半透明記録

もやもや日記

お知らせ

『ツルバミ』YUKIDOKE vol.2 始めました /【詳しくはこちらからどうぞ!】→→*『ツルバミ』参加者募集のお知らせ(9/13) / *業務連絡用 掲示板をつくりました(9/21)→→ yukidoke_BBS/

ひらめき

2008年07月04日 | 読書ー雑記



「休載」のお知らせをしたばかりだというのに、今日はなんだかいやに静かで夏のような日差しのわりに涼しい風が吹くなか読書をしていて、ふとひらめいてしまったことがあるので、ここはやはり書いておくことにした。

それに、「別に何でもないから、心配しないでください」と書いたにもかかわらず、「大丈夫ですか?」と心配するメールをいただいてしまったこともあり、人にきちんと伝えられない文章しか書けないでいるくせに、休んでいる場合では到底ないなと考え直したということもある。こういうまどろっこしい文を書くからいけないのかもしれない。


今日ひらめいたことというのは、こういうことだ。

今日の私はこのあいだようやく手に入れた白水社の『フランス幻想傑作集』を読んでいたのだが、どれもこれもあまりにも面白いので、後半にさしかかるあたりでは手がわなわなと震えてしまった。
読書は私にさまざまなものを与えてくれるが、ことにフランス幻想小説からは、純粋な歓喜や陶酔をもらうことができる。ゆらめく炎と影、絹の光沢、金、銀、真珠、色鮮やかな宝石、菫で飾られた棺、あるいは漆黒。ずっしりとした質感。目を開けたままでそんな夢を見ているような人々。なんて美しいのだろう。恐怖やみじめささえ、ここでは美しい。


ところで以前、「坂のある非風景」のMさんが、私をこのように評してくれたことがある。

 本の奴隷

なんというぴったりとした表現だろうと、私はすぐに気に入って、これまでに私が得たような得なかったようなどんな評価よりもこれは私にぴったりだと思った。うっとりしてしまう。これこそ私にぴったりだと思いたいのである。

「本の奴隷」とは言っても、読むのが遅い私は、おそらく生涯にそれほど多くの本を読むことはできないだろうと思う。それにどちらかと言うと、いかに多くの本をというよりも、同じ物語を何度も何度も読むのではないかと思う。

たとえば尊敬できる友人がいたら、私はその人と会うたびにいつも同じ話をするだろう。ちょっとした内容の違いはあっても、主題は同じだと思う。そしてお互いに同じことを話し合うと分かっていても、やっぱり何度も会いたくなるだろうと思う。

それに似た感じで、私が本を読むときには私はいつも同じことを問いかけるだろう。いや、問いかけられているのはこの場合は決定的に私のほうだが(なぜなら奴隷である私に主導権はないから)、相手が話したいことも私が聞きたいことも中身はいつも同じだろう。そのときどきによって、多少違って見えたり聞こえたりするだけで。そして私が分かるまで飽きずに語ってくれるだろう。

そんなことを考えてうっとりとする。一刻もはやく「本の奴隷」になりたいものだ。


そういう私が今日『フランス幻想小説傑作集』を読んでいて、ふと思い付いた。
考えてみるとフランス小説に限らず、私の愛する物語の人物はだれも生活あるいは実質というものよりはむしろただのきらめきや夢想、あてのないもののなかに心を彷徨わせている人物ばかり。もちろん、物語というのはそもそもそのような性質を持ったものかもしれない。物として在るのは紙とそこに書かれた文字だけだが、そこにそれ以上のものを存在させようとするのが物語だと思える。それそのものでは腹もふくれない、あてもないものだ。
紙の上の文字を読むうちに、しかし私はまるでそのなかの人と区別がつかなくなるほどに埋没してゆく。目も眩む夢のような美しさも、その身を取り囲む掴みどころのない虚空も、すべて私のものになる。物のことを全て忘れてしまいながら、それをもっとはっきりと理解できたように錯覚してしまえる。
それで、ふと思い付いた。

 もしかしたら、この物語の作者たちは、
 私のような人間をこの中に住わせようとして
 これを書き残したのではあるまいか。


よくもこんなことを考えるものだと思う。でもひらめいてしまったから、記しておこうと思う。もしも私の呼吸するべきところが、本当にこのなかに存在するとするならば、私が望むように本当にここならば、それはなんと素晴らしいことだろう。いつかほんとうに「奴隷」になれるのではないだろうか。

少し馬鹿げているかもしれない。いや、かなり馬鹿げているかもしれない。「現実を見ろ」と言われそうだ。
しかし、ひらめきというのはいきなり核心を示すものだ。馬鹿げて見えるのも、それがきちんと証明されるまでのことに過ぎないのである。誰かの現実が物質の世界にあるのと同じように、ここが私の現実だったら? むろん、私とて実際の物を食わねば生きられないのではあるが。今は。……でも、いつかは?

そんなことを考えてまたうっとりとした。私はどのみち幸福に生きてゆけそうに思う。夢想家の昼下がり。




お知らせ

2008年07月02日 | もやもや日記



梅雨にしては、あまり雨が降りません。今週はまだ少しも降らないので、梅雨だということを忘れそうです。


さて、ちょっとしたお知らせです。

えーと、諸事情により私はしばらくこのブログを更新できそうにありません。10日ばかり休載したいと思います。

なんて、別に黙って放置してもよかったのですが、心配なさる方がいらっしゃるかもしれないと思い、あえて告知。
ちなみに諸事情というのもたいした事情ではありません。単に、私は同時に複数のことをこなすことができないというだけです。今ちょっと手が離せないことがあるものですから。
というわけで、くれぐれも心配しないでくださいませ~。

で、だいたい10日くらいしたら華々しく復活する予定ですので、よろしくどうぞ。そのときには、いよいよ Web版『YUKIDOKE』も公開するつもりですので、ご期待ください!


ではでは、ごきげんよう~~★