(2023年6月訪問)
現在は由利本荘市に合併されてしまった秋田県旧山内町の山里に、浴感が魅力的な鉱泉があるらしいので、鉄道の旅の途中、レンタカーを借りて行ってみることにしました。由利本荘の市街地から芋川に沿って国道105号を東へ進み、早坂トンネルを潜る手前の十字路を右折。あとはひたすら道なりに長閑な田園地帯を進めば良いのですが、途中から人里を離れて山間部に入り、しかもどんどん坂を上がってゆくのです。「こんなところに本当にあるのか」と不安を覚えながら車を進めてゆくと、突如目の前に一軒の鉱泉宿が現れました。これが今回の目的地である「かすみ温泉」です。昭和30~40年代から時計の針が停まっているかのような外観で、営業しているのか心配になりますが、比較的新しい観光の幟が立っているところを見ると、今でもちゃんと営業している模様。駐車場は玄関の前を通り過ぎた先の奥にあります。
こちらが玄関。今回は日帰り入浴利用です。
ドアを開けて入浴をお願いしますと、女将のおばあちゃんが快く受け入れてくださいました。外観と同様、館内も昭和の懐かしい雰囲気が横溢しています。
お風呂は帳場の右側にあります。昭和な建物だからと侮るなかれ、トイレは洋式も用意されており、綺麗で快適に使えます。
山あいの鉱泉宿らしく、脱衣室はシンプルながらきちんとお手入れされており、ドライヤーも用意されていて、問題なく使えます。なおロッカーは無いので、貴重品は車の中に入れておいた方が良いかも。
お風呂も奇をてらわない、シンプル・イズ・ベストな構造。
向かっておくの窓下に浴槽がひとつ据えられ、その手前の左右両側にシャワーが1個ずつ取り付けられています。なおシャンプー類の備え付けも有ります。
浴槽は3人も入ればいっぱいになってしまう程度の大きさです。冷鉱泉なので当然ながら加温されており、循環も行われています。窓下の側面に設けられた2つの吐出口から循環したお湯が出ており、右側の側面にはお湯の吸引口もあります。
されマニア的に注目したいのが、浴槽の左側にある2つの水栓。右側からは加温された鉱泉が、左側からは非加温の鉱泉(源泉)が出てきます。
加温循環している鉱泉のお湯ですから、湯船のお湯や浴室内に漂う湯気からは、循環湯らしい独特の臭い(語弊を承知で申し上げると埃っぽい臭い)がするのですが、非加温冷鉱泉の水栓を開けると、芳しいタマゴ臭とともに鉱物油のような香りも一緒に放たれ、鉱泉を口に含んでみるとタマゴ味のほか、ゴムみたいな味や焦げたような味も同時に感じらるのです。
この鉱泉で特筆すべきは極上のニュルニュル浴感。とにかくツルスベ感が凄く、水栓から出てくる冷鉱泉を指先で触っただけでもその滑らかさがはっきりと分かります。源泉そのままの冷鉱泉のみならず、加温循環された湯船のお湯でも同様で、ウナギ湯と称しても決して過言ではありません。分析表によると炭酸イオンが55.7mg含まれ、且つpH9.6というはっきりとしたアルカリ性でもありますので、こうした要因がウナギ湯と称したくなるほどの強いニュルニュル感をもたらしているものと思われます。
訪問時は湯船の加温が強かったため、ニュルニュル感を楽しんで長湯しているうちに逆上せそうになってしまいましたが、火照った体をクールダウンすべく、桶に冷鉱泉を汲んで頭から浴びたら最高に気持ち良く、心身がシャキッと蘇りました。
物価高騰の昨今、過疎地に湧く冷鉱泉を沸かし続け、しかも400円という安さで営業しているだなんて、ちょっと信じられません。この冷鉱泉は入る価値があり、わざわざ来た甲斐があった。
ちなみに、お宿の名前の由来は、建物裏手にある秋田県の天然記念物「かすみ桜」。
樹齢400年という老木で、幹周り5メートル、樹高約14メートルという大木でもあり、それゆえ枝ぶりが大変立派。
きっと春にはすばらしく綺麗なのでしょう。
お風呂の窓からも「かすみ桜」が見えますので、その季節になればまさに天国のようなお風呂になりそうです。
いわゆる規定泉(総硫黄の項により温泉法が規定する鉱泉に適合) 11.9℃ pH9.6 溶存物質0.5854g/kg 成分総計0.5854g/kg
Na+:177.2mg(97.72mval%),
OH-:0.7mg, HS-:0.9mg, S2O3--:0.4mg, HCO3-:279.5mg(57.97mval%), CO3--:55.7mg(23.54mval%),
H2SiO3:16.6mg,
(平成30年12月12日)
加水なし
加温・循環・消毒あり
秋田県由利本荘市葛岡字落合43
0184-66-2418
紹介ページ(由利本荘市観光協会公式サイト内)
日帰り入浴時間不明
400円
シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★★