温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

冷水坑温泉 冷水坑公共温泉浴室

2014年09月16日 | 台湾
 
台北近郊・陽明山の冷水坑は、市街から近距離にあるにもかかわらず、緑豊かな陽明山の自然と爽快な高原の景色を楽しめるため、週末にはハイキングやドライブなどで大勢の市民が集まってきます。今回私は土曜日の午後4時頃にレンタカーで訪れたのですが、駐車場には空き待ちの行列ができており、一帯は家族連れを中心にして多くの人びとで賑わっていました。私が車を駐めた第1駐車場(有料)と同じ区域にあるビジターセンターは見晴らしの良い展望台となっており、私も記念撮影の人々と一緒に景色を眺望したところ、眼下に台北市街を一望できました。


 
冷水坑の名物といえばこの牛奶湖(日本語に訳せば牛乳池)。
池の鉱泉が牛乳のような美しい乳白色を呈しているためこの名前になったのですが、牛乳みたいではなく、牛乳そのものが溜まっているじゃないかと信じてしまいそうになるほど、純白の池面は実に神秘的でして、私もこの画像を撮りながらつい「すげー」と口に出してしまいました。この山の裏手(北側)には前回取り上げた磺渓温泉や大油坑(噴気帯)などがあり、大油坑でかつて硫黄が採掘されていたように、この冷水坑でも以前硫黄鉱山が操業しており、硫黄採掘の影響でこの白い池が生まれたんだそうです。また池の周りの草原も、鉱山時代の名残なんだとか。



牛奶湖の奥には第2駐車場があり、第1駐車場より狭いためか、空き待ちの車列が長く続いていたのですが、この第2駐車場の左側に小さな建物が何棟が並んでいるのがおわかりいただけるでしょうか。今回の目的地はこの小屋であります(目的地の目の前にある第2駐車場が非常に混んでいたので、ちょっと離れているもののすんなり駐められた第1駐車場を利用したのでした)。


 

冷水坑は温泉地としても知られており、第2駐車場の前には上画像のような無料の足湯が設けられ、東屋の下を中心にして多くの方が足湯を楽しんでいらっしゃいました。すぐ近くに硫黄の白い冷鉱泉が張られている牛奶湖があり、また陽明山一帯の温泉は硫黄が強い傾向がありますから、てっきりここのお湯も硫黄泉に属するのかと思いきや、足湯から流下してくるお湯は濃いオレンジ色に染まっていました。この見た目から想像するに、相当金気が強そうです。



私は別に足湯を利用したくてわざわざここへやってきたわけではありません。足湯の一段上には誰でも無料で利用できる公共浴場があり、このお風呂に入るべく当地を訪れたわけです。


  
浴室は男女別に棟が分かれており、左(上)画像は女湯、右(下)画像は男湯です。男女別に分かれた内湯というスタイルからもわかるように、日本のお風呂のように全裸で入浴します。無料で利用できる上、陽明山の山々からハイカー達が下山してくるタイミングでもあったうえ、男女両浴室とも絶えず客の出入りがあり、実際の浴室内も空の棚を見つけるのに苦労するほど、大混雑でした。


 
入口にはバスの時刻表が掲示されていました。自家用車のみならずバスでやってくるハイカーも多いのでしょう。一方、湯屋の前など何箇所かに掲示されている営業時間案内は非常に重要ですので、その内容をここで紹介いたします。と言いますのも、この浴場では利用できる時間帯が限られており、以前の開放時間は6:00~21:00で、12:30~14:00は清掃時間のため利用不可でしたが、今年(2014年)4月9日より時間割が全面的に変更され、以下のように、開放時間中に挟まれる清掃時間が3回に増え、利用可能時間が短縮されました。なお毎月最終月曜は定休です。
  6:00~9:00 利用可
(9:00~10:30は清掃時間のため利用不可)
10:30~13:00 利用可
(13:00~14:30は清掃時間のため利用不可)
14:30~17:00 利用可
(17:00~18:30は清掃時間のため利用不可)
18:30~21:00 利用可
(21:00で閉鎖)
室内の掲示によれば、今年1~3月期における当浴場の水質検査の結果、浴槽に於いて規定を上回る菌類が検出されてしまったそうですから、これを受けて清掃時間を増やして対処しているのかもしれません。
 

 
室内は台湾の公衆浴場によく見られる脱衣浴室一体型でして、ご多分に漏れず室内は棚の下までビショビショなのですが、棚が並ぶ更衣ゾーンにはスノコ状の板の間となっており、他の公衆浴場のように着替えに難儀するようなことはありませんでした。荷物を収める棚はたくさんあるのですが、何しろその数に匹敵するほどの入浴客がいるため、上述のように空いている箇所を探すのに苦労したのですが、この時はちょうど退出するタイミングだったお爺さんに枠を譲ってもらって、なんとか着替えることができました。

入浴ゾーンの中央には腰掛け台のような物が据えられ、左の壁際には水道の蛇口が2つ並んでいます。浴槽は「沐浴区(shower area)と「泡湯区(Hot Spring Area)」に分かれており、前者には冷たい水(おそらくただの水道水)が張られていまして、この水を頭から浴びたり、あるいは水風呂としてそのまま入っちゃう人もいました。
一方、後者は英語表記の通りに温泉が張られており、容量としては約10人サイズで、窓の下から伸びる塩ビ管より屋外の足湯と同じ温泉がドボドボと音を立てて供給されていました。下手な小細工など一切ない、完全掛け流しであり、底から立ち上がっているオーバーフロー管の他、窓側の縁にある溝からの排湯も見られました。


 
金気を多く含むためか、浴槽をはじめとして温泉の飛沫がかかるところは悉く赤茶色に染まっており、浴槽に至っては元々の素材の色が判然としません。足湯では濃いオレンジ色に濁っていたお湯も、この浴槽では酸化がさほど進んでいないためか、やや赤銅色を帯びた貝汁濁り程度にとどめられており、まるで赤錆を帯びたかのように濃い色に染まるタイルの底が辛うじて目視できるほどの透明度を有しています。私の体感で湯加減は41℃前後といったところでしたが、壁に設置されているデジタル温度計は42℃と表示していました(わずか1℃の差ですが、42℃には達していなかったはずです)。案の定というべきか、非常に金気が強く、それでいて炭酸味も多く含まれ、湯船に1分でも浸かっていると、肌に細かな気泡が付着しはじめ、やがて全身泡だらけになります。この泡付きは結構強力でして、入浴中は何度拭ってもその度に気泡の付着が見られました。

なお上述のように体に浴びるための冷水はあるのですが、温水のシャワーや水栓などは無く、洗い場も限られているため、利用者はみなさん水で我慢するか、あるいは用意されている大きなバケツに湯船から(あるいは湯口から直接)お湯を汲み、スペースに余裕があるところへ移った上で、バケツのお湯を使って体を洗っていらっしゃいました。浴室の窓の外側には浴槽も水栓も何もない、ただ腰掛けが取り付けられているだけの半屋外スペースがあるのですが(右(下)画像)、窓から腕を伸ばせば湯口のお湯を直接汲めるので、ここはバケツでお湯を汲む人にとっての洗い場となっており、それゆえ床は温泉によって赤茶色に染まっているのでした。わざわざバケツで汲む手間があるということは、中には面倒がって掛け湯せずに湯船へドボンと入っちゃう人もいるはず。もし浴槽の水質を改善したいなら、清掃時間を細かく設定することも大切でしょうけど、湯船に浸かる前にしっかりと体を洗える設備を整えないと、抜本的な改善にはつながらない気もします。

とはいえお湯の濃さは非常に素晴らしく、こんなお湯は日本でもなかなかお目にかかれません。入浴中は肌にギッシギシと強い引っかかりを感じ、湯上り後も全身に粉がまぶされているかのようなザラつきやベタつきが残りました。また炭酸による温浴効果のためか温まりもパワフルで、大して熱くないお湯にもかかわらず、湯上がりはしばらく汗がひきませんでした。場所柄、私が訪れた週末には混雑するようですが、周囲に民家があるような場所ではなく、あくまで山間の観光地ですから、時間帯を外せば意外とゆっくり寛げるかもしれません。
なお女湯に関しては、入浴の際に水泳帽かシャワーキャップなどを被るなどして、髪の毛が湯船に入らないようにしないと、マナー違反であるとして常連さんから厳しく指摘されるとの情報もあります。利用の際には予めその手のものを用意しておきましょう。お湯の質にこだわる人には是非おすすめの、個性の強いお湯でした。


MRT淡水線・剣潭駅より首都客運の小15番バス「天崗」行で「冷水坑」バス停下車
台北市士林区菁山路101巷  地図

無料
利用時間は以下のとおり。毎月最終月曜定休
6:00~21:00(9:00~10:30・13:00~14:30・17:00~18:30は清掃時間のため利用不可)
備品類なし

私の好み:★★★
コメント
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