温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

筌の口温泉 新清館 露天風呂「こぶしの湯」

2014年09月24日 | 大分県
 
圧倒的な美しさで多くの入浴客を魅了し続けている筌の口温泉の一軒宿「新清館」。
この日宿泊する予定だった筋湯温泉へ向かう途中に立ち寄ってみました。書籍やネットなどいろんな媒体で、こちらのお宿の露天風呂が紹介されており、一度その景色と同化してみたかったのです。


 
玄関から館内に上がって帳場でブザーを鳴らし、お宿の方を呼び出して直接湯銭を支払います。立ち寄りを快く受け入れてくださいました。ロビーには両替機と並んで、外来入浴客用の有料貸しタオル(100円)が用意されていました。両替機はコインロッカー用でしょうね。それだけ外来入浴が多いのでしょう。


 
露天風呂へは帳場から左へ進んで囲炉裏の部屋を抜け、濡れ縁から屋外に出ます。民芸調の内装で統一された囲炉裏の部屋は休憩室となっており、室内には昔懐かしい瓶のコーラ自販機と並んで、骨董品と思しき立派な箪笥が置かれていました。


 

濡れ縁でツッカケに履き替えて(ここにロッカーがあります)、木漏れ日が斑をなして照らしている雑木林の歩道を進んでゆくと、まもなく分岐にさしかかり、道標によれば、左へ向かうと女性専用の「かえでの湯」、右に折れれば混浴の「こぶしの湯」となるんだそうですが、男である私は右以外に選択肢はありませんから、ここを右へと進みました。余談ですが、この道標で書かれている字体って、九州の温泉地ではよく見かけます。とりわけ黒川温泉の成功以来、目立って増えているように思われるのですが、九州にはこの手の看板を得意とする職人さんでもいらっしゃるのでしょうか。


 
クヌギ林の中でひっそりと佇む瓦屋根の木造建築は「こぶしの湯」の脱衣小屋。全体的にこげ茶色に塗られており、先程の囲炉裏部屋にも共通するシックな和のテイストなのですが、造りは至ってシンプルで、裸電球ひとつだけが天井からぶら下がっている室内には、棚と籠が用意されているばかりです。ここって混浴なはずですが、この脱衣小屋は男女別に分かれていないため、男だったらともかく、女性ですとちょっと度胸が要るかもしれません。でもこまめに清掃されているのか、小屋内はとっても綺麗です。


 
おおっ! これがグラビアで何度も見て憧れた露天風呂か! まるで庭園の池を思わせる大きな露天風呂には、金気を含む山吹色のお湯が張られ、周囲を山の緑がやさしく包み込んでいます。そして木々の間から青い空が覗くと同時に、木漏れ日がスポットライトのように湯面を穏やかに照らしていました。息を呑む美しさです。とりわけ、木々の緑と湯船の黄色が補色の関係となっているため、色彩美が非常に際立っていました。



露天の最奥にある湯口からはお湯がドバドバ大量に投入されており、吐出されるお湯を手で受けようとすると、あまりの勢いの強さに、手のひらでお湯が全て弾かれてしまい、ちっとも掬うことができませんでした。注がれるお湯の量と勢いが想像いただけるかと思います。


 
脱衣小屋の傍には源泉が注がれている蹲居があり、ボディーソープ類が備え付けられているので、ここで体を洗うことができます。蹲居の表面には温泉成分の析出が分厚くコンモリおびりついており、お湯の濃さがビジュアル的に伝わってきました。



反対側には水の蹲居もあり、冷たく清らかな水が筧よりチョロチョロと落とされていました。


 
浴槽は岩風呂なのですが、槽内はコンクリでコーティングされており、これによって槽内形状を整えているようでした。また部分的に浅くなっている箇所もあり、そこでは岩肌がむき出しになっていました。浴槽縁の岩の表面にはサンゴのようにトゲトゲとした細かな突起状の析出がビッシリと付着しており、湯面のライン上では析出が庇状になっていました。



露天風呂の一部には屋根がかけられており、薄暗く落ち着いた環境でじっくりと湯浴みすることもできます。あいにくの天候の時も、この下でしたら湯浴みできますね。屋根下は浅くなっており、縁の岩を枕にして寝湯にすると、良い感じに体がフィットしてくれました。



ラッキーなことに、今回の訪問時には誰もおらず、私一人で終始独占できましたので、気兼ねなくのんびりじっくい湯浴みさせていただきました。景色としての美しさや、自然の色彩美はもちろん、露天の傍を沢が流れており、そのせせらぎと小鳥の囀りが心地よいBGMとなっていたため、文句のつけようがない素晴らしいひと時が過ごせました。

ちなみにお湯に関してですが、やや橙色や翠色を伴う山吹色に濁っており、浅いところでも底が見えないほど強い濁りを呈しています。九州で例えるならば鹿児島県の妙見・安楽・塩浸といった新川渓谷温泉郷でよく見られる重炭酸土類泉と同系のお湯でして、具体的にはギッシギシの引っかかる浴感に、甘塩味+炭酸味+金気+土気+石膏甘味、そして金気臭が感じられました。分析表によれば遊離炭酸ガスは750.0mgも含まれているんだそうですが、炭酸味は明瞭に感じ取れたものの、お湯の温度が高いためか、湯中における泡付きなどは確認できませんでした。
とはいえ惜しげも無く贅沢に源泉を大量投入&掛け流しているため、お湯の鮮度は素晴らしく、このお湯に入れただけでも十分に満足できました。
こちらのお宿には露天の他に、男女別の内湯もあるんだそうですが、今回は内湯に入っておりませんので、そちらは次回宿泊した時のお楽しみにしておくことにします。


ナトリウム・マグネシウム・カルシウム-炭酸水素塩・硫酸塩温泉 48.8℃ pH6.6 湧出量測定せず(掘削自噴・55m) 溶存物質2.809g/kg 成分総計3.559g/kg
Na+:290.0mg(37.14mval%), Mg++:120.0g(29.07mval%), Ca++:192.9mg(28.22mval%),
Cl-:242.0mg(18.94mval%), SO4--:420.0g(24.24mval%), HCO3-:1249.0mg(56.77mval%),
H2SiO3:211.1mg, CO2:750.0mg,

久大本線・豊後森駅もしくは豊後中村駅より日田バスの牧の戸峠行もしくは九重登山口行で「筌の口(大吊橋前)」バス停下車、徒歩4分(400m)
大分県玖珠郡九重町大字田野1427-1  地図
09737-9-2131
ホームページ

日帰り入浴7:30~23:00
500円
ロッカー(100円)・シャンプー類あり、

私の好み:★★★
コメント
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