温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

六日町温泉 大和屋旅館

2014年09月02日 | 新潟県

鉄道で旅をしている際、駅から徒歩圏内にある温泉入浴施設は、旅の汗を流すための貴重な存在となるのですが、徒歩圏内どころか駅から僅か数分で行けるのならば、貴重どころか神のように崇めたくなってしまいます。歩く距離が短いだけでなく、駅までの往復所要時間がはっきりわかる上、入浴時間も長く確保できるからです。行動する時間が決められている鉄道旅行にとって、目的地が駅からどれだけ離れているかという点は、旅程を計画する上でとても重要な関心事であります。

新潟県六日町温泉の「大和屋旅館」は、上越線と北越急行ほくほく線が乗り入れる新潟県・六日町駅から駅前商店街のアーケードを歩いて僅か1~2分のところにあり、いわゆる昔ながらの駅前旅館なのですが、六日町温泉のお湯を掛け流しにしており、しかも日帰り入浴も受け入れているという、旅人の強い味方であります。お宿の玄関はタクシー会社の事務所に隣接しており、あたかもタクシー会社から間借りしているかのようにひっそりと佇んでいるため、気をつけないと見逃して通り過ぎてしまうかもしれません。


 
私が訪れたのは平日の午後4時頃だったのですが、玄関にて声をかけて入浴のみの利用をお願いしますと、お宿の方は一旦お風呂の様子を確認した上で、快く受け入れてくださいました。浴室は細長い廊下を進んでいった突き当たりにあります。館内に掲示されている温泉利用許可証によれば、少なくとも昭和60年頃は男女別に分かれていたようですが、戸のガラスに「婦人風呂」と朱書きされたお部屋は閉鎖されており、現在は一室のみを貸切で使っているようです。このため、入口付近には「只今御婦人の入浴中です。殿方は、しばらくお待ち下さい」と記されたプレートが用意されていました。女性客が利用する時はこの札を戸にぶら下げておくのでしょう。


 
納戸のような質素な脱衣室には、小さな棚と籠があるばかりです。家庭的な雰囲気の強い昭和の中小規模温泉には、えてして健康器具が備え付けられているものですが、こちらもご多分に漏れず、股を開いてストレッチする健康器具が置かれていました。お風呂に入って体を温めた後に使うと、筋肉が伸びやすくなるのかな。なお壁に吊り下げられている額縁には、完全掛け流しである旨を記した案内が掲示されていました。


 
シンプルなレイアウトのこぢんまりした浴室は、結構年季が入っているようですが、あまり草臥れている様子はなく、古いながらもきっちりと管理されていることが窺えます。洗い場にはシャワー付き混合水栓が2基並んでおり、異なるメーカーのシャンプーやコンディショナーなどが無造作に置かれていて、どことなく家庭的な雰囲気も感じられます。


 
室内には換気扇など強制的にベンチレートする機器が無い代わりに、天井下の壁には湯気抜きの丸い穴があいており、天井は緩やかな曲線を描くドーム状になっていました。穴つながりで申し上げますと、後述する湯船のお湯は、浴槽を満たした後に、浴槽縁の下にあけられた穴からタイル床へ排出されていました。


 
浴槽は大凡3人サイズで、槽内にはエメラルドグリーンのタイルが貼られ、縁には黒御影石が用いられています。浴槽隅の湯口からはトポトポと源泉100%のお湯が注がれており、上述の縁下にあいた穴から常時排湯されているとともに、人が湯船に入ると勢い良く縁の上から溢れ出てゆきます。槽内に吸引口は見られず、脱衣室で表示されているように加温加水循環消毒の一切ない完全掛け流しの湯使いに間違いありません。鮮度も良好です。

こちらのお宿には3つの源泉(7号井・12号井・13号井)を混合したお湯が引かれており、見た目は無色透明で、湯中では微細な茶色い湯の花らしき浮遊物が舞っていました。匂いや味に関してはほぼ無臭で(芒硝や土類系の匂いが微かにしたような気もします)、微かに塩味を帯び、お湯を口の中で転がすと、そこはかとない甘露な味わいも口腔の奥のほうで感じられました。湯船に体を沈めると、とてもまろやかで優しいフィーリングに包まれ、体への当たりがソフトですので、じっくり湯船に浸かっていられます。お湯から上がった後はよく温まり、それでいて爽快感も得られました。
温泉というものは、えてして濃いお湯に世間の関心が行きがちですが、六日町温泉のように無色透明でマイルドな単純泉こそ実に味わい深く、それでいて繊細ですから、湯使いにちょっとでも問題があるとたちまち浴感に影響が及んでしまいます。それゆえ、こちらのお風呂のように完全掛け流しで提供してくれると、お湯の持つ優しさがはっきりと感じられますから、湯めぐりを趣味とする私のような人間にとってはとても貴重な存在です。その上、駅の至近にあるのですから、旅する身としても助かります。鉄旅と温泉の両方が好きな私にとって理想的な施設でした。


7号井・12号井・13号井混合泉
単純温泉 47.6℃ pH7.91(試験室) 溶存物質841.4mg/kg 成分総計843.0mg/kg
Na+:239.0mg(79.94mval%), Ca++:44.1mg(16.91mval%),
Cl-:381.9mg(82.40mval%), SO4--:31.0mg(4.97mval%), HCO3-:76.3mg(9.56mval%), CO3--:6.6mg,
H2SiO3:28.3mg,
(平成16年10月26日)
加水加温循環消毒なし

JR上越線および北越急行線・六日町駅より徒歩1~2分
新潟県南魚沼市六日町139  地図
025-772-2070

日帰り入浴時間不明
500円
シャンプー類あり、他備品類見当たらず

私の好み:★★★
コメント (4)
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