このシリーズは従来、ウーファーにローパスを介せずフルレンジ接続としていたため中高域に独特の “荒れ” があり、これがブラシの 「バシャッ!」 という打音やサックスの胴鳴り、金管の劈くニュアンスなどに麻薬的なリアルさを纏わせていました。
反面、この “荒れ” はバイオリン、ビオラ、チェロ、更にはオーボエ、ハープにまでササクレを生じさせ、デリケートな表現を奪い、生音とは程遠い耳障りでヒステリックな騒音へと変性させてしまうのです。
こういった事情から、「ジャズならこのメーカー、クラシックなら某有名同軸メーカー」 といった、かつての定評が成立したのでしょう。
一方、このシリーズのニューモデルではウーファーにネットワークを通しています。 構成ユニットに無理のない低歪帯域を担当させたことで見事、ジャンルを問わないオールマイティーなモデルへと変貌を遂げました。
但し、この変化は1つのリスクを伴います。 それは 「オールマイティー 或いは クラシック向けのモデルを得意とするメーカーとの競合」。 簡単に言えば 「別に、このメーカーでなくてもいいんじゃない?」 ということ。
さてさて、その実体は ・・・ いえいえ、そんなリスクはありません。 このメーカー独特の線の太さ、元気さ、リアルさは十分残っているのですから。
そう言えば、アナログディスクを再生するカートリッジに同様の現象が見られました。 低~中価格商品では抑揚を欠きつつ、各社特有の様々なキャラクターを発揮するも、高価格帯になると挙って滑らかかつ細やかで表情豊かになります。
ところが、“同じ頂点を目指すのに辿ってきた道筋” に起因するそれぞれのカラーは残っています。(僕は、ガラス細工のような繊細さのある SATIN が好きでした) 今回購入したメーカーは、価格帯に関係なくこのアレンジを施しているようです。
長年、このメーカーを愛してきたファンにとっては 「無意味な」 モデルでしょう。 購入者レビューには 「ハイコストパフォーマンス」「バーゲンプライス」 との賛美が並びますが、その力量は決して価格帯を超越したものではありません。
しかしながら、約1年間試聴を重ねた結果、僕の “Primary Standard” に近いトーンであること、限られた壁面を背に設置できること、気軽にセッティングを追い込んでいける重量、サイズであること、という条件を満たすスピーカーはこれだけでした。
ディスコンなら4318という選択肢もありましたが中古は嫌 ・・・ 残念ながら、現行の後継機種4319はハイハットが不自然にシャカシャカ鳴るので、どうにも好きになれません。
ちなみに、セッティングに手間がかかるのも、このメーカーならでは。 既に通算で30時間以上を費やしていますが、まだまだです。(笑)
ところで、バッフル上のユニット配置がこのモデルのように左右対称で、設置環境上 Lch ←→ Rch 間の距離がとれない場合、音場の広がりに有利になるよう、“ツィーターを外側に” ?
いいえ、ボーカルのリアルさを出来る限り損なわないよう “スコーカーを外側に” ですね。 高域の側壁反射を少なくすることで音像ボケやムラも抑制できるし、音場は素性の良いスピーカーならセッティングで何とかなりますから。
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