ブルーベルだけど

君にはどうでもいいことばかりだね

研究室の壁の向こうに存在した暗室

2011-10-24 01:22:45 | 日記

その日はなぜか学内が賑やかだった。 いつもと雰囲気が違う生協前の広場を抜け、茶髪の僕は同風の友人と一緒に、ぷらぷらと階段教室に吸い込まれる。

どうやら某大学学長に栄転が決まった教授の最終講義があるらしい。 入口の仰々しい看板を見て初めて知った。

教室に入ると、程なくその教授が現れた。  大きな拍手が沸く。  講義が始まると、いつもは出席の証となる申告用紙が配られるタイミングを見計らって入室する空間が静まり返った。

講義は短く、1時間程度だったろうか? その話は面白く、随所で笑いが巻き起った。 そして講義が終わると割れんばかりの拍手が巻き起こる。 皆、立ち上がっていた。

 

それから1年経ち、ゼミ選択を迫られる時期になった。 怠惰な僕は、同風の友人から「卒論が要らないから俺も入るし ・・・ 」と、ある研究室を勧められた。 ゼミの情報も学業への積極性もなかった僕は唯一の選択理由に乗っかった。 そのゼミは、最近教授の交代があったらしい。

運良く迎え入れられた僕は、ある日、研究室を入った向かいの壁に、更にもう1つのドアがあることに気付いた。 訊けば、暗室だという。

 

そこは、あの最終講義を行った教授の研究室だった。 学校と疎遠だった僕は、それぞれの話が結びつかないまま、何も知らずにゼミ入りをしていた。 僕は、呆れ果てた仲間や助手の方から様々なことを教えてもらった。

小学時代の教科書に載っていた探検隊の写真は、その教授が撮影したものだった。 ドアの向こうにある暗室の意味をようやく理解できた僕は、なぜか視界がぼやけて見えなくなった。

 

月日は流れ、間接的ではあるけど、その教授と空間を共にできた感動さえ忘れてしまっていた僕は、若かりし日のあの教授が隊員を務めた第一次観測隊の話がドラマ化されることを知る。

第一話、第二話とも駆け足ながら、その分弛みがなく、なかなか良い。 但し、どうせ登場人物も内容も現実とは乖離しているんだろうと、隊員名簿をネット検索した瞬間、そもそもの目的は消失する。

 

そこには、あの教授の氏名が ! それは当たり前の話 ・・・ でも、元々スケールが大き過ぎて夢のような話だったし、時間の経過と共に更に現実感が希薄になっていた。 突然、熱を帯び、色彩を放ち出したその5文字は、暫くするとぼやけて見えなくなった。

 

ドラマ 『 南極大陸 』。 続けて観てみようと思う。

 

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