温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

玖珠温泉 北乃園温泉

2014年09月23日 | 大分県
 
鄙び系の共同浴場が好きな温泉ファンから絶賛されている玖珠町の「北乃園温泉」へ行ってまいりました。玖珠消防署付近から国道210号より1本南側の裏へ入った路地沿いにあるのですが、ネット上で皆さんが仰られているように、確かに予め場所がわかっている方以外には見つけにくい立地でして、路地には上画像のような看板が立っているのですが、初めのうちはそれに気づかず通りすぎてしまい、何度かその界隈をウロウロしている内にようやく看板の存在に気付きました。看板の矢印に従ってアパートの駐車場を入ってゆくのですが、いつも湯めぐりしていてもアパートの敷地内に入り込んでいく機会なんて滅多にありませんから、本当に入って良いのかちょっと躊躇してしまいました。


 
今回の訪問に際して参考にしたサイトの一つに「九州八十八湯めぐり」があり(私は参加していませんが…)、そこには湯屋に関して「仮設風」と紹介されているのですが、駐車場の奥に佇む実物を目にして、「なるほど、言い得て妙だ」と納得してしまいました。木目調のトタン板で囲われた木造の渋い佇まいは、湯屋というより納屋に近いものがあり、一般の方ですと利用を躊躇ってしまうかもしれませんが、寧ろそれだからこそマニアの心はくすぐられてしまいます。湯屋の周りには車3台分の駐車スペースがあり、訪問時は全て空いていましたので、レンタカーの軽自動車を停めやすいところに駐車させていただきました。なお他の駐車スペースはアパート居住者用ですから、空いているからと言って勝手に使わないよう要注意です。
ちなみに、辻向いの邸宅には大きな貯湯タンクがあるのですが、おそらくそこがオーナー宅であり源泉地でもあるかと思われます。


 
 
前回取り上げた「ひまわりの湯」と同様、こちらも九州の温泉共同浴場に多く見られる無人の施設でして、庇の下にはカウンターが設けられており、湯銭はこの一角に設置されている賽銭箱へ納めます。またカウンターにはチラシ類のほか「九州八十八湯めぐり」のスタンプも用意されていました。温泉を愛する多士済々がスタンプを集めるべくここへやってきているのでしょう。更には、常連さんがお風呂道具を置いておくためのネーム札(木札)も用意されていました。生活臭が漂う温泉って魅力的ですね。


 
入口は男女別に分かれており、男湯は庇の奥の方にあるのですが、扉を開けた瞬間、思わず「狭ぇーッ」と口にしてしまいました。別府の共同浴場みたいに脱衣室と浴室が一体化しているわけではなく、ちゃんとセパレートされているのですが、その床面積たるや1.5~2畳程度しかなく、1人でも先客がいればもういっぱい、外で空くのを待つほかありません。そんな狭さのためか、括り付けの棚に用意されているカゴは5つしか無いのですが、それ以上用意しても施設として受け入れるキャパが無いので、5つでちょうど良いんですね。でも狭い空間ながら、壁には扇風機が取り付けられており、湯上がりにしっかりクールダウンできるのが有り難いところです。


 
浴室の戸を開けると、温泉から放たれるミシン油のような芳しい匂いが香ってきました。室内は床も浴槽もコンクリ打ちっぱなしで、外観の渋さに見合ったシンプルな造りなのですが、それでは温泉風情に欠けると判断されたのか、壁には竹垣のような装飾が施されている他、床には化粧と滑り止めを兼ねた小石が埋め込まれていました。洗い場にはシャワー付き混合水栓が1基、そして水とお湯の単水栓のセットが1組、計2箇所が横に並んでいます。


 
窓からの陽光を受けて真鍮色に輝く湯船は3~4人サイズで、洗い場の床と同様にこちらもコンクリ打ちっぱなしながら小石が埋め込まれており、長年にわたって温泉成分がこびりつくことによって槽全体が黄土色に薄っすらと着色されているようでした。また浴槽の上は模造の竹垣で男女が仕切られていますが、槽自体は女湯と一体になっており、男女双方から仕切りの下へ手を伸ばせば簡単に握手出来ちゃいます。

トゲトゲ状の析出がこびりついている湯口のパイプから、トポトポと音を立てながらお湯が注がれており、湯船を満たしたお湯は縁から絶え間なく溢れ出ていました。加水加温循環消毒など一切ない、純然たる掛け流しです。お湯は薄い黄土色を帯びており、湯口のそばに置かれていたホーローのコップでテイスティングしてみますと、微かな塩味ととも薄い金気味や重曹的なほろ苦みが感じられました。また上述のように、お湯から漂うミシン油のような香りが室内に充満していました。
重曹の他にメタケイ酸が多く含まれているためか、湯船に入った時に肌へ伝わるツルツルスベスベの浴感が実に気持ち良く、ツルスベの強さは美人の湯と称したくなるほどです。湯上がりの粗熱の抜けも良好でして、あまりの浴感の良さに後ろ髪が引かれ、この時の私は一旦お風呂から出たにもかかわらず、気づけば再び湯船へ戻っていました。

鄙びた渋い佇まいもさることながら、芳香漂う完全掛け流しのお湯に浸かった際の、極上の浴感が実に素晴らしく、こんな温泉に頻繁に入れたらさぞ幸せな日々が送れるだろうなと、ご近所の方に羨望の念を抱かずにはいられませんでした。九州の温泉愛好会が絶賛するのも頷けます。温泉ファンが理想とするあらゆるファクターを兼ね備えている、ブリリアントな共同浴場でした。


北園温泉
ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物温泉 51.9℃ pH7.5 59L/min(動力揚湯・600m) 溶存物質2.490g/kg 成分総計2.580g/kg
Na+532.0mg(84.59mval%), NH4+:20.0mg, Ca++:17.6mg, Fe++:2.8mg,
Cl-:474.0mg(41.88mval%), Br-:1.1mg, HCO3-:1130.0mg(58.01mval%),
H2SiO3:241.0mg, CO2:90.2mg,
加水加温循環消毒なし

JR久大本線・豊後森駅より宝泉寺方面へ行くバス(玖珠観光バス)で「上長野」バス停下車、徒歩4分(300m)
(時刻表などは大分交通のHPを参照)
大分県玖珠郡玖珠町大字大隈字小坪231-1  地図
0973-72-0284

10:00~22:00
200円
備品類なし

私の好み:★★★
コメント (2)
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