そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

常識に還るということ

2010-01-22 | 政治と金

雑誌「世界」の2月号に、寺島実郎氏が「常識に還る意志と構造-日米同盟の再構築に向けて」という論文を書いていいる。彼の意見はこれまでいろんな機会で聞くことがあったが、この論文は秀逸である。我々が知らなかった日米関係を、明快に分析している。

先ず事実認識として、①4万人の米軍と東京23区の1.6倍の米軍基地があること ②米軍の大規模海外基地の上位5つのうち4つが日本にあること ③地位協定によって全国どこにでも基地を置くことができ、首都圏に横田、横須賀、座間、厚木など基地があること ④米軍駐留経費の7割を受け入れ国の日本が負担していること ⑤占領軍時代の行政協定を引きずって主権が希薄になり日本側の負担が拡大していること これらの幾つを我々は認識した上で、日米関係を論じようとしているかと、寺島氏はくぎを刺す。

更にその上で、日米安保条約は講和後の占領軍撤退の空白を埋め、とりあえず西側に与するとした暫定的なものであって、情勢の変化で見直すことを前提としたものであったと吉田茂が回想している。9年後の1960年に日本は、岸内閣で鮮明にアメリカの配下に位置することを決定たのである。

日米安保条約は冷戦構造の遺物である。ソビエトの崩壊を受けて同じ敗戦国のドイツは、93年に在独米軍を26万から4万に縮小した。日本はほとんど無策のまま、宮澤、細川、羽田、村山、森と短命内閣が続きその間に社会党が崩壊した背景もあって、見直されることもほとんどなく今日に至っている。

その結果、誰が見ても不条理なアフガン・イラク戦争を、無条件でアメリカの後追いをするような形で自衛隊を派遣したのである。アメリカですら戦争反対のオバマに交代し、イギリスは調査委員会を設けていイラク戦争の検証をしている。日本は政権交代後も、一極支配のアメリカに追従した戦争の検証もされていない。

米軍基地の経費の7割を負担するやり方は、逆にアメリカに正常な判断を下さなくなっている。日本はアメリカにとって最も安上がりの場所であり、兵士にとっても居心地のいいところでもあるのだ。このことが、今や米軍が日本に駐留する大きな理由になってしまっている。寺島は、日米安保に群がる腐臭を漂わせる人たちと呼んでいいる。

インド洋上の米軍艦船への給油を止めると、日米関係は破綻すると断じた人たちは、今また普天間を海外に移すと日米関係は破綻すと声高に叫んでいる。彼らは、ブッシュ時代のアーミテージなどの高官を発言を引用しているだけである。

日本を取り巻く「脅威」も希薄である。北朝鮮の暴走は全否定はできないが、世界に共鳴者を探すこともできず、冷戦孤児と化している。中国は、今やアメリカと「米中戦略経済対話」の閣僚級会談を始めた。経済関係も良好な状況にある。

日本は冷戦後の、現代における条約改正の局面にあり、常識的な問題意識で向かい合うべきと結論している。我々はあまりにも、左右から日米安保条約を挙げ奉るか、こき下ろすかの作業を繰り返し過ぎてきたのではないか。

コメント (2)
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