも事を欠いてしまいますから、万全を期すためにここで給油し、セブンイレブンでドリンク類やお昼ごはんを確保しました。


 
今回私がWさんにリクエストしていたことのひとつに「地鶏の丸焼きをかぶりつきたい」という胃袋的な欲求がありました。Wさんのブログを拝見していると、時々鶏の丸焼きが登場するのですが、こんがり焼けた艶やかな外観とジューシーなお肉があまりに美味しそうであり、且つ日本ではあまりお目にかかれないワイルドなスタイルですので、一度是非食べてみたかったのです。霧社からちょっと先へ進んだところ(仁愛国中の手前)にある「阿東窯仔雞」はそんな私の希望を叶えてくれるWさんおすすめのお店でして、店頭に並べられている窯に鶏を丸々一羽入れ、薪で焚いて丸焼きにするのですが・・・


 
このお店が他店とちょっと違うところは、臓物を繰り抜いた鶏肉の真ん中にスパイスや香草類をたっぷり詰め込んでいるため、焼きあがった肉に絶妙な味付けが施されており、しかも香りが良いのです。注文してから調理してくれるので、焼きあがるまで若干の時間を要しますが、鶏を窯に入れる様子や周辺の長閑な景色を眺めていると、待ち時間も苦になりません。このお肉は後でランチとしていただきます。


 
霧社から台14甲線を走って梨山および清境農場方面へ向かい、途中で左折して力行産業道路という細い山道へと入ります。日本で産業道路と称する道路と言えば、工業地帯などで大型車両が頻繁に往来する大きな通りですが、台湾では山間に点在する零細集落の生業を支えるための小径であり、日本で言えば林道とほぼ同等の整備レベルでありますので、大抵は狭隘で険しい区間の連続です。この力行産業道路はまさにその典型であり、力強そうなネーミングに反して、あまりに険しい地形ゆえにしばしば土砂崩れなどが発生して通行止になる心細い道なのであります。昨年私がこの道を進もうとした時には、まさに私の目の前で斜面が崩落して落石が発生している真っ最中でして、その土砂に行く手を阻まれてしまったのでした(その時の記事はこちら)。その後復旧工事が行われて通行が可能になったとの情報を得て、今回リベンジを果たすべくやってきたわけですが、道路の入口には赤い札が立てられており、工事をしていて通行ができない云々と記されているではありませんか。早くも2000湯目の計画は頓挫するのか…そう落胆しかけていたところ、Wさんが傍のお店で状況を聞いて下さり、お店の方曰く通行できるとのことでしたので、萎えそうになった心を奮い起こして、産業道路へと突入してゆきました。


 
(右(下)画像は「ゲストハウスプリ」のWさんよりお借りしたものです)
険しく狭隘な道路ですが、多くの区間は舗装されています。でもその舗装の状態が悪く、至るところで割れて段差が発生していたり、穴が開いて泥が溜まっていたりと、非常にバンピーな悪路ですから、迂闊にスピードを出すと、デコボコにハンドルを取られて転倒すること必至です。路面状況をよく確認しながら慎重にスロットルを回してハンドリングするわけですが、この行程は精神的に疲れますから、所々でバイクを停めて休憩することに。右(下)画像は、左からSさん、Wさん、そして私です。
台湾・中央山脈の山腹急斜面を横切るように走るこの道は、眺望が非常に素晴らしく、高地であることを活かして沿道にはお茶畑なども広がっています。こうした景色を眺めながら快走したいところですが・・・


 
途中数ヶ所で大規模な土砂崩れが発生した場所を横切ります。昨年私の行く手を遮ったのはまさにこうした現場でして、現在は荒涼とした斜面に仮設の道が拓かれているのですが、現在進行中で落石が発生しており、礫地に重機で開いただけの路面は酷いデコボコで、通る度に視界が失われるほどの砂埃に覆われました。
通過した後に土砂崩れの現場を振り返ると、斜面がまるごとザックリえぐられており、大規模な地すべりが発生したことがわかります。しかも現在も斜面の状態は不安定ですから、いつ再び発生するかわかりません。とんでもなく恐ろしい場所なんですね。


 
一箇所のみならず、複数箇所で同様の大規模地すべりが発生していました。いかに険しく危険な土地であるかがお分かりいただけるかと思います。復旧工事によって車が通れる程の幅員は確保されていますが、現場から斜面を見上げるとザレ場の急斜面に太い倒木が引っかかっており、雨や地震などで僅かな力が加われば、即座に道路へ落ちてきそうな危ない状況でした。


 
またまた同様の、斜面崩壊の生々しい現場を通過です。落石も怖いのですが、いざ斜面が崩落する時は、道路もろとも谷底へ落ちてしまうわけですから、通行すること自体がちょっとしたギャンブルです。



しかも工事のために意外にも大型車両の往来があり、その度に全身砂埃にまみれてしまいます。上画像では道路の奥が白く霞んでいますが、これはトラックと行き違った際に砂塵が舞い上がったためです。目は開けられないし息もできないので、一旦止まって砂埃が落ち着くのを待っています。斜面は怖いし、砂埃はひどい。しかも凹凸のため慎重な運転が求められる…。相当な悪路ですね。


 
でも、そんな険しい場所だからこそ、沿道に開ける景色は非常に素晴らしく、何度か止まって鋸歯状の山稜が広がる大絶景を眺め、運転の緊張を解きほぐしました。


 
力行産業道路の起点から1時間10分で、温泉がある紅香集落への分岐点にさしかかりました。ここは道標に従って左へ進み、谷底に向かってジグザグの坂道を下ります。こんな山奥でも生活が営めるんですから、人間って強いんですね。



集落へ近づくにつれて道の両側に耕作地が広がりはじめました。上画像はとうもろこし畑です。彼方の対岸に見えるのはキャベツ畑のようでして、途中何度かキャベツを積載したトラックと行き違いました。


 
坂を下りきって川を渡ります。渓谷を流れる川の水は、清らかに澄んでいました。川の名前は北港渓といい、下ってゆくと以前拙ブログでも取り上げたことのある埔里郊外の「北港渓温泉」へたどり着くのですが、あまりに急峻な地形のためか川沿いに道は無く、今回走行したルートのように山を高巻いて迂回する他ありません。


 
力行産業道路の起点から険しい悪路を走ること1時間25分で、ようやく原住民が暮らす秘境・紅香集落にたどり着きました。集落入口には温泉や野菜のイラストが描かれた看板が立っており、集落内の案内図も設けられているのですが、あまり手入れされていないのか、丈の高い草に埋もれていました。この図によれば、温泉は集落の奥へ抜けた川の傍にあるようです。


 
道なりに走って集落を通り過ぎると、上画像のような東屋があり、その傍に吊り橋が架けられていますので、東屋付近にバイクを停め、歩いてこの橋を渡ります。



吊り橋の上から北港渓の上流側を眺めてみました。梨山などが連なる山間に深い谷が刻まれ、その底を清らかな川が流れていますが、川幅に比べて川原が妙に広いということは、雨が降れば一気に増水して、河原の全てが濁流に呑み込まれてしまうのでしょう。川原に大きな岩が目立っていることからも、それは明らかです。


 
同じく吊り橋の上から、今度は下流側を眺めてみます。
真下には赤く塗装されたガーター橋が建設中で、重機が唸りをあげていたのですが、その橋の袂にはトタン葺きの簡素な小屋が建っており、小屋の前にはコンクリの池のようなものも見えます。この建物こそ、今回の目的地である「紅香温泉」です。記念すべき2000湯となるこの温泉は、果たしてどのようなお湯なのでしょうか。


後編へつづく
コメント (2)
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