温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

東埔温泉 温泉源頭の露天風呂

2014年09月10日 | 台湾
 
台湾・南投県の埔里から路線バスを乗り継いで、同県の南部にある東埔温泉へやってまいりました。昨年に引き続き2回目の訪問です。前回は温泉街からちょっと外れた施設で入浴しており、温泉街では未湯でしたので、今回は温泉街で湯めぐりしてみることにしました。原住民ブヌン族が暮らす山奥に湧くこの出で湯は、日本統治時代から存在が知られていますが、時代の潮流に取り残されてしまったのか、現在は中途半端に草臥れた旅館が肩を寄せ合うように建ち並んでいるばかりで、あまり活気が感じられません。私が訪れた7月中旬平日の午前中は、お客さんなんて殆どおらず、あちこちで閑古鳥が啼いていました。

温泉街から山に向かって東の方を眺めると、当地の観光名所である「彩虹瀑布」が、絹糸のように細長く白い線を描きながら落ちているのが見えるのですが、この滝の近くには東埔温泉の源泉があり、各旅館ではここからお湯を引いて客に提供しています。そしてその源泉には湧出したての温泉を張る露天風呂があるので、お湯にこだわる私としては是非ともこの源泉露天風呂へ行ってみたく、前回訪問からたった1年で再び当地を訪れたのでした。


 
源泉の露天風呂は、「彩虹瀑布」へ向かう遊歩道の途中にあるとのことですので、まずは温泉街の中程に立っている道標に従って「彩虹瀑布」方向へと進みます。滝への遊歩道はほぼ一本道で迷うことはないのですが、山の斜面を上がってゆく登り一辺倒であり、道標から早速急な坂がはじまります。


 
滝の飛沫に陽の光が当たると、まるで虹のような輝きを放つことから「彩虹瀑布」と名付けられたんだそうですが、その様子をイメージしていると思しきこの壁の地点で左折し、滝まで伸びる一本の遊歩道へと入ってゆきます。なおこの壁の隅には「温泉源頭」と手描きされた看板が出ていますから、それさえ確認できれば迷う心配はありません。


 
延々と続く登りの急坂は、途中から階段になりました。真夏の台湾でこんな道を登っているとたちまち全身汗だらけになってしまいますが、でも森の茂みが灼熱の陽光を遮ってくれたので、炎天下でこんがり丸焼きになるような状態は避けられました。上述のように、温泉街の各旅館は山の上の源泉からお湯を引いて営業しているため、坂道沿いには引湯用のホースがウジャウジャ這っており、場所によっては頭上を越えています。台湾の温泉街では、えてしてこの手の雑然とした光景が見られますが、もうちょっと整理できないものですかね。観光のウキウキ名所へ向かう気分も、殺風景な配管類のおかげで幻滅しちゃいますよ。


 
登り始めてから10分強いで、関係者用の駐車場を通り過ぎます(一般車は通行禁止)。この辺りで登ってきた方向を眺めると、下方の温泉街では旅館などの建物が小さく犇めきあい、その彼方に雄大な山稜の爽快な見晴らしが得られました。あの稜線は阿里山へ連なっているのかな。


 
更に10分ほど登り続けると、源泉露天風呂を所有している「山之谷温泉民宿」に到達です。歩道は彩虹瀑布へ向かって更に奥へ続いていますが、今回はお風呂に入ることが目的なので、歩くのはここまで。早速宿の受付に入って声を掛けますが、一向に誰も現れる気配がありません。一応玄関先には「泡湯(入浴のこと)150元」と書かれているので湯銭が必要なはずなのですが、ゲートが開いていましたので、どなたかが現れた段階で後払いすればいいやと考え、取り敢えず敷地に入ってみることに。


 
露天風呂へ向かう通路には「東埔 温泉源頭」と書かれたウェルカムゲートが立てられており、それを潜って源泉へと向かいます。なおゲートの裏側には「米呼米尚」と記されており、これはブヌン族の言葉で「ありがとう」という意味なんだそうです。


 
ゲートからステップを数段下った先の、山の斜面に囲われた小さな窪地のような箇所に、今回の目的地である露天風呂がありました。でも様子がおかしいぞ。浴槽は3つ段々になっているのですが、最も広い下段槽はお湯が半分も溜まっておらず、最上段の小さな槽は殆ど空っぽ。源泉に最も近い中段の中浴槽だけは、かろうじて入浴できそうな嵩まで溜まっていました。台湾の温泉業界にとってオフシーズンである夏、しかも平日の午前中という時間的な条件ゆえ、この時は開店休業状態で、お湯を抜いてしまっていたのでしょう。


 
露天風呂の奥は洞窟のようになっており、その岩肌には温泉マークが描かれています。どうやらこの洞穴の奥から温泉が自噴しているらしく、清らかに澄み切った無色透明のお湯が滔々と流れており、洞穴の湯溜まりから浴槽へ落ちる流路には、イオウ由来の白い湯の花が付着していました。


 
この源頭に近づいて、正面や真上などから何枚か画像を撮ってみました。とても清らかであるため、お湯が青く見えます。


 
洞穴の出口でデータを計測したところ、温度は42.3℃、pH8.6でした。アルカリ性を示すこのお湯からは、重曹味や土類感、そしてタマゴ的なイオウ感が得られました。味や匂いは強くなく、各知覚ともほんのりと感じられる程度ですが、それが却ってお湯の透明感とマッチしており、優しく上品な質感が伝わってきました。



上述の洞窟以外にも源泉があり、岩の小さな穴から湧く上画像の源泉は最上段の槽へと注いでいるのですが、湧出量がかなり少なくてぬるく、お湯も淀んでいて動的な気配があまり感じられませんでした。



湯船の栓は抜かれていても、お湯は途絶えることなく湧き続けてるので、その湯を真下で受けている中浴槽だけは一定以上の嵩がキープされており、そこに溜まっている澄んだお湯に手を突っ込んでみたところ、入らなきゃ勿体無いくらいに絶妙な湯加減でした。それをただ指を咥えて見ているだなんて、私にとっては拷問に等しい。このまま帰るのはあまりに悔しすぎる…。
というわけで、宿の方には申し訳ないのですが、その場で水着に着替えてから、肩まで浸かれる深さがあった湯口直下へ実際に入ってみました。常に湧きたてのお湯が落とされているだけあって、鮮度感は抜群、実に滑らかで軽やかなフィーリングが肌に伝わり、スルスルとした滑らかな浴感が楽しめました。時折湯面から漂うタマゴ臭も堪りません。こんな澄んだお湯に浸かっていると、自分の心身まで清浄されそうです。しかも浴感が良いために後ろ髪が引かれてしまい、湯船から出ようにも出られず、誰も来ないのを良いことに、1時間弱も浸かり続けてしまいました。
温泉街からわざわざ急な坂が20分かけて登ってくる価値がある、素晴らしいお湯でした。


泉質名など不明

台鉄集集線・水里駅の近くにあるバスターミナルから員林客運バスの東埔行で終点下車、徒歩25分(東埔バス停から温泉街まで徒歩約3~4分)。
山ノ谷温泉民宿 南投県信義郷東埔村82号  地図
049-2701841

営業時間不明
150元
備品類なし

私の好み:★★+0.5
コメント (2)
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